立憲民主党 枝野幸男代表 演説全文(10月14日池袋)
<草の根からの民主主義、暮らしの現場からの政策>
立憲民主党代表の枝野幸男です。本当にたくさんの皆さんにお集まりをいただき、あるいは足を止めていただき、本当にありがとうございます。10月2日に記者会見をし、3日に正式に出発をした立憲民主党。こんなに皆さんからご期待をいただき、ご関心をいただけるとは思っていませんでした。でも、このままではこの総選挙、選択肢がない。自分たちの声を受け止めてくれる政党がない。そうした多くの皆さんに背中を押していただき、党を立ち上げて良かったと、思っています。民主党、民進党と積み重ねてきた政策、理念を、改めてこの機会に大きく前進させて、新しい旗を立てさせていただきました。
右でも左でもなく、そしてこれまでの政治が上からの政治になってしまっている。暮らしの現場からの、草の根からの、下からの民主主義を、暮らしの現場からの政策を、下から前へと進めていく、新しい選択肢を、国民の皆さんにお示しをさせていただきたい。そう考えています。ありがとうございます。
<成熟社会の経済再生>
アベノミクス。豊かな人を更に豊かにしました。確かに株価は上がりました。大きな企業を中心として、企業の内部留保、いわば企業の持っている預貯金は、過去最高に上りました。豊かな者を更に豊かにすれば、強い者をより強くすれば、そのうちその豊かさが国民の皆さん隅々まで行き渡る。安倍さんはそう説明していたはずです。でももう5年経っています。
私はこうした上から強くしていく、上から引っ張り上げる、このアベノミクスの考え方を一概に全否定するつもりはありません。実は日本の戦後復興、高度成長、20世紀の日本は、こういうやり方で、一億総中流を、世界有数の経済大国を作り上げました。若い皆さんはご存じないかもしれませんが、安かろう悪かろう、メイドインジャパンは値段が安い。それを武器にして世界にどんどん物を売って、輸出企業が儲かって、儲かったお金が日本全国津々浦々に行き渡って、今の日本の豊かさを作り上げてきました。安倍さんはその成功体験に基づいて、同じことをやればうまくいくといまだに勘違いをしているんじゃないでしょうか。
でも5年経ちました。時代は変わっているんです。右肩上がりで人口が増えていた。アメリカ、ヨーロッパに、まだ貧しい日本が追いつき追い越そうとしていたその時代と、新興諸国から追い上げられる立場になった成熟社会日本。少子高齢化で人口が減っていく日本。時代が違う、社会が違うのに、過去の成功体験に引っ張られて、新しい道が示せていない。結果的に何が起きているのか。
例えば、ただでさえ若い人が減っている。そんな中で、奨学金という名のローンを組まないと進学できない若者が増えてしまっています。貧困格差の拡大によって、分厚い中間層と言われた、一億総中流と言われていた日本社会が、どんどんどんどん分断をされてしまっていて、遠心力が働いています。
これでは当事者の皆さんが気の毒なだけではないんです。これでは日本の社会が前に進んでいけない。どんどんどんどん社会が荒れていく。荒廃をしていく。
例えば、ただでさえ数の少ない若い皆さん、学びたいという意欲があっても、能力があっても、お金の問題で進学を断念する。そんな若者がたくさんいて、誰が日本の未来を切り開くんですか。そういうことがあってはなりません。親の世代に貧困によって、読み書きそろばん、最低限の社会生活、そうしたものすら身に付ける機会がないまま義務教育を終える。そんな子どもたちまでたくさん出てきてしまっています。これでは、当事者の皆さんが気の毒なだけではない。誰かがこれからの社会を支えていくんだ。
景気だって良くなるはずありません。年収100万、150万、いつクビになるか分からない非正規雇用。若干数字は改善したとはいいながらもまだ働く人の4割。そのうちの少なくとも半分は、本当は正社員になりたいけれども、くちがないから残念ながら非正規で働いている。そんな若者もたくさんいます。国内で若者の自動車離れが進んでいるといわれます。当たり前じゃないですか。年収100万、150万、いつクビになるか分からないからっローンも組めない。これで自動車離れ、当たり前。買える力がないのに、買おうとする意欲が出るはずないじゃないですか。
少子化だって、止まるはずがありません。恋愛をし、希望をすれば結婚し、家庭を持つ、子どもを産み、育てる。そのためには、定職があって、一定の安定した収入があって、そうでないと、家庭を持つという夢を、子どもを産み、育てるという夢を、持ちたくたって持てない。そんな人たちを増やしていて、どうして少子化に歯止めがかかるんですか。
上からの経済政策ではなくて、格差をこれ以上広がるのを止めて、格差を是正して、貧困を解消しましょう。これこそが21世紀、成熟社会の経済再生です。
安倍さんは、規制緩和、自由競争、そして自己責任。こうしたものをあおってきました。しかし、自由な競争には大前提があります。競争をあおるだけでは政治の役割は果たせません。自由な競争は、公平、公正なルールに基づいて進めなければなりません。ルールを作る仕事は誰の責任ですか。政治の役割じゃないですか。ルールを守らせる責任は誰の仕事ですか。政治の役割じゃないですか。競争をあおるだけでは政治の役割を果たしたことにはならない。公平、公正なルールを作り、守らせる。それが政治の役割。その本来の役割を、まっとうな政治を、私は取り戻したい。
<残業代ゼロ法を作る前に>
格差が拡大をしている背景には、例えば、労働法制の行き過ぎた緩和があります。二十数年前、派遣労働というのは、むしろ恵まれた、手に職を持った、技術を持っている、特別な仕事にしか認められませんでした。これをあらゆる職種にどんどんどんどん規制緩和していった結果として、働くといったら正社員が当たり前だった、そんなまっとうな社会を壊してきたんです。労働法制を強化しましょう。派遣法をもう一度元に戻していきましょう。一気にはできません。中小、零細がつぶれてしまいます。でも、段階的に戻していこうじゃありませんか。
安倍政権はこの選挙の前、残業代ゼロ法をまとめています。ただでさえブラック企業、サービス残業、過労自殺。働いてもそれに見合った給料がもらえない。おかしなことが横行しています。残業代ゼロ法を作る前に、今のサービス残業を、ブラック企業を、そして過労自殺を止める。長時間労働を規制する。労働法制は強化をしなければならないんです。そのことによって、働いたらまっとうに給料がもらえる。働くというのは、基本は正社員として、安定的に働く。そのまっとうな社会を取り戻そうじゃありませんか。このことによって、社会の格差の拡大を食い止めましょう。
<不急の公共事業より、介護・保育関係者の待遇改善>
そしてもう一つ。格差を是正していくために、社会を下から支えて押し上げていくために、典型的な例だけ挙げます。介護職員の皆さん、保育士さん、給料を上げましょう。おかしいんですよ今。私たちの国は今、資本主義です。自由主義経済です。価格、値段というのは、市場メカニズムで決まります。需要があって供給が少なければ値段は上がるんです。
介護職員の数が足りない。命にもかかわる責任の思い仕事。重労働。にもかかわらず賃金が安すぎる。志を持って介護の仕事に就いた人もなかなか長く勤められない。おかしいじゃないですか。それで人手不足なんですよ。人手不足ならば高い給料を払ってでも人を集める。それが市場原理のはずなのに、それがなされていないから、特別養護老人ホームには空きベッドが1割以上あるんです。でも待っている人が1万人以上あるんです。ベッドはあるけど働いてくれる人が足りない。だったら給料を払うのが資本主義です。自由経済です。
保育所だってそうです。保育所が足りないのは、土地や建物の問題もあります。保育士の資格を持っている人はたくさんいるのに、でも、保育所を増設しようとすると、保育士さんを集めるのは大変です。なぜですか。やっぱり重労働で責任は重いのに、給料が安すぎるからです。資格を持っている人でも、もっと給料が高いほかの職業に移ってしまっている。だから人手不足です。おかしいんじゃないですか。
需要があるんだから、値段が安すぎて、収入が安すぎて人が集まらないなら、その給料を上げる。なぜこのようなことが起こっているのか。そこは政治の責任です。保育士さんの給料を、介護職員の給料を、広い意味で政治が決めています。介護保険の仕組みで、例えば看護師さんは、医療保険の仕組みの中で、保育士さんの給料も、保育にどれくらい公的なお金を流すのかによって、払える給料に上限があるから、人手不足でも給料が払えないんです。こうした需要があるのに安すぎる給料に、限られた税金を回していきましょうよ。
災害復旧とか、老朽化した施設の補修とか、公共事業の中にも急がなきゃならないものがあります。しかしながら、急がなくてもいい大型の新規の公共事業に回す金があったら、介護職員や保育士さんの賃金に回そうじゃありませんか。
そこに回したお金は、元々低賃金です。かつかつの生活です。増えた分は必ず消費に回るんです。そして、需要がたくさんあるんです。人が集まってくるなら、どんどんどんどん雇用の場として広がっていくんです。そこに払った給料も、ほとんど消費に回るんです。消費不況から抜け出すためには、こういう形で様々な分野で、所得を、給料を下支えして、底上げをしていこうじゃありませんか。
そして、介護や保育は、老後の安心や、子育ての安心につながっていく。二度三度おいしいんです。上からの株価を上げる経済政策ではなくて、こうして地に足つけて暮らしと結びついたところから、社会を下支えして底上げをしていきましょう。右でも左でもなく、底支えをして前へという、こうした新しい経済のモデルを、私たちは皆さんに、自信を持って示していきたいと思っています。
<戦前も常識だった立憲主義>
そしてもう一つは、上からの政治です。総理大臣はなぜ総理大臣なんですか。安倍さんは選挙に勝ったからだと勘違いをしているんじゃないでしょうか。それは答えの半分でしかありません。ましてや選挙で勝ったら何をやってもいいと思っていたら大きな間違いです。選挙は、選ばれる人に白紙委任を与えるものではありません。
そもそもが、国会議員も、内閣総理大臣も、与えられている、お預かりをしている権力は、憲法によって決められているんです皆さん。憲法で決められた手続で選ばれているから、憲法で与えられた範囲で、権限をお預かりをしている。その立憲主義の基本が分かっていないんじゃないでしょうか。
安保法制、集団的自衛権。平和の問題としても深刻です。でも私はそれ以上にこの立憲主義。これを破壊する行為だと、一貫して思っています。
集団的自衛権は行使しない。できない。その憲法の解釈は、誰が作ったのでもありません。アメリカから押し付けられたわけでも、当時の野党が大きな声を出したから決まったのでもありません。歴代自民党政権自らが、政府自らが、今の憲法9条の解釈として、日本の領土、領海を攻められたらそれは全力で守るけれども、日本が攻められてもいないのに戦争はしない。自民党自身が決めてきたルールをですよ、それを合理的な説明ない、論理的な整合性もない、そんな形で勝手に変える。自分たちを縛っているルールを自分で変える。これではルールも何もあったもんじゃないじゃないですか。
自らの権力、権限の正当性の根拠である憲法を守れない権力は、権力そのものの正当性がない。まずは憲法に従って仕事をしろ。立憲主義というのは、戦前でさえ言われていたんです。大日本帝国憲法、明治憲法の下でも、戦前、政友会、民政党という二大政党がありました。どちらもある時期、立憲政友会、立憲民政党だったんです。憲法に基づいて仕事をするんだというのは、明治憲法の下でさえ常識だったんです。それを壊してしまっている安倍政治は、19世紀の政治です。そんな時代錯誤の政治をやめさせなければなりません。
<本当の民主主義>
立憲主義だけではありません。森友・加計、自衛隊の日報問題。国民の皆さんに情報を公開しない。そして開き直る。情報公開だけではありません。最近では共謀罪。安保法制のときもそうでした。特定秘密保護法のときもそうでした。国民の皆さんにきちっと説明して、理解してもらって、説得して、賛成してもらおうという意思、意欲を皆さん安倍政権に感じますか。本当の民主主義は、こんなもんじゃありません。
確かに民主主義に多数決はつきものです。でも多数決と民主主義はイコールではありません。民主主義というのは、主権者つまり国民の皆さん、みんなで決める。これが本当の民主主義です。1億2000万を超える国民の皆さんの意見を、全部聞くことはできません。全員の意見が一致することはありません。だから選挙で議員を選ぶんです。だから最後、議会の中で多数決で決めるんです。でもその前提は、みんなで決める。できるだけ多くの皆さんに理解をしてもらって、賛成をしてもらって、国民の理解の上で、物事を進めていく。それが民主主義です。
しっかりと情報を公開して、みんなが議論をできるようにして、その上で、最後の最後どうしてもというときに、多数決で決めるんです。はじめから数があるから、由らしむべし知らしむべからず、俺たちの決めたことを言うことをきけ。こんな上からの民主主義は、本当の民主主義ではありません。
<あなたが作った政党>
私たちは、本当の民主主義をこの国に作り上げたい。本当の立憲主義をこの国に取り戻したい。上からの政治ではなくて、国民の皆さんと共に暮らしの中から湧き上がる、本当の政治を取り戻したい。そんな思いで党を立ち上げました。
このままでは自分が所属ができる政党がない。国民の皆さんからも、入れられる政党がない。受け皿になる政党がない。そんな声を頂きました。10月2日に党を立ち上げました。前にいる東京の若い仲間からも背中を押されました。正直迷いました。お陰さまで8期もやってますので、知名度もそこそこあるので、まあ無所属でも自分の選挙は戦えるかなあ。無所属でやってれば今頃大宮でマイク握っているんです。でも、多くの皆さんが背中を押していただきました。このままでは困る。このままではこの国の社会も、この国の民主主義も立憲主義も、このままでは困る。枝野何とかしろ。枝野立てと、皆さんから背中を押していただいた、そのお陰で私は立つことができました。
ですから立憲民主党を作ったのは枝野幸男ではありません。立憲民主党を作ったのはあなたです。あなたが作った政党が立憲民主党です。
<一緒に民主主義をやってくれませんか>
本当は、ここで前にいるこの東京の、特に若い、総選挙厳しい中で戦っている仲間に、1票を投じてください。立憲民主党比例代表で1票を投じてください。お願いをするべきなのかもしれませんが、お願いしません。それは、この戦いは、候補者や政党の戦いだとは思っていないからです。私の背中を押していただいた、日本に本当の民主主義を取り戻そう、作り出そう、自分たちの声をしっかりと届ける器を作らせよう。思っていただいた皆さんの戦いなんです、この戦いは。
まだまだ、政治を諦めている、どうせ変わらない、どうせどんな結果になったって俺たちには関係ない、そう言って諦めてしまっている人たちが、皆さんの周りにはまだまだたくさんいるんじゃないでしょうか。私たちも頑張ってそういう皆さんに訴えます。でも、皆さん一人ひとりが当事者として、そうした諦めてしまっている人たちに声を掛けませんか。一緒に戦おうと言いませんか。諦めてしまったら、どんどん悪くなります。諦めないで立ち上がっていけば、それが大きな輪になるかもしれない。日本の民主主義の新しい一歩を踏み出せるかもしれない。だから周りでしらけている人に、諦めている人に、あなたが当事者として声を掛けていただきたいんです。一緒に政治に参加しよう。新しい民主主義を一緒に作ろうと、声を掛けていただきたいんです。
若い仲間が、金もない、組織もない中で、奮闘してくれています。お時間がある方は、余裕のある方は、30分でも、1時間でもいいです。それぞれの近くの事務所に顔を出してくれませんか。そして一緒に、ビラをまいていただいたり、電話をかけていただいたり、証紙を貼っていただいたり、一緒に政治をやりませんか。一緒に民主主義をやってくれませんか。一緒に戦いませんか。私はそのことを皆さんに呼び掛けたいと思っています。
この戦いは、第一歩です。私自身も24年国会に送っていただいて、永田町の古い常識に影響されていた部分があったのではないかと反省、後悔をしています。でも新しい旗を立てました。自信を持って向かえます。これまでの永田町の内側を向いた上からの政治ではなくて、あなたと一緒に作る新しい民主主義を、そして暮らしの下から底上げをして、日本の未来を切り開いていく、新しい日本の社会を、しっかりと作っていく第一歩を、この選挙を通じて実現をさせていきたい、踏み出していきたいと思っています。
是非私たちと一緒に、この大きな一歩を踏み出す仲間に加わってください。一緒に戦ってください。私にはあなたの力が必要です。どうぞよろしくお願い致します。ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます。
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