静岡大学の井ノ口宗成講師によりますと、今回のように「被災者生活再建支援金」を受け取れないケースは、平成16年の新潟県中越地震や平成23年の東日本大震災などでも確認されています。
これについて、井ノ口講師は被災者が支援金の制度を知らず、自分に受給資格があるのに気付いていないのに加え、申請を受け付ける側の自治体も誰が支給対象になっているのか把握できていないことが原因だと指摘しています。
なぜ、把握できないのか。井ノ口講師は多くの自治体で支援金の申請の受付は「福祉課」が担当する一方、「全壊」や「大規模半壊」など住宅の被害の程度が書かれ、支援金の受給資格を決めるり災証明書の発行は「税務課」や「住民課」など、別の部署が担当するため、情報が共有されないケースが数多くあることを挙げています。
こうした事態を防ぐため、井ノ口講師は災害発生後に自治体が作る「被災者台帳」をうまく活用すべきだと指摘しています。「被災者台帳」は被災者に関する情報を自治体内で一元的に管理するもので、入力する項目に「支援金の申請の受付状況」を加えれば、り災証明書の情報と照らし合わせ、支援金を受け取っていない被災者を特定できるということです。
相次ぐ支援金の受給漏れを防ぐため、国も東日本大震災以降、「被災者台帳」のフォーマットを作成し、活用を呼びかけていますが、井ノ口講師の研究グループは自治体内のネットワーク上で情報を共有できるなど、さらに使いやすくしたシステムを開発し、自治体の担当者を対象にした研修会などで普及をはかっています。
井ノ口講師は「被災者の生活再建を進めるためには、個人個人の状況を丁寧に把握する必要がある。そのために『被災者台帳』をうまく活用してほしい」と話しています。
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