熊本地震で住宅全壊 約230世帯が支援金未受給

熊本地震で住宅全壊 約230世帯が支援金未受給
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1年半前に発生した熊本地震で、住宅が全壊した被災者に支給される支援金を先月の時点で、およそ230世帯が受け取っていないことがNHKの調べでわかりました。自治体が申請を促すなどの対応を十分に取っていないことが原因と見られ、専門家は被災者に積極的に働きかけることが必要だと指摘しています。
「被災者生活再建支援金」は地震などの大規模な災害で住宅が被害を受けた被災者に国や都道府県から支給されるもので、住宅が全壊した場合は1世帯当たり100万円の「基礎支援金」が支給されます。

NHKが1年半前に発生した熊本地震で、住宅が全壊する被害が出た熊本県内の24の市町村に聞き取り調査したところ、先月中旬の時点で合わせて14の市町村のおよそ230世帯が自宅が全壊し、受給資格があるにもかかわらず、「基礎支援金」を受け取っていないことがわかりました。

受け取りには被災者が市町村の窓口に申請する必要がありますが、8つの市町村ではほかの業務に追われるなどして、申請を促す文書を送るなどの対策を取っていないということです。

被災者支援に詳しい静岡大学の井ノ口宗成講師は「1年半が経過しても多くの人が支援金を受け取っていないのは大きな問題だ。被災者の生活を支援するという制度の原点に立ち戻って、自治体が被災者に積極的に働きかけ、支援金が行き渡るよう対応を進めてほしい」と指摘しています。

専門家「被災者台帳の活用を」

静岡大学の井ノ口宗成講師によりますと、今回のように「被災者生活再建支援金」を受け取れないケースは、平成16年の新潟県中越地震や平成23年の東日本大震災などでも確認されています。

これについて、井ノ口講師は被災者が支援金の制度を知らず、自分に受給資格があるのに気付いていないのに加え、申請を受け付ける側の自治体も誰が支給対象になっているのか把握できていないことが原因だと指摘しています。

なぜ、把握できないのか。井ノ口講師は多くの自治体で支援金の申請の受付は「福祉課」が担当する一方、「全壊」や「大規模半壊」など住宅の被害の程度が書かれ、支援金の受給資格を決めるり災証明書の発行は「税務課」や「住民課」など、別の部署が担当するため、情報が共有されないケースが数多くあることを挙げています。

こうした事態を防ぐため、井ノ口講師は災害発生後に自治体が作る「被災者台帳」をうまく活用すべきだと指摘しています。「被災者台帳」は被災者に関する情報を自治体内で一元的に管理するもので、入力する項目に「支援金の申請の受付状況」を加えれば、り災証明書の情報と照らし合わせ、支援金を受け取っていない被災者を特定できるということです。

相次ぐ支援金の受給漏れを防ぐため、国も東日本大震災以降、「被災者台帳」のフォーマットを作成し、活用を呼びかけていますが、井ノ口講師の研究グループは自治体内のネットワーク上で情報を共有できるなど、さらに使いやすくしたシステムを開発し、自治体の担当者を対象にした研修会などで普及をはかっています。

井ノ口講師は「被災者の生活再建を進めるためには、個人個人の状況を丁寧に把握する必要がある。そのために『被災者台帳』をうまく活用してほしい」と話しています。

熊本地震で住宅全壊 約230世帯が支援金未受給

1年半前に発生した熊本地震で、住宅が全壊した被災者に支給される支援金を先月の時点で、およそ230世帯が受け取っていないことがNHKの調べでわかりました。自治体が申請を促すなどの対応を十分に取っていないことが原因と見られ、専門家は被災者に積極的に働きかけることが必要だと指摘しています。

「被災者生活再建支援金」は地震などの大規模な災害で住宅が被害を受けた被災者に国や都道府県から支給されるもので、住宅が全壊した場合は1世帯当たり100万円の「基礎支援金」が支給されます。

NHKが1年半前に発生した熊本地震で、住宅が全壊する被害が出た熊本県内の24の市町村に聞き取り調査したところ、先月中旬の時点で合わせて14の市町村のおよそ230世帯が自宅が全壊し、受給資格があるにもかかわらず、「基礎支援金」を受け取っていないことがわかりました。

受け取りには被災者が市町村の窓口に申請する必要がありますが、8つの市町村ではほかの業務に追われるなどして、申請を促す文書を送るなどの対策を取っていないということです。

被災者支援に詳しい静岡大学の井ノ口宗成講師は「1年半が経過しても多くの人が支援金を受け取っていないのは大きな問題だ。被災者の生活を支援するという制度の原点に立ち戻って、自治体が被災者に積極的に働きかけ、支援金が行き渡るよう対応を進めてほしい」と指摘しています。

専門家「被災者台帳の活用を」

静岡大学の井ノ口宗成講師によりますと、今回のように「被災者生活再建支援金」を受け取れないケースは、平成16年の新潟県中越地震や平成23年の東日本大震災などでも確認されています。

これについて、井ノ口講師は被災者が支援金の制度を知らず、自分に受給資格があるのに気付いていないのに加え、申請を受け付ける側の自治体も誰が支給対象になっているのか把握できていないことが原因だと指摘しています。

なぜ、把握できないのか。井ノ口講師は多くの自治体で支援金の申請の受付は「福祉課」が担当する一方、「全壊」や「大規模半壊」など住宅の被害の程度が書かれ、支援金の受給資格を決めるり災証明書の発行は「税務課」や「住民課」など、別の部署が担当するため、情報が共有されないケースが数多くあることを挙げています。

こうした事態を防ぐため、井ノ口講師は災害発生後に自治体が作る「被災者台帳」をうまく活用すべきだと指摘しています。「被災者台帳」は被災者に関する情報を自治体内で一元的に管理するもので、入力する項目に「支援金の申請の受付状況」を加えれば、り災証明書の情報と照らし合わせ、支援金を受け取っていない被災者を特定できるということです。

相次ぐ支援金の受給漏れを防ぐため、国も東日本大震災以降、「被災者台帳」のフォーマットを作成し、活用を呼びかけていますが、井ノ口講師の研究グループは自治体内のネットワーク上で情報を共有できるなど、さらに使いやすくしたシステムを開発し、自治体の担当者を対象にした研修会などで普及をはかっています。

井ノ口講師は「被災者の生活再建を進めるためには、個人個人の状況を丁寧に把握する必要がある。そのために『被災者台帳』をうまく活用してほしい」と話しています。