さて、前回に引き続き、ロボット手術のお話です。私が取材に行ったリバーフィールドでは、そもそも原口大輔社長が、ダヴィンチを作っているインテュイティブサージカルに「力覚」の技術を売り込んだものの断られたため、自前でロボットを作ろうと起業したのでした。
2017年7月末には資金を3億円調達したそうですが、社長いわく「まだまだ足りない」そうです。リバーフィールドが作っているロボットは、ダヴィンチとは違う空気圧を使ったロボットであるため、似たような手術支援ロボットとはいえ全く違う医療機器として一から薬事承認を得なければなりません。そのため時間が非常にかかるのですね。私としては、一刻も早く使ってみたいと思っています。
この「力覚がある」というのは、とにかく激しいインパクトを感じるのです。私は人の命を預かって切っていますから、「ちょっとしたミスで人が死ぬ」というのが日常です。その日常に、全く触っている感覚のない機械を使うというのはかなりの抵抗があります。
力覚は、そのあたりの強い強い外科医の憂いを吹き飛ばしそう。これまでロボット反対派だった先生方も「力覚があるなら使おうかな」という方が必ずやいるでしょうね。
しかし、医療機器はただ作れば売れるわけではなく、販売網や販売後のサポートが重要です。私はしょっちゅう手術で使う器械メーカーの担当者さんと会い、実際に手術室まで入ってもらい濃厚なコミュニケーションをとっています。そのネットワークをどうするかという課題もありそうです。
最後になりますが、私と同い年の若い社長さんの優しい雰囲気がなんとも心温まりました(写真は前回の記事で!)。
もう一つ、神戸のベンチャーにも行ってきた!
次に私は、神戸市にあるメディカロイドという会社を訪問しました。こちらは産業用ロボット50年の歴史を持つ川崎重工業と、血液検査機器などを手掛けるヘルスケアのシスメックスが作った会社です。私は日経の記者さんとともに神戸に弾丸ツアーで行き、社長の橋本康彦氏にお話を伺いました。
メディカロイドは2019年に発売予定の手術支援ロボットを開発中で、すでに試作機が完成に近い状況だそうです。ロボットとしてはダヴィンチとほぼ同じ機能(3D、スケーリング、多関節、手ブレ防止など)を備えています。
さらにダヴィンチと比較した際の強みとして、ロボットのアームや関節部分が細く、さらに軸が多い点があります。これは、ダヴィンチで問題となっていた「体外でのアーム同士の干渉」という問題を解決しますね。さらには小型なので、小児や体の小さい患者さんへの手術にも役立ちそうです。
もう一つの強み、それはコストです。実際の数字は聞けませんでしたが、メディカロイドの橋本社長自ら「病院にとってのコストメリットはある」と言い切っていらっしゃいました。その瞬間のお顔は自信に満ちあふれているように私には見えました。