1. 路地裏で、ケンプトンは老人からケースをもぎ取った。
    中身を確認する――ケンプトンの指示通り、高額で取引されるルーンが数十個。
    合計で数千万ゴールドにはなるだろう。
    それにしても――

    「あの連中が、素直に取引に応じるとはね……命拾いしたな、爺」

    ケンプトンは暗示を強めた。この老人にはそうだ……自殺でもしてもらうとしよう。
    さして冷酷とも思っていない。まして、他人を殺すのは初めてではなかった。

    「やれやれ、君は有能だが小細工が過ぎるな」

    「はふぁああ!?」

    ケンプトンは、突如悶絶したかと思うと意識を失った。

    老人は、己の顔の皮を剥いだ。
    その下から現れたのは、アイシャの黒髪と青い瞳。

    「さて、次はファイルを狙ったやつか――」

    倉庫に急ごうとしたアイシャであるが、ふと黒髪のエージェントは立ち止まった。
    気配がする――倉庫より、得体の知れない何かの気配が。
    アイシャは目を見張った。
    倉庫に何かがいる。

帝国戦旗・サイドストーリー