ネバダ臭

クズが伸し上がる為の精神論をちょくちょく書いているクソブログ。口癖は「えー、そんなの別にどっちでも良いんじゃないの?」老害発言の説明文多し。

人間に飼われたくて生まれてきたのではない

昔、今では結構当たり前に流通しているある薬品の普及について関わっていた。所謂マーケティングである。薬品といってもそんな仰々しいものじゃない。消臭剤だ。私はそれを画期的なものだと思っていた(使い方によっては今も思っている)ので、機能と特性について私がちゃんと理解し、効果的な使い方と効果的に使われる場所を模索していた。ある日、ペットショップから依頼があったのでその店に向かった。お洒落で綺麗な店だった。可愛い動物達がショーケースの中で、愛くるしい姿をこれでもかと披露していた。小さな動物達を見れば私も思わず顔がほころぶ。綺麗なショーケースとはいえ、動物からすればあのスペースはかなり狭い。担当者が来る間、私はペットシートが敷かれたあのスペースを清掃するのに使いたいんだろうな、と勝手に想像していた。これは役に立てるかもしれないなと。そこに現れた担当者に消臭剤のプレゼンと簡単なテストを行った。あれやこれやとしている内に「良いかもしれない」という思いが双方にうまれた。サンプルを置いていくからまずは使ってみて欲しいと私が切り上げようとしたその時、担当者は言った。「これを使いたいのは売り場じゃない」と。何のことか理解出来ない私をその担当者は別の場所に案内する。店のバックヤードに入り、売り場から少し離れた部屋、閉まっているそのドアの前に立った瞬間不快感が私を襲った。異臭だ。お客さんの前で嘔吐くわけにもいかず、私は嗅覚以外の感覚に集中した。開かれたドアの中は暗い。広さはどうだろう感覚的に10坪程度で、檻が何個も重なって置かれ、一気に犬の鳴き声が私の聴覚を刺激した。何匹いるんだ。90cm四方の檻に犬が何匹も押し込まれ、その檻が何十個も狭くて暗い部屋にコンテナのように積まれている。私は思った。「地獄じゃないか」と。目眩がするような異臭と頭が割れるような鳴き声の騒音。担当者は無表情で言った。「この臭いを消したいんです。」臭いを消す、技術的には可能だろう。しかし、臭いを消す前にこの環境を操作しているのは貴様ら業者だろうがと思った。薬品のことなんてどうでも良くなった私は担当者に問うた。「これはペット業界では普通の光景なんですか?」と。担当者は無言だったのか、犬の鳴き声にかき消されていたのかは分からない。それから私はペット業界に出入りするのをやめた。地獄に協力なんて出来ない。犬に罪はない。犬をあの環境・臭気から助ける意味でやってみようかとも思ったが、それは業者をも助けることとなり、臭気以外の環境がもっと劣悪になる可能性がある。ちゃんとやってる業者ももちろんあるんだろう。しかし我々が目にするのは綺麗なショーケースに並べられた愛くるしい姿だけだ。今の私はショーケースを遠目で見た時に思うのだ。あの愛くるしいキャンキャンという鳴き声は本当に愛くるしい無邪気な鳴き声なのか。助けてくれという叫び声ではないのか。あの明るくて綺麗なショーケースに入れるのはごく一部の選ばれた犬達なのだ。こんなに劣悪な場所が日本にどれだけあるのかは私は知らない。少ないのかもしれないし沢山あるのかもしれない。一つ言えるのはその環境を操作出来るのはペット業界もしくは業者側であるということだ。そんな場所ばかりではないという意見もあるだろう。だからこそ、そういう劣悪な業者を撲滅出来るのは同じ業界の者だけであると私は思う。ネットでは殺処分の話をよく聞くが、捨てられる犬について嘆くより、生まれる数を操作している業者をもっと、環境も含めて管理する必要があると思うのだ。命を創るのは神だろう。私が見たのは地獄、悪魔だったんだ。