「富裕層の増税で富分配を」、IMFがトランプ税改革に異例のけん制

  • 「ワシントン・コンセンサス」今は昔、社会の不平等是正呼び掛け
  • 米OMB局長:IMFは米税制の失敗に「労力つぎ込む」懐疑派

国際通貨基金(IMF)は数十年にわたり、「ワシントン・コンセンサス」と呼ばれる米国製の経済処方箋を各国政府に薦めてきた。

税制改革について語るトランプ大統領(11日、米ペンシルベニア州)
税制改革について語るトランプ大統領(11日、米ペンシルベニア州)
フォトグラファー:Mandel Ngan / AFP via Getty Images

  だがIMFが最近公表した新たな報告書には、米政府との見解の一致はほとんど見られない。この報告書でIMFは、先進国は富裕層の税負担を増やすことにより、成長を犠牲にせずにより公平な富の再分配が可能になると主張。「不公平が行き過ぎると社会の団結が揺らぎ、政治の二極化を生む。最終的には経済成長の低下をもたらす」と論じた。トランプ米大統領が進める税制改革案には独立系シンクタンクのタックスポリシーセンターなどが最高所得者層に最も有利と指摘している。

  IMFは昨年の報告書で「新自由主義」と呼ばれる政策パッケージが「過大評価」された可能性があると論じて注目を浴びたが、今回は教育や医療のリソースを富裕層から貧困層へと振り向けることで、社会的な格差問題に対処できると唱えた。ラガルド専務理事は12日、不平等の拡大は過去10年で最も裾野が広がっている景気回復に対する最大の脅威だと指摘した。

  一方、税制改革案を巡るIMFとの不一致が露呈した後で、米行政管理予算局(OMB)のマルバニー局長はフィナンシャル・タイムズ紙に対し、IMFは大統領の税制改革案が失敗することに「多大な労力をつぎ込んでいる」懐疑派に含まれると批判。IMFとその姉妹機関である世界銀行はその資源を効果的に使うことに集中するべきだとけん制した。

  IMFに対する拠出金は、国別では米国が最大。

原題:In Tax Fight With Trump, ‘Soak the Rich’ Is Unlikely IMF Mantra(抜粋)

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JPモルガンとシティの7-9月決算が示したウォール街の懸念と話題

  • トレーディング低調もシティは近年苦戦の株式で収入が想定外の増加
  • 融資の伸びは鈍化、消費者信用で貸倒引当金を増やした

JPモルガン・チェースシティグループが先陣を切り、米銀の7-9月(第3四半期)決算発表が12日始まった。低調なトレーディングによる影響や消費者信用の懸念が示されるとともに、ビットコインンなどちまたをにぎわす話題への言及もあった。

  両行ともに純利益は市場予想を上回ったものの、その達成方法は分かれた。JPモルガンは融資のマージン改善に頼ったが、シティはコスト圧縮継続が寄与した。12日の米銀決算から読み取れた点を以下に挙げる。

トレーディング減少

  2四半期連続で、ボラティリティーの低さが銀行の債券取引に重しとなった。JPモルガンの幹部らはパフォーマンス自体は第3四半期に典型的な内容だったとした上で、前年同期比での大幅減少については、同年の英国民投票や米大統領選挙に絡んだトレーディング急増からの反動を示す部分が大きいと説明している。シティでは近年苦戦した株式トレーディングで収入が想定外に増え、予想を上回る結果につながった。

ビットコイン

  決算発表日はビットコインがちょうど初めて5000ドルを突破し、記者らとの電話会議で話題になった。JPモルガンのマリアン・レーク最高財務責任者(CFO)は同行の仮想通貨に関わる姿勢について、適切に規制されていれば「オープンマインドだ」と発言。ビットコインは「詐欺」であり、取引するような「愚かな」従業員は解雇すると先月話したジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)に比べ、かなりマイルドな言い方をした。一方、シティのジョン・ガースパッチCFOは仮想通貨やその基盤となるブロックチェーン技術を同行は「注視」していると話した。

融資の伸び

  複数の銀行は、顧客が米当局の政策変更待ちで、債券市場で比較的安く資金調達する選択肢もあるため、借り入れを休止していると指摘していた。JPモルガンの総融資の伸びは減速したものの、同行が「中核的ローン」と考える部分は6%増とライバル行を引き続き上回ったと、UBSグループのアナリストらは指摘した。

エキファックスの頭痛

  米消費者信用調査会社エキファックスは先月、ハッカーによる不正アクセスで米顧客約1億4500万人分の個人情報が流出した恐れがあると発表。シティのガースパッチ氏は銀行側が詐欺対策を強化する中で、オリジネーション(融資創出)が鈍化したケースもあるほか、消費者側も警戒し迅速な融資提供やクレジットカード発行が難しくなっていると説明した。JPモルガンのレーク氏も「これが最後の不正侵入とはならないだろう」とし、防止を含む対応を常に進化させると語った。

信用懸念

  JPモルガン、シティともにクレジットカードの延滞が増えるとみて、消費者信用の貸倒引当金を増やした。シティは延滞が想定よりも速いペースで発生しているとし、JPモルガンは収入を増やすために近年はリスクが高めの借り手に貸し出していたと説明した。

原題:What Bank Investors Learned From JPMorgan, Citigroup Results(抜粋)

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