こんにちは、総合南東北病院の中山祐次郎と申します。大腸がんの手術を専門とする外科医です。福島県の病院で毎日、手術室で汗を垂らしてナースに拭いてもらいながら手術をし、時折、この日経ビジネスオンラインで連載を執筆させていただいている、37歳の男です。
私がやる手術は、主にお腹の手術。方法としては「腹腔鏡(ふくくうきょう)手術」というものをやっています。今回と次回の2回にわたって取り上げる「ロボット手術」は、腹腔鏡手術と似ていて、以前から強く興味を持っていました。
というのも、「ロボット手術は外科手術に革命を起こす」と言われており、私自身もこれからやっていくことになりそうだからです。ちょっとそのあたりの事情を、実際のロボット開発現場の取材レポートを交えながら、お話しいたしましょう。
米国メーカーの独壇場に日本のベンチャーが挑戦
あまり知られていませんが、手術ロボット(実際には手術を支援するロボット)市場はある米国メーカーの独壇場となっています。もはや世界中のマーケットが独占されているといっても過言ではありません。そして今、日本発のロボットを世に送り出そうと複数のベンチャー企業がしのぎを削っています。
そのうちの2社に取材を申し込むと、うれしいことにどちらも快諾してくれました。まず、医療機器ベンチャーであるリバーフィールド(東京・新宿) に2017年9月初旬に行き、デモ機を体験してきたので、前編の今回はその衝撃の体験記を書きたいと思います。
一番大切なことを先に書いちゃいます。リバーフィールドのロボットの一番の売りは、空気圧を用いた「力覚(りきかく)」のフィードバック。現在、世界で最も普及している手術支援ロボット「ダヴィンチ」にはない機能です。
力覚とは、触覚と言い換えてもいいでしょう。例えば、何か硬いものをロボットアームの手で押した時、操作している私の手元にぐぐっと抵抗があるというものです。この「力覚」が完全に欠落しているという点が、従来のロボットの大きな欠点でした。