彼岸花の季節
もう少し前になってしまいましたが、今年も通園途中の川の土手一面に彼岸花が咲いていました。
彼岸花って、独特の雰囲気をもっているなぁと思います。
真っ赤で、茎がまっすぐに伸びていて。
名前も、お彼岸の頃に咲くからとか、あの世とこの世の境目(彼岸)とかいろんな連想が湧く不思議なお花。
毒があるから花を取ってきたらダメとか、縁起がどうとかいろんな説がありますよね。
何となく幻想的なお花。
そんな彼岸花の咲く季節になると思い出す絵本があります。
今日は、その絵本を紹介したいと思います。
(大好きな絵本なので、ブログのおすすめ絵本に載せていたり、過去記事にも登場しています。)
『花さき山』
彼岸花の花ではないですが、形が似ている幻想的なお花が登場するお話です。
あやという女の子が、山に山菜を採りに出かけると山姥に出会います。山にはきれいな花が咲いていました。その花を指差して山姥は言います。
そして、山姥はあやの足元に咲いている花を指し、それは昨日お前が咲かせた花だと教えてくれます。「この花が、なして こんなに きれいだか、なして こうして さくのだか、そのわけを、あや、おまえは しらねえべ。」この花は、ふもとの 村のにんげんが、やさしいことを ひとつすると ひとつさく。
家が貧しくお祭りの日に着ていく着物を買えないため、妹一人分だけ着物を買ってあげてとお母さんに言い、自分はじっと我慢していたあや。
おまえは せつなかったべ。だども、この 赤い花が さいた。この 赤い花は、どんな 祭り着の 花模様よりも、きれいだべ。
そのなみだがそのつゆだ
自分のことより人のことを思って、涙をいっぱいためて辛抱すると、その優しさとけなげさが、花になって咲きだす。
そんな話を家に帰ったあやは、親や村人に話しますが、誰も信じません。
後日、もう一度山に行ってもそんな花の咲く山はどこにもありませんでした。
けれども、あやはその後時々、「あ、いま花咲山でおやの花がさいてるな」って思うことがありました。
美しい絵本
いつだったか忘れましたが、初めてこの絵本を読んだ時、小さい私は涙を流したのを覚えています。
なんともせつなくて、なんとも美しくて。
耐えることが必要なとき、一生懸命に何かをしているとき、その頑張りを誰かがどこかで見ていてくれるんだ、そんな気持ちになりました。
耐えることが美だとは思いません。
けれど、日本人の独特の感性や「美」の感覚を捉えている絵本じゃないかと思います。
版画の黒と色合いの美しさ。
独特の風合いの絵。
幻想的なお話の世界。
とても印象に残る大好きな絵本です。
「花さき山」に添えて
あとがきに、作者の斎藤隆介さんが書かれています。
咲いている花を見ると思う。
この花を咲かせているものは、一体なんなんだろうと。
花を咲かせ、山を盛り上げている力、それはこれだという私の答えがこの、「花さき山」です。
そうだなぁって思います。
花を咲かせている力。
この絵本が描かれた時代は、今とは随分違うけれど、
時代が変わっても、こうして心にふれるものがあるなぁと思います。
おまけ
彼岸花って、独特な雰囲気で何だか怖い感じがするなぁって思っていました。
でも、不気味なもの見たさで毎年彼岸花が咲くと土手に行って見ています。
その不思議な感じがどこから来るんだろうって思っていたら、彼岸花が咲いているときには、茎しかなくて、葉っぱがないんです。
葉っぱがない花って珍しくないですか?
彼岸花って、花が枯れてから葉っぱが出てくるということを最近知りました。
今の時期、葉っぱの出た彼岸花に出会えます。
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