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【社説】

米軍ヘリ炎上 危険が身近にある現実

 沖縄本島北部で米海兵隊のヘリコプターが炎上、大破した。事故現場は北部訓練場に近接した民間地で、民家との距離はわずか三百メートル。日米両政府は危険が住民の身近にある現実を直視すべきだ。

 大破したのは、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)所属のCH53E大型輸送ヘリコプター。同系機は二〇〇四年八月、普天間飛行場近くの沖縄国際大の構内に墜落し、米兵三人が負傷している。

 翁長雄志知事ら県側の抗議を受け、米軍は今回の事故機と同型機の運用停止を発表した。当然の措置だ。事故原因を徹底究明し、同様の事故が起きないようにしなければならない。

 事故現場は東村、国頭村にまたがる北部訓練場の近くだ。米側は同訓練場約七千五百ヘクタールのうち半分超の約四千ヘクタールを日本側に返還することで合意したが、返還の条件として六カ所のヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)が新設された。

 政府は北部訓練場の一部返還について「沖縄の本土復帰後、最大規模で負担軽減に大きく資する」(菅義偉官房長官)と強調する。

 しかし、ヘリパッドは地元住民の反対を押し切って東村高江の集落を取り囲むように建設された。住民には負担軽減どころか、事故の危険や騒音などの「基地負担」はむしろ増えたのではないか。

 今回の事故で死傷者が出なかったことは幸いだが、米軍施設周辺住民が危険と隣り合わせである現実をあらためて突き付けている。

 ヘリパッドには普天間所属の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイも飛来する。同機は昨年十二月、名護市沿岸部に不時着、大破するなど事故や緊急着陸を繰り返し、安全性への懸念が払拭(ふっしょく)できない。

 CH53Eヘリコプターのみならずオスプレイも北部訓練場のヘリパッド使用を見合わせるべきだ。

 今回の事故は、米軍施設に伴う危険性だけでなく、日米地位協定の問題も突き付ける。

 沖国大の事故では、日本の捜査権は及ばず、米軍が規制線を引いた。今回も米軍は事故現場を事実上の封鎖状態とし、県警は現場検証を実施できなかった。

 地位協定の関連文書では、米軍の同意がない場合、日本側に米軍の「財産」の捜索や差し押さえをする権利はない、とされるためだが、日本政府は主権が蔑(ないがし)ろにされる状態をいつまで放置するのか。

 政府は法的に不平等な地位協定の抜本的見直しや改定を米側に提起すべきだ。形ばかりの抗議でお茶を濁して済む段階ではない。

 

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