3 Lines Summary
- ・情勢調査で「希望の党」は排除した立憲民主党に詰め寄られる
- ・3つの誤算は「小泉元首相」「公明党」「ドタバタ劇」
- ・選挙の主役は枝野氏に交代
「こんなはずじゃなかった」
希望の党の陣営から、ため息交じりの声が聞こえる。
安倍首相の解散会見当日に代表就任会見をぶちあてた、小池百合子東京都知事。
その後、小池氏はその一挙一動が注目され、これまでは、まさにこの選挙の主役だった。
しかし、民進党の「合流」を巡るごたごたや、本人の国政進出が無いとわかるやその勢いは失速。
今朝の各社の情勢調査では、与党が300議席を伺う勢いを見せる一方、希望の党は過半数どころか100議席を大きく下回り、「排除」した立憲民主党に詰め寄られている。
当初、希望の党に国政返り咲きの「希望」を見出した民進党の候補者たちは、「公認」の知らせがくると小躍りしたという。
しかし、あてにしていた連合は、「排除」発言に怒って「自主投票」を決め込んでしまい、支援体制はおぼつかない。
さらに、頼りの共産党とも、たもとを分かってしまった。
組織の票を失ったうえ、「風」ももはや期待できない。
希望の党の陣営は、「まるでお通夜のよう」(関係者)で、ある選挙区では対立する自民党陣営が「希望側は静かすぎて不気味だ」というほど活動が行われていないという。
当初この選挙は安倍vs小池の政権選択とまで言われたが、もはや見る影もない。
小泉元首相が原発ゼロ以外は一定の距離
ではなぜ希望の党は、こんなことになったのか?
小池氏には3つの誤算があったと筆者は考える。
まず1つ目は、小泉純一郎元首相である。
代表就任会見を行った日、小池氏は小泉氏に面会し、原発ゼロへの支持を取り付けた。
しかし小泉氏は、「小池さんはたいしたものだ」と言うものの、原発ゼロ以外は希望の党と一定の距離を置いた。
それはある意味当たり前のことで、愛息の進次郎氏は自民党の選挙の顔として働いている。父親としてみれば、自民党と対立する希望を支援するわけにはいかないだろう。
筆者は、「小池氏はひょっとしたら、自分が国政に出る際の都知事の後継者を、小泉氏に打診したのではないか?」と勘ぐっている。
もし小泉氏が都知事の後継者として名乗りを挙げたら、小池氏が都政を放り出すことへの反発など、あっという間に消え失せただろう。まさにウルトラCの奇策だったはずだ。
小泉氏の支持を取り付けられなかったことは、小池氏の国政進出にとって大きな躓きとなった。
「山口代表首相指名」発言が公明党を怒らせる
2つ目の誤算は、公明党だ。
小池氏は首班指名について聞かれると、「山口代表」の名前を挙げた。
当時飛ぶ鳥落とす勢いだった小池氏が、自民と公明党にくさびを打つことを狙ったのか、それとも余裕から出る軽口だったのか、その真意はわからない。
しかしその後「山口代表首班指名」発言を封印したところを見る限り、計算尽くの狙いがあったとは思えない。
この発言は、公明党を激怒させ、希望への闘志に火をつけてしまった。
さらに公明党は、都政でも希望とたもとを分かって野党に回った。
公明党との「別れ」は、この選挙だけでなく、今後の都政運営にも火種を残すことになった。
小池氏の「排除」発言があだに
そして、最後の誤算は、民進党「合流」を巡るドタバタ劇だ。
希望の党は、民進党の合流希望組に対して、改憲と安保法制で踏み絵を踏ませた。
小池氏が、右も左もごっちゃまぜとの批判があった民進党の二の舞を踏むまいと考えたのは理解できる。
しかしその際に「受ける気はさらさらない」「排除する」といった、上から目線の発言をしたことは致命的だった。
そもそも小池氏は、「男社会のいじめに立ち向かう女性」のイメージ作りで、幅広い支持を集めることに成功してきた。
しかし、「いじめる側」になったことで、自らのイメージを大きく毀損し、逆に「感じが悪い女」「独裁者」のイメージがついてしまった。
まさに、「策士が策に溺れる」である。
選挙の主役は小池氏から枝野氏に…
一方いじめられた側の立憲民主党は、護憲派の受け皿となり、「自民の補完勢力」との批判や疑念があった希望から「反安倍」の支持者も引き抜いた。
さらに、「判官贔屓」な有権者の同情票も集め、立憲民主党はいまや各社の情勢調査で希望に並ぶ勢いだ。
今回の選挙の主役は、小池氏から枝野氏に移ってしまった。
世間の耳目を集め続けていた小池氏だが、もはや風を吹かすのは難しいか。
三都物語も今や昔の話となり(大村愛知県知事が最高顧問就任に「聞いていない」と激怒するおまけもついた)、選挙戦も残すところ10日。
一発逆転の秘策はあるのか、注目だ。
小池百合子氏3つの誤算(この記事)
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