大したことじゃないんです。
いやいつも大したことは言ってないんですが。
今日は弟が入院している病院に行きました。
折れた骨が少しズレたらしく、このままだと手術が必要なんだとか。
母も体調不良が続いてるのでその検査と、手術になった場合どうするかみたいな説明を受けるために、片道1時間の山道を車で走ってきました。
昔話に花が咲く
車を走らせてる時、ふいに母が言いました。
「この曲聴き飽きたわね」って。
車に積んであるオンボロコンポはいちいちCDかけないといけないので、面倒臭いんだかなんだかで気付けば同じアルバムばかりです。
最近音楽を“聴こう”として聴いてはいなかったとか、昔はよくカラオケ行ったよね、なんて話す母は歌うことが本当に好きで。
前はよく一緒にカラオケに行ったりもしたんですけど、一昨年体調を崩してから大きな声が出にくくなって満足に歌えないでいたらしいんです。
「最近全然カラオケにも行けてない」とか、「歌いたい」とか聞いて、なんだかこっちが切なくなってきちゃって。
だから『あ、そういえばスマホに昔の曲入ってるなぁ』なんて思い出して、よく歌ってた曲を流すことにしました。
十八番の歌手を忘れる
“宇多田ヒカル First Love”
母「懐かしいわね、ヒカリ」
私「?…あ、ヒカルだよ、宇多田ヒカル」
母「ヒカリでしょ?宇多田ヒカリ」
私「いや…、宇多田ヒカルだよ」
母「えー?そうだっけ…?」
文字に起こすとなんてこと無いやり取り。
ただ歌手の名前を間違えただけだし、そんなに馴染みがなければ間違えることだってあります。
でもこれは母の十八番で。
アルバムを嬉しそうに買ってきたあの時の光景がふわっと蘇って、その瞬間、見ている景色の何もかもが変わった気がしました。
景色が違って見えた
車の中でうろ覚えの歌詞を恐る恐る口ずさむ母を横目に、動揺を隠しきれなかったし、重たい雨雲を追いやれと流れていく真っ白な雲も、雲間から差し込んだ光もいつもなら綺麗だなって思えるのに、なんだか急に重々しく感じたりして。
忘れちゃったんだなぁ。
あんなに好きだったのに。
そんな言葉ばかりでてきて、私も母も歳を重ねたんだなってジワジワと感じました。
あ、誤解がないように言うと、歳を重ねることも、老いを感じることも決して悪いこととは思ってないんです。
ただ、普段気づかない小さな変化がようやく見えるくらいの変化になって、25歳の頃小さくなったなと感じた母がより一層小さく見えた気がして。
親との時間を大事に
母は自分の声を手繰るように歌い続けました。
出にくくなった声や、忘れてしまった歌詞にどんどん声に自信がなくなっていって、どこかで違和感を感じているんだろうなって思っていたら、
「カラオケ行きたい」
とのこと。
どんな思いでそう言ったのか想像をしたら、目頭少し熱くなってしまって。
そしたら槇原敬之の歌がかかって、途端に嬉しそうにする母がいて。
親子だなーなんて思ったら余計に涙が出そうになったりして。
本当は、まだ本調子じゃないしきっと無理しちゃいけないんだろうけど、今行かなかったら絶対後悔するから、明日親とカラオケに行こうと思います。
なんかおセンチマンな内容で、「親とカラオケ行く」って決めただけの内容の無い話ですみません。
いつかこんなこともあったなって読み返したいので、残しておこうと思ったんです。
それではこの辺で。