消費者庁は2017年3月16日に主に高齢者に対して家庭用永久磁石磁気治療器を販売するジャパンライフ株式会社に2度目の業務停止命令(9ヶ月間)を発しました。
同社は預託法と特定商取引法(訪問販売と連鎖販売取引)の違反によって業務停止処分を受けながら、その営業停止期間中にホテルで営業イベントを開催したり、契約の名称を業務提供誘引販売に変更して勧誘を続けた疑義があるようです。
業務停止処分は預託商法・訪問販売・連鎖販売に対して行われたものなので、ホテルでのイベントや業務提供誘引販売なら対象外だから営業してもいいんじゃね?という軽いノリなのかもしれませんが、これは許されるものでしょうか。

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<本記事の目次>
・消費者庁のジャパンライフに対する処分内容
・預託商法とは
・訪問販売の定義
・連鎖販売取引とは
・国会で追及された業務停止期間中の営業
・業務提供誘引販売とは
・被害額が大きな消費者トラブルの破産例ワースト5
・消費者庁からも天下りの闇?
・マスコミ露出の多さと被害報道の少なさ
・被害対策弁護団の結成

この案件には、預託商法、マルチ商法、訪問販売規制の範囲、内職商法など、消費者契約の問題が山積みです。
更には省庁からの天下りや政界やマスコミとのつながりも見え隠れしていて、何やらいろいろと不気味です。
ツッコミどころが多過ぎるのですが、できるだけ現時点での問題を整理しておこうと思います。


消費者庁のジャパンライフに対する処分内容



2017年3月16日に消費者庁が公表した「預託法及び特定商取引法違反の事業者に対する業務停止命令,取引停止命令等について」(以下、同庁報告書といいます)によれば、ジャパンライフ社の預託法と特定商取引法についての違反に対して9ヶ月間の業務停止処分が下されました。


この処分よりも過去(2016年12月16日)に消費者庁はジャパンライフ社に対して3ヶ月間の業務停止処分を発していたので合計で12ヶ月間の業務停止処分ということになります。

ジャパンライフ社の違反行為としては、以下の事項が認定されています。


預託法
(1)商品が存在しないにもかかわらず,複数の顧客に対し,その旨を故意に告げず,もって,顧客の判断に影響を及ぼすこととなる重要な事項である預託等取引契約の目的とするために購入させる本件商品の保有の状況について故意に事実を告げていませんでした。(重要な事実の不告知)
(2)虚偽記載がある概要書面を交付していました。(概要書面の交付義務違反・書類の備置き義務違反)

特定商取引法(訪問販売規制)
同社は,売買契約に関する事項であって,顧客の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものについて,故意に事実を告げていませんでした。(重要な事実の不告知)

特定商取引法(連鎖販売規制)
同社は,連鎖販売業に関する事項であって,連鎖販売取引の相手方の判断に影響を及ぼすこことなる重要なものにつき,故意に事実を告げていませんでした。(重要な事実の不告知)

同庁報告書



主に重要事項について不実を告げた(=ウソをついた)ことが問題視されています。
それがどのような「重要事項」であったかというと、同社のビジネスモデルの根幹に関わる実態について、契約者に虚偽の説明をしていたことが明らかにされています。



ア 同社からの報告内容を当庁で調査したところによりますと,平成27年9月末当時,同社が預託を受けていたはずの本件商品の個数は合計2万2441個で,同社がレンタルユーザーに対して賃貸していた本件商品の個数は2749個でした。
その差,1万9692個は,本来であれば同社の埼玉工場敷地内物流センターに保管されているはずでしたが,当庁が保管状況の確認を行ったところ,自社在庫としての本件商品95個が存在しただけで,預託を受けて保管されているはずの本件商品は存在しませんでした。
イ このように,同社が保有する本件商品の数が,その預託等取引契約の目的物となる本件商品の数に比して大幅に不足し,約定どおり顧客に割り当てる本件商品が存在しない状況は,他の関係資料も精査したところ,平成27年3月末から平成28年12月末まで継続
していたということがわかりました。
ウ そして,平成27年3月末から平成28年12月末までの期間中に同社から預託等取引契約についての勧誘を受けた複数の顧客によりますと,本件商品の保有状況について事実を告げられていなかったと述べており,同社がかかる事実を告げていなかったことが認められました。

同庁報告書



本件の同社のビジネスモデルとは、健康器具を第三者にレンタルすることで収益を上げるため、その健康器具を購入する出資者を募るものです。
これは出資者から預託された金銭で同社が健康器具を購入し、同社が第三者に健康器具を貸出ししてレンタル料を徴収して収益を出すというものです。
これが預託法の規制対象となります。

同社はこのビジネスの勧誘をするために一般消費者宅に訪問をしていたので、特定商取引法の訪問販売規制の対象にもなります。

更に同社は、このビジネスの紹介販売もしており、新規会員を勧誘すると紹介料(リベート)を支払うことを約して、新たな出資者を募っていました。これは再販売をするのに際して特定利益(リベート)を受け取れる仕組みを構築し、特定負担(出資)をさせる勧誘をする実態があることから、特定商取引法の連鎖販売規制の対象になります。

こうしたビジネスモデルであっても、適正に法定書面が交付され、クーリングオフの対応も行われ、計画通りのレンタル事業が実施されているなら適法であり、消費者庁が介入するものではありません。

しかし、実際には消費者相談の苦情が多発し、同庁調査によってレンタル事業の実態が怪しいことが明らかになって、同社の業務停止処分につながりました。
契約者から預託された出資金で購入すべきレンタル用健康器具が1万9692個も不足しているという事実からは、同社のレンタル事業というビジネスの根幹が成立しておらず、新規契約者の出資金を既契約者の配当金に回す自転車操業状態に陥っているのではないかという疑いが生じるのは自然なことです。

そのような調査や検討の結果として消費者庁は同社に対して、預託法に基づく(勧誘,申込受付及び契約締結)、特定商取引法の訪問販売規定に基づく(勧誘,申込受付及び契約締結)、特定商取引法の連鎖販売取引規定に基づく(勧誘,申込受付及び契約締結)について、9ヶ月間の業務停止処分をしたわけです。


預託商法とは



ジャパンライフ社が行っている健康器具のレンタル事業への出資(預託)という手法は、過去には4207億円もの被害を出した安愚楽牧場の和牛飼育、849億円の被害を出したワールドオーションファームのエビ養殖などと共通するものです。

ウィキペディアによれば、預託商法とは「飼育、栽培、土地開発などの事業を専門家に委託し、その売り上げを分配する事を名目として出資者を募る商法」とされています。
これが事業計画通りに必要機材の調達や購入者確保ができていれば適法であり問題はありません。

ただ、ジャパンライフ社の場合は消費者庁の調査でレンタル機器の調達数が大幅に少ないことが明らかにされており、事業実態が怪しいことが懸念されています。
安愚楽牧場やワールドオーシャンファームと同じ道を辿れば、かなりの被害額になることが想定されます。

そのような消費者被害を予防するために預託法が定められており、「事業者が消費者に対して、3か月以上の期間、対象の物品を預かること又は施設利用権を管理すること及び対応する利益の供与又は一定の価格での買い取りを約束し、消費者がこれに応じ物品を預け又は施設利用権を管理させることを約束する取引」について適用対象とされています。

預託法の対象取引物品には「家庭用治療機器」も含まれており、ジャパンライフ社が提供するレンタル用健康器具も同法の適用対象になります。

預託法では、重要事項の事実不告知が禁止行為に指定されており、これに違反した同社は9ヶ月間の業務停止処分を受けました。


訪問販売の定義



ジャパンライフ社は特定商取引法の訪問販売規定の適用も受けています。
一般的な「訪問販売」のイメージは、家庭に飛び込み営業に来る販売員だと思いますが、特定商取引法の「訪問販売」の定義はもっと広いものになっています。

同法では、「訪問販売」には該当しない「店舗販売」と認定されるには以下の3つの要件を全て満たさないといけません。

(1)3日以上の期間に渡り営業していること
(2)消費者が陳列された商品を自由に選択できる状態であること
  (=密室ではないこと)
(3)レジ等の販売設備を有する施設で販売をすること

例えば、集会所で講演会を開催し、その後に商品の展示即売会を行った場合には、上記の(1)と(3)の要件を満たさないケースが多く、これは「店舗販売」としては扱われず「訪問販売」とみなされます。

よって、同法の訪問販売ルールに沿った法定書面の交付義務やクーリングオフ制度の対応が必要になります。

同法の訪問販売規定では、重要事項の事実不告知が禁止行為に指定されており、これも同社の業務停止処分の理由になっています。


特定商取引法の訪問販売の定義|遠山桂ブログ(2014年09月29日)



連鎖販売取引とは



連鎖販売取引はマルチ商法とも呼ばれており、特定商取引法では以下のように定義されています。

(1)物品の販売(または役務の提供等)の事業であって
(2)再販売、受託販売もしくは販売のあっせん(または役務の提供もしくはそのあっせん)をする者を
(3)特定利益(紹介料や販売マージン、ボーナス等)が得られると誘引し
(4)特定負担(入会金、商品購入費、研修費等の名目で、何らかの金銭的な負担)を伴う取引(取引条件の変更を含む。)をするもの

要は、新規会員を勧誘するとリベート(特定利益)がもらえるから儲かると語って、販売組織に費用(特定負担)を払わせて入会させるビジネスです。

このビジネスは法定書面の交付義務、クーリングオフ制度に対応、中途解約制度に対応など、事業者に対してかなり厳しいルールで運用されています。

ジャパンライフ社は新規会員への紹介ビジネスも行っていたため、特定商取引法の連鎖販売取引に関する規制の適用も受けます。
連鎖販売取引規定には重要事項の事実不告知が禁止行為に指定されており、同社はこの面からも業務停止処分を受けています。


国会で追及された業務停止期間中の営業



ジャパンライフ社は、消費者庁より預託法・特定商取引法(訪問販売・連鎖販売取引)の違反行為を指摘され、これら3つの取引について9ヶ月間(2017年12月まで)の新規勧誘および新規契約の業務停止処分を受けました。

普通であれば、この業務停止期間中の勧誘は自粛するところです。
しかし、同社の商魂はたくましいというか、行政処分におとなしく服するようなことはなかった模様です。


 

被害額1千億円超ともいわれるマルチ商法大手ジャパンライフの被害者が、業務停止命令中にもかかわらず増え続けている―。日本共産党の大門実紀史議員は24日の参院財政金融委員会で、行政命令を無視した同社の営業実態を内部告発などから明らかにしました。

(中略)

大門氏は、今月に同社が都内ホテルで開いたイベントの模様を、内部告発の動画をもとに紹介しました。

 イベントには過去最大の1013人が参加。歌謡ショーで高揚感をあおった後、山口会長が「3月の売り上げが30億円、4月は35億5千万円、今月はきょうで25億円」と訴えています。同社社員が「健康用品」について事実と異なる効能を語ったり、「高齢者が毎月収入を得られる仕事を提供する」と語ったりする様子も収められています。

 大門氏は、業務停止命令に違反する営業をしていることは明らかだとし、動画を提供するので違法性を確認するよう要求しました。消費者庁の川口康裕次長は「事実を確認していきたい」と述べるとともに、ホテルでの営業も業務停止命令が禁止する訪問販売にあたり得るとの認識を示しました。

 大門氏は、内部告発とは別に得た資料も紹介。同社が「レンタル料」を「月額活動手当」などと言い換えてペーパー商法を続けていることを明らかにし、「刑事告発も念頭に対応を検討すべきだ」と迫りました。

しんぶん赤旗(2017年5月25日)|日本共産党



業務停止期間中に都内ホテルでイベントを開催して、会長が販売強化の檄を飛ばしたということです。
こうした会場で展示即売会を開催したなら、前述の「訪問販売」要件に該当するので行政命令に対して違反ということになります。

また、『同社が「レンタル料」を「月額活動手当」などと言い換えてペーパー商法を続けている』との記述もあります。
預託商法やマルチ商法(連鎖販売取引)は業務停止を受けているので、契約書面上ではそれらに該当しない形態のビジネスモデルを唱い、新規のビジネスとして勧誘を始めれば営業できるという超解釈を採ったようです。

その新規ビジネス形態とは、業務提供誘引販売です。


業務提供誘引販売とは



業務提供誘引販売とは、特定商取引法で規定される取引の一種です。一言で言えば「内職商法」です。

特定商取引法の定義では以下のようになります。

(1)業者が販売する広義の商品又は提供する役務を利用する業務により、顧客に対して利益(「業務提供利益」という)が得られるとして誘引(勧誘)する。
(2)但し、この「業務」は、業者が自ら提供する業務、又は、業者があっせんした業務に限られる。
(3)顧客に何らかの金銭的負担(「特定負担」という)がある。
(4)広義の商品の販売若しくはそのあっせん、又は、役務若しくはそのあっせんに係る取引(取引条件の変更を含む)である。

つまり、事業者が消費者に対して内職をあっせんするとして、会費(特定負担)を徴収するものです。

健康器具のレンタルは止めて、「月額活動手当」という報酬を支払う内職のあっせんモデルですよという言葉の言い換えですね。
それで業務停止処分を受けている預託手法やマルチ商法(連鎖販売)ではなく、新しい内職商法(業務提供誘引販売取引)だから勧誘や契約実務をしても大丈夫という見解のようです。

でも、契約者が購入するのは従前と同様の健康器具ということですから、ビジネスの実態は何も変わっていません。
このような書面上の書き換えだけで業務停止逃れが認められるなら、法令や消費者庁の存在意義に関わる問題だと思うのは筆者だけでしょうか。


被害額が大きな消費者トラブルの破産例ワースト5



ジャパンライフ社はテレビCMを始めとしてマスコミへの広告も多く、グループ各社で多くの従業員も抱えています。
健康器具関連の出資金の合計額は相当な金額になると見込まれます。

過去に消費者トラブルを引き起こして破産した会社は多くありますが、ウィキペディアからその破産例の被害金額ワースト5を引用します。


025

これらは過去の事例ですが、ビジネス実態が無く、集金と配当金の自転車操業に陥るケースでは、いつかは破綻をするものです。
上記の過去事例では、破産後には出資金はほとんど戻って来ておりません。

消費者庁の処分理由と過去事例を見比べて、こうしたビジネスの危うさを理解したいものです。


消費者庁からも天下りの闇?



ジャパンライフ社への業務停止処分までにはずいぶんと時間がかかり、その業務停止処分中の逸脱行為に対しても消費者庁の反応はどうも鈍いようです。

そうすると以下のような憶測も流れるようになります。



消費者庁は、入手した情報をもとにこれらの事業を調査し、裁断を下したかにみえたが、実はこの処分が出るまでの過程を検証する中で、外部からまったく見えなかった“暗部”が浮かび上がった。

14年にジャパンライフの調査にあたった消費者庁幹部が、同社に自身の天下りを要求し、消費者庁がジャパンライフに行政処分を出す前に、その天下りが実現していたのだ。

(中略)

同社に関し、14年から16年11月までの間に消費者庁に寄せられた高齢者らからの苦情は約400件。契約額の最高額は2億円だったという。消費者を守る立場にある消費者庁の不作為が被害を広げたとすれば、「処分しました」で済む話ではない。

1年間の業務停止命令処分についても「軽すぎるのではないか」との指摘が出ており、消費者庁が一連の過程で手心を加えた疑いも排除できない。疑惑は向かう先に底なし沼のように広がっているのだ。


消費者庁「天下り先」に手心疑惑|元課長補佐を雇ってくれた「ジャパンライフ」は、業務停止命令中に客を勧誘するも不問に。|FACTA ONLINE



この事実関係は定かではありませんが、本件についての消費者庁の動きは特に慎重のようです。


マスコミ露出の多さと被害報道の少なさ



これだけの疑惑がありながら、ジャパンライフ社に関してはマスコミ報道は多くありません。
むしろ業務停止処分後もマスコミでの同社の広告出稿が続いています。

同社のホームページではマスコミ掲載の記録が表示されています。
以下はその一例です。


雑誌女性自身2017年8月22日発売
発行所/光文社
女性自身

新聞日刊スポーツ2017年8月21日発売
発行所/日刊スポーツ新聞社
日刊スポーツ

雑誌美しいキモノ2017年8月19日発売
発行所/ハースト婦人画報社
美しいキモノ

新聞東京新聞2017年8月11日発売
発行所/中日新聞東京本社
東京新聞

雑誌週刊女性2017年8月8日発売
発行所/主婦と生活社
週刊女性

新聞読売新聞(夕刊)2017年8月1日発売
発行所/読売新聞東京本社
読売新聞(夕刊)

新聞日刊スポーツ2017年7月11日発売
発行所/日刊スポーツ新聞社
日刊スポーツ

新聞読売新聞(夕刊)2017年7月5日発売
発行所/読売新聞東京本社
読売新聞(夕刊)

雑誌女性自身2017年6月27日発売
発行所/光文社
女性自身

新聞日刊スポーツ2017年6月17日発売
発行所/日刊スポーツ新聞社
日刊スポーツ

新聞東京新聞2017年6月16日発売
発行所/中日新聞東京本社
東京新聞

雑誌女性セブン2017年6月8日発売
発行所/小学館
女性セブン

新聞朝日新聞2017年6月2日発売
発行所/朝日新聞東京本社
朝日新聞

雑誌美しいキモノ2017年5月20日発売
発行所/ハースト婦人画報社
美しいキモノ

新聞東京新聞2017年5月19日発売
発行所/中日新聞東京本社
東京新聞

雑誌女性自身2017年5月16日発売
発行所/光文社
女性自身

新聞、雑誌掲載|ジャパンライフ より抜粋引用




新聞各社も同社からの広告収入が無視できない事情があるのかもしれません。


被害対策弁護団の結成



ジャパンライフ社には、ここに書いたような諸々の疑惑がありますが、本記事の執筆時点ではクーリングオフ等の返金には応じている模様です。(今後のことはわかりません)。

同社との取引で不審に思うところがあれば、まずは最寄りの消費生活相談センターに相談をして下さい。
なかなか返金がされないケースでは弁護士への相談ということになりますが、被害対策弁護団も結成されているようです。

ジャパンライフ被害対策中部弁護団



今後の動きを注視したいと思います。




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