トランプ氏、「10倍の核兵器希望」報道のNBC脅す 免許取り上げに言及

カナダのジャスティン・トルドー首相夫妻(左と右)をホワイトハウスに迎えたドナルド・トランプ米大統領夫妻(11日) Image copyright AFP
Image caption カナダのジャスティン・トルドー首相夫妻(左と右)をホワイトハウスに迎えたドナルド・トランプ米大統領夫妻(11日)

ドナルド・トランプ米大統領は11日、自分が核兵器を現在の10倍欲しがっていると伝えた米NBCニュースに対して、放送免許取り上げの可能性に言及した。NBCは同日、レックス・ティラーソン米国務長官が大統領を「間抜け(moron)」と呼んだのは、大統領が米国の核備蓄量を10倍にしたいと述べたからだと伝えた。「間抜け」発言報道も、最初はNBCによるものだった。

トランプ氏は11日朝、「NBCやネットワークからこんなにフェイク・ニュースが出てくる状態で、いつになったら連中の免許を問題視してもいいんだ? 国にとってよくない!」とツイートした。

この後、カナダのジャスティン・トルドー首相夫妻をホワイトハウスに迎えたトランプ氏は、報道陣を前に、NBCの報道を否定。その上で、「マスコミが書きたいことをなんでも書けるというのは、正直言って実に不快だ。誰かが調べるべきだ」と述べた。

核兵器の備蓄量を増やしたいのかとの質問には、「完璧な状態」に整えておく話をしただけだと説明した。

「そうじゃない。まったく完璧な状態に維持しておきたいだけだ。まさにそうしてる最中だ。核能力を」

「しかし今より10倍の量が欲しいと僕が言ったなどというのは、まったく不必要だ。信じてもらいたい」と大統領は重ね、「僕が欲しいのは、刷新と完全な改良だ。最高の状態でないとならない」と強調した。

ジェームズ・マティス国防長官も、NBCの報道に反論。長官は声明で、「大統領が米国の核備蓄拡大を求めたという最近の報道は、完全に事実と異なる」、「そのような誤った報道は無責任だ」と批判した。

「民主国家ではなくなる」

一方で、放送事業者の免許取り上げを示唆する大統領のツイートに対して、表現規制の懸念から強い反発の声が上がっている。

米ジャーナリスト保護委員会(CPJ)は、「NBCの放送免許に反対するべきだというトランプの主張によって、他の政府の独裁傾向も助長される」と非難した。

前オバマ政権の政府倫理局長を務めたウォルター・シャウブ氏は、突き詰めていけばいずれ「この国が民主国家ではなくなる状態」にまで達する恐れがあると警告した。

NBCニュースによると、トランプ氏は今年7月に国防総省で開かれた高官級会議で、米国の核備蓄量を劇的に増やしたいと政府幹部に話した。米国の核兵器数が1960年代以降、減り続けていると図示する会議資料のスライドを見て、トランプ氏はそのように発言したのだという。

NBCは会議出席者3人の話として、出席者はトランプ氏のその要請に驚いたと伝えている。会議には統合参謀本部幹部とティラーソン国務長官も出席していた。

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ティラーソン国務長官、「間抜け」発言報道に「そんなつまらないこと」

NBCによると、トランプ氏は核兵器以外にも米軍備の拡大を求めたという。

非営利の米軍備管理協会(ACA)によると、米国の核兵器は7100基、ロシアは7300基。

放送事業者の免許については、たとえ大統領が取り上げようとしても簡単にはできないだろうと言われている。

米国の放送事業者を監督する連邦通信委員会(FCC)は、系列を含めたネットワーク放送局全体に免許を交付しているのではなく、個別の地方局に与えている。NBCはそのうち30近い地方局を傘下に収めている。

専門家たちは、報道内容が不公平だからという理由で、放送免許の交付は不当だと主張するのは難しいはずだとみている。


<解説> トランプ氏の無効な脅し――アンソニー・ザーチャーBBC北米担当記者

ホワイトハウスのサラ・ハッカビー・サンダース大統領報道官は先週、ドナルド・トランプは憲法が保障する報道の自由の保護を「とてつもなく信奉している」と述べた。そして今週、大統領はテレビ局の報道内容に感心しないからと、その局の放送をやめさせることができないか検討している。考えてるだけだよ!

脅しの内容にはまったく実効性がないが、だからといって大統領は脅すのをやめたりしない。

マスコミ攻撃はトランプ氏にとって、大好きな趣味の一つだ。マスコミを叩くことで自分の苛立ちを吐きだし、誰かを責めたて、報道陣を煙に巻く。記者というのは常に、自分たち報道機関について自問自答するのが大好きなので。

プロアメリカンフットボール・リーグ、NFLの選手たちが国歌演奏中に人種差別に抗議して膝を着いている件についてもそうだが、ことマスコミの偏向の話題になると、対立軸があっという間に引かれ、世論は分断される。大統領はこれをよく承知しており、自分のいいように利用する。

しかし、個々の記者を気まぐれに攻撃するのと、報道内容を理由に政府が放送局をどう抑圧しようか考えるのとは、まったく別の話だ。

現在の米国ではそのような展開は考えられないとしても、報道の自由が米国ほど根深く確立していないところは世界中にある。その国々の指導者も、米大統領の動向を注視しているのだ。

(英語記事 Trump threatens broadcaster NBC after nuclear report

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