浜名海兵団顛末記   作:野分蘭蔵
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コラボと言いたいのですが、コラボ先が諸事情で消えたので、吹雪篇とさせていただきます。


浜北森林公園

ここは浜名湖弁天島。

崇之運転の【浜名海兵団参番】は助手席に葉山、後部座席に吹雪、時雨、夕立を乗せ、一路、旧東海道を北東に走る。
弁天島を含む浜松市は、やたら広いことで有名であり、本来の構想での環浜名湖市が湖西市の拒否と、新居町の湖西市編入により断念。
その侵略の魔の手(マテ)を天竜川中流域に伸ばしたため、現在では面積だけなら日本第二位という、無茶な(ヲイ)市となっていた。
そんな浜松市の浜北区には県の森林公園があり、割と自然豊かな上にバードウォッチングのメッカとなっているので、どうせランチを持っているなら、ピクニック気分を味わおうと言う話となり、森林公園のバードピアに向かうことになったのだ。
弁天島からのコースは到って単純で、旧東海道を浜松まで行き、浜松中心街から秋葉街道とも言われる新バイパスを走るだけ。
そうすると浜北区に入り、私鉄の横を走る二俣街道を北へ向かうと、岩水寺という古刹に向かう脇道になる。
その岩水寺が森林公園の入り口なのだ。

「山奥だなあ」

つい時雨が呟く。
普段、港湾部ばかり見てるから川と山しかない風景は意外と新鮮である。
岩水寺は真言宗の古刹で、【赤蛇伝説】の終焉の地としても有名である。
車道が敷地内を走っており、車道沿いに本堂や赤池、白山神社に金城稲荷、四天王堂に弘法大師堂などを過ぎると、空中に長い吊り橋が見える。
そして至るところ森林が続き、これが森林公園たる所以である。

「吊り橋を渡りたいっぽい」

と夕立が提案するが

「お父さんが松葉杖ですから危険です」

と言う吹雪の言葉に断念した。
一行はそのまま道なりに走ると、峠に喫茶店がある。
その名も【峠の茶屋】と言い、一行はものは試しと寄ってみた。
お茶と一皿の団子を食べながら、店内の思いっきり和風な雰囲気を堪能する。

「お店の裏から吊り橋に行けるっぽい!」

と夕立はどうにも吊り橋に行きたいようである。
結局葉山が折れ、吹雪と時雨と夕立で対岸まで渡り、崇之と葉山が対岸にて車で待つことになる。
空の散歩道と名付けられたこの吊り橋は、長さ150m、高さ30m、幅1mと、かなりスリリングな吊り橋だが、吊り橋の中央まで行けば弓張山地の東部の自然林が一望できる。

吹雪、時雨、夕立の三人は、吊り橋を渡りつつ風景を楽しむ。
真面目に空の散歩道と言うだけあり、空を飛んでるかの様だ。
たまにすれ違うハイカーと挨拶し、渡り終えた場所には崇之と松葉杖をついた葉山がいる。

「どうだったかな?」

葉山が吹雪に訪ねると、吹雪も表情が柔らかくなってる。

「ええ、新鮮な感じですね。港とは空気が違います」

「僕も結構楽しめるよ」

と時雨は言い、

「楽しかったっぽい」

と夕立も言う。
そして一行は再び車に乗り、道なりにバードピアへ。
ここには大きな駐車場があり、崇之は車を停めると、荷物を時雨と手分けして持つ。
一旦、バードピアの中に入った一行は、中を色々と見て回る。
森林公園内にいる野鳥のリストや、木彫りの展示、映像と剥製を使った森林公園の一日の上映や、何かしらのテーマで常時開催されている、写真展などを見て回り、貸し出しの双眼鏡で山の遠望などを見てから、屋外のレストエリアへ。

そこでランチとなる。

「たまにはハイキングも楽しいかもね」

と時雨は言い

「はい、気分転換には良いかと」

と吹雪も同意した。
ここ二日間、色々と考えることが多くて、どうも深く考え過ぎていたようであった。
とりあえず、旅行は楽しんでおこうと吹雪は感じていたのだ。

「葉山はいつまで居られるんだ?」

と崇之は言う。

「一応、航空祭まではいるつもりだがね」

と葉山は答えた。
それまでは安ホテルで、ゆっくりと養生すれば良さそうだ。
等と考え始める。

「そうか。ならたまにはカフェにも来いよ」

と崇之も答えた。
航空祭までにはまだ二週間はある。
毎日は付き合えないが、そこはそれ、近くにいれば、それなりに顔は合わせられるのだから、別に良いだろう。
一行はランチを済ませると、散策を兼ねて自然遊歩道に入る。
秋の気配がし始める山は、空気が気持ちよく、なんとなく自分達が考えてる事がちっぽけに思えてきたのだった。

やがて一行は車に戻り、一旦カフェに行こうとなる。

「もっと遊びたいっぽい」

と言う夕立の意見はやんわりと却下される。

「夕方から冷え込むから、またゆっくりね」

と時雨が言うと、

「照彦と来るから良いっぽい」

と答えた。
まあ峠道も多いので、ツーリングにも良い道であるのは確かだから、気温も手伝って、気持ち良いだろう。

一行は夕立が納得してから、車に乗り下山したのである。


続く。



一旦、次回かその次位を目処に、吹雪篇を終わらせる予定です。