日本共産党の綱領(2004年改)全文を読んでみたら進化に驚いた

僕は昔から共産党が大嫌いでした。今でも殆ど共産党アレルギーと言ってもいいほど、ハナから受け付けることができず、体質的に合わないのだと自嘲するくらいです。とにかく理想だけを並べ立てて、現実を直視しない政治姿勢が気にくわないのかも知れません。全共闘時代の学生運動の匂いがプンプンするのも好きじゃないので、公式サイトさえ見ようとしませんでした。公安調査庁からマークされていると言うから、かなり危険なテロリスト団体だろうという先入観もありました。

でもそれだけでは好き嫌いのイメージの問題であって、論理的な説得力には欠けるので、僕はきちんと日本共産党を否定できる根拠を挙げたうえで批判しようと思いました。僕の記憶によると日本共産党の綱領にはたしか次のような目標が掲げられていて、それ故に日本共産党ではダメなのだ、と述べようと考えました。

  • マルクス・レーニン主義による社会主義国家建設のため武力革命を目指す。
  • 天皇制の全面否定と廃止を目指す。
  • 自衛隊の全面否定と廃止を目指す。

このようなとんでもない綱領を掲げている共産党は、いくら政策で良いことを言っていても、断じて許容できないと書くつもりでした。しかし念のため現在の日本共産党の綱領を確認しようとよく読んでみると、これらは全部否定され、驚くほど穏健で現実的なものに進化していることに気がついたのです。

綱領全文はこちらから→日本共産党綱領

まず、マルクス・レーニン主義については一言も書かれていませんでした。レーニンについても歴史的に積極的な努力はあったと認めつつも、

レーニン死後、スターリンをはじめとする歴代指導部は、社会主義の原則を投げ捨てて、対外的には、他民族への侵略と抑圧という覇権主義の道、国内的には、国民から自由と民主主義を奪い、勤労人民を抑圧する官僚主義・専制主義の道を進んだ。「社会主義」の看板を掲げておこなわれただけに、これらの誤りが世界の平和と社会進歩の運動に与えた否定的影響は、とりわけ重大であった。

とソ連の社会主義について完全に否定しています。また社会主義国家建設などとは、どこにも書いておらず、武力革命については、それを匂わす文言さえ見当たりませんでした。代わりに、

現在、日本社会が必要としている変革は、社会主義革命ではなく、異常な対米従属と大企業・財界の横暴な支配の打破―日本の真の独立の確保と政治・経済・社会の民主主義的な改革の実現を内容とする民主主義革命である。それらは、資本主義の枠内で可能な民主的改革であるが、日本の独占資本主義と対米従属の体制を代表する勢力から、日本国民の利益を代表する勢力の手に国の権力を移すことによってこそ、その本格的な実現に進むことができる。この民主的改革を達成することは、当面する国民的な苦難を解決し、国民大多数の根本的な利益にこたえる独立・民主・平和の日本に道を開くものである。

と「民主主義革命」という、資本主義の枠内で可能な民主的改革を掲げています。これなら十分納得がいきます。さらに天皇制については、

天皇条項については、「国政に関する権能を有しない」などの制限規定の厳格な実施を重視し、天皇の政治利用をはじめ、憲法の条項と精神からの逸脱を是正する。

と事実上認めています。自衛隊については、

自衛隊については、海外派兵立法をやめ、軍縮の措置をとる。安保条約廃棄後のアジア情勢の新しい展開を踏まえつつ、国民の合意での憲法第九条の完全実施(自衛隊の解消)に向かっての前進をはかる。

と国民の合意があれば最終的な解消を目指すものの、まずは「海外派兵立法をやめ、軍縮」の措置をとるという、現実的な目標を立てています。

日本の歴史的領土である千島列島と歯舞諸島・色丹島の返還をめざす。

とあるように、国後、択捉のみならず千島列島をも領土とするところから、領土についての独特な歴史認識と強い愛国心が感じられます。

とりわけ日本共産党が強調して綱領の中に書いている外交理念とは、

国連憲章にもとづく平和の国際秩序か、アメリカが横暴をほしいままにする干渉と侵略、戦争と抑圧の国際秩序かの選択が、いま問われていることは、重大である。日本共産党は、アメリカの覇権主義的な世界支配を許さず、平和の国際秩序を築き、核兵器も軍事同盟もない世界を実現するための国際的連帯を、世界に広げるために力をつくす。

と対米追従の姿勢を批判するものであり、経済も「グローバル化」の名の下に進められた、アメリカ経済の覇権主義から脱する必要性があることを掲げています。これについての賛否、あるいは本当に可能なのかどうかと言った論争はあってしかるべきだと思います。しかし一つの理想像を掲げているということは、言えると思います。トランプ政権になってアメリカの横暴さが目立ち始めたけれど、それより12年も前からアメリカの覇権主義に警笛を鳴らしていたことは、先見の明があったということになります。

これまで見てきたとおり、日本共産党の綱領は、僕が想像していたよりも格段に進化し、現代の日本の政治をになう政党として、現実路線を強く打ちだしていることがわかりました。もちろん第二段階として、国民の合意があれば、科学的な社会主義革命を目指すという野心は残していますが、少なくとも公安調査庁がマークするような危険な団体ではないということは言えるでしょう。今の安倍独裁政権よりは、はるかにマシなので、脱安倍独裁のための一票を、安心して投ずることができます。公安調査庁は日本共産党などに張り付いているくらいなら、国際テロの対策にもっと力を注いでもらいたいと思います。

僕自身は今でも、長年体に染みついた共産党アレルギーは、治りそうにありません。自らの不勉強を恥じるとともに、イメージというのは怖ろしいと思いました。賢明な皆さんは綱領を熟読し、投票するにふさわしい政党かどうか、各自で考えてみていただければ幸いです。

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3 comments on “日本共産党の綱領(2004年改)全文を読んでみたら進化に驚いた
  1. 今も昔も共産党で一番鼻につくのは「自分たちは人民の前衛である、あらねばならない」という強烈な権力欲なんです。
    市民・国民から自発的に始まり盛り上がる運動(反体制的)には、必ず共産党が「指導的役割を果たさねばならぬ」とばかりに首を突っ込んできます。時には分裂も厭いません。
    被爆者団体、反戦平和運動、反部落差別運動、今は亡き学生運動、労働組合(自治労も)、みな彼らが分裂させました。
    綱領がいかに変わろうとも、その「前衛」意識は抜けてはいますまい。
    やっと生まれ始めた「日正規労働者のユニオン」「反ブラック企業運動」も、もう少し組織が大きくなって政治的圧力を持つときっと、共産党の指導に従うべしと介入してくるでしょう。

      • はるか1970年代我が「極左」大学(なにせ日共民生=「右翼日和見」でした)で、社会党系の学生団体がやっと開催にこぎつけた「学生大会」に乗り込んできて(それまでビラもまかなかった)乗っ取ろう彼らの姿はその後も変わっていないと思いますね。
        現役時代区役所で支部長(連合系自治労=全国的には主流派)であった時代の共産党系「自治労連」も「自高我慢」ぶりは健在でした。

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