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吹雪篇第二十話。
少しずつ方向転換中。
No smoke with fire.少しずつ方向転換中。
ここは浜名湖弁天島午後五時。
夕焼けこやけのチャイムが鳴り響く中、浜名海兵団カフェの駐輪場に、NS-50Fが入ってきた。
駆逐隊の【縁の下の力持ち】。またの名を【浜名海兵団のジム】こと村雨である。
「ただいまー♪って今日は白露と仁さんなのー?」
と間延びした、何時ものマイペース口調がカフェの中に響く。
「村雨お帰り♪まあ、少佐と時雨はお客さんとお出掛けだよ」
と白露が答える。ぶっちゃけ丸々暇な一日で、崇之と違ってやや味付けが濃い目の仁だけに、常連からも微妙な顔をされていたのだが、そこはそれ。そういうのは言わないのが白露テイストである。
「そーなんだ♪じゃあ今日は遅いかな?」
「夕立もいるから、意外と早いかもよ」
まあ村雨の質問も妥当だが、白露が言うように夕立がいたら、落ち着いた所に行くわけもない。白露の予想だと、遅くとも午後七時までには帰って、ここで食事となるだろう。
仁も全く同意見で、たまにはと浜名海兵団カレーを昼頃からコトコトしてたりする。
「今夜はカレーかあ♪」
と村雨が喜ぶ。
「まあ、少佐たちが帰る頃には、味がまろやかになるぜw」
と仁も話す。
「ま、バイト帰りでお腹空いてるなら、ティーセットあるよ♪」
と白露が言い出す。午後三時用として、仁が考えた今日のティーセットは、コーヒーか紅茶に、ホットケーキの物である。仁が仕込みで、白露でも焼ける物を選んだのだが、どれだけ型を用意しても少し楕円になる。
「これは一種の才能だなw」
と仁は覗き込んでから、何時もの少し嘲るような言葉を吐き、直後に白露の裏拳が炸裂する。
そんな何時ものやり取りが続いてると、隆起もやって来た。今日は日中に仕事があったらしく、繋ぎ姿で出張修理用の軽バンで乗り付けてきた。
「ばんわー♪」
「りゅーさん、お疲れ様ー♪」
隆起の言葉に一番に答えたのは、やはり村雨だ。
「隆起さん、おっ疲れ♪」
「お疲れさんw」
と白露と仁も続く。まあ何時もの時間に何時もの面子。
これが売上に繋がらない理由でもあるが、マスターである崇之が納得してるから仕方ない。
隆起も仁からコーヒーをもらい、あまり邪魔にならない二人掛けテーブルに座ると、村雨もそこに行き、白露も含めて話し始める。
「でさー、あの客人って結構堅物でね」
白露は昨日の話を、村雨と隆起に聞かせた。
「技術少佐でしょ?堅物なのは仕事柄なんじゃないかな?」
と村雨は言う。まあはっきり言えば偏見なのだが、周りにいないタイプなのは確かで、同じ技師タイプでも隆起はあくまでも整備士で、開発ではなくメンテナンスが主であり、有るものを直したり調整したり、改造するのは得意だが、いきなり新システムを作るのは専門外だ。
艦娘兵装開発局なんて雲の上の部署の局員で、実験技師なんて存在は村雨には全く実感がない。
もっとも艦娘の大半にとっては、提督と拠点メンバー位しか接点はないし、持ってる装備を誰が開発したかではなく、愛用の装備を毎日メンテナンスをしてくれる、整備士たちの方が余程信頼できる訳だから、この辺は仕方ない。愛車の設計者より、愛車の整備士が信用できるのに似ているだろう。
結局、実戦部隊の一員なんて、そんなもんである。
「まあ、自分としては整備している道具を開発した人って感じでは興味ありますね」
と整備士らしい感想を持つ。
「まあ、吹雪ってのに会えばわかるよ」
白露は少し苦々しく言う。
「何でかな?」
「時雨に似てるから」
村雨の問いに、白露が答えると、途端に二人は笑い出したのだった。
この辺は秘書艦の性だろう。吹雪も時雨も秘書艦なのだから、提督を全面的に信頼して、それに答える。
時雨の場合は崇之の考えをまとめる為の話し相手になり、それと同時に崇之の身の回りの邪魔者を排除する事に専念した。
吹雪の場合は、葉山の実験に徹底的に付き合い、身体の色素が無くなった。
どちらも結局は【滅私奉公】の考えであり、その辺が秘書艦の共通点である。
戦後、提督と秘書艦の結婚率が高いのは、その辺の苦楽を共にした男女と言う面も働くだろう。
「じゃー、葉山って人も少佐に似てたりして」
「少佐を神経質にした感じかな?」
とこれも白露なりのバッサリした意見だ。
どちらも少佐止まりで、崇之は海兵団の教育支援隊の隊長、葉山は開発局実験隊の隊長。
どちらも本来なら実戦に参加する部隊ではないが、戦争初期の深海棲艦による本土襲撃の際に迎撃の為に出撃し、その際に一度だけ勒を並べ、以降は何かと交流するようになったのだから、空軍の小林と同じく【似た者同士】とも言えよう。
「そんじゃあ、変わり者だね」
と村雨が止めを刺して、そこでまた爆笑となる。
本人たちは、そこまで言われているとは露知らず、同時刻には頃合いを見て迎えに来た、時雨と吹雪と夕立によりジオラマファクトリーから連れ出され、代わりに、やはりと言うかなんと言うか、一階の模型店で買い物に付き合わされてから、ようやく商業施設から出たのだった。
続く。
夕焼けこやけのチャイムが鳴り響く中、浜名海兵団カフェの駐輪場に、NS-50Fが入ってきた。
駆逐隊の【縁の下の力持ち】。またの名を【浜名海兵団のジム】こと村雨である。
「ただいまー♪って今日は白露と仁さんなのー?」
と間延びした、何時ものマイペース口調がカフェの中に響く。
「村雨お帰り♪まあ、少佐と時雨はお客さんとお出掛けだよ」
と白露が答える。ぶっちゃけ丸々暇な一日で、崇之と違ってやや味付けが濃い目の仁だけに、常連からも微妙な顔をされていたのだが、そこはそれ。そういうのは言わないのが白露テイストである。
「そーなんだ♪じゃあ今日は遅いかな?」
「夕立もいるから、意外と早いかもよ」
まあ村雨の質問も妥当だが、白露が言うように夕立がいたら、落ち着いた所に行くわけもない。白露の予想だと、遅くとも午後七時までには帰って、ここで食事となるだろう。
仁も全く同意見で、たまにはと浜名海兵団カレーを昼頃からコトコトしてたりする。
「今夜はカレーかあ♪」
と村雨が喜ぶ。
「まあ、少佐たちが帰る頃には、味がまろやかになるぜw」
と仁も話す。
「ま、バイト帰りでお腹空いてるなら、ティーセットあるよ♪」
と白露が言い出す。午後三時用として、仁が考えた今日のティーセットは、コーヒーか紅茶に、ホットケーキの物である。仁が仕込みで、白露でも焼ける物を選んだのだが、どれだけ型を用意しても少し楕円になる。
「これは一種の才能だなw」
と仁は覗き込んでから、何時もの少し嘲るような言葉を吐き、直後に白露の裏拳が炸裂する。
そんな何時ものやり取りが続いてると、隆起もやって来た。今日は日中に仕事があったらしく、繋ぎ姿で出張修理用の軽バンで乗り付けてきた。
「ばんわー♪」
「りゅーさん、お疲れ様ー♪」
隆起の言葉に一番に答えたのは、やはり村雨だ。
「隆起さん、おっ疲れ♪」
「お疲れさんw」
と白露と仁も続く。まあ何時もの時間に何時もの面子。
これが売上に繋がらない理由でもあるが、マスターである崇之が納得してるから仕方ない。
隆起も仁からコーヒーをもらい、あまり邪魔にならない二人掛けテーブルに座ると、村雨もそこに行き、白露も含めて話し始める。
「でさー、あの客人って結構堅物でね」
白露は昨日の話を、村雨と隆起に聞かせた。
「技術少佐でしょ?堅物なのは仕事柄なんじゃないかな?」
と村雨は言う。まあはっきり言えば偏見なのだが、周りにいないタイプなのは確かで、同じ技師タイプでも隆起はあくまでも整備士で、開発ではなくメンテナンスが主であり、有るものを直したり調整したり、改造するのは得意だが、いきなり新システムを作るのは専門外だ。
艦娘兵装開発局なんて雲の上の部署の局員で、実験技師なんて存在は村雨には全く実感がない。
もっとも艦娘の大半にとっては、提督と拠点メンバー位しか接点はないし、持ってる装備を誰が開発したかではなく、愛用の装備を毎日メンテナンスをしてくれる、整備士たちの方が余程信頼できる訳だから、この辺は仕方ない。愛車の設計者より、愛車の整備士が信用できるのに似ているだろう。
結局、実戦部隊の一員なんて、そんなもんである。
「まあ、自分としては整備している道具を開発した人って感じでは興味ありますね」
と整備士らしい感想を持つ。
「まあ、吹雪ってのに会えばわかるよ」
白露は少し苦々しく言う。
「何でかな?」
「時雨に似てるから」
村雨の問いに、白露が答えると、途端に二人は笑い出したのだった。
この辺は秘書艦の性だろう。吹雪も時雨も秘書艦なのだから、提督を全面的に信頼して、それに答える。
時雨の場合は崇之の考えをまとめる為の話し相手になり、それと同時に崇之の身の回りの邪魔者を排除する事に専念した。
吹雪の場合は、葉山の実験に徹底的に付き合い、身体の色素が無くなった。
どちらも結局は【滅私奉公】の考えであり、その辺が秘書艦の共通点である。
戦後、提督と秘書艦の結婚率が高いのは、その辺の苦楽を共にした男女と言う面も働くだろう。
「じゃー、葉山って人も少佐に似てたりして」
「少佐を神経質にした感じかな?」
とこれも白露なりのバッサリした意見だ。
どちらも少佐止まりで、崇之は海兵団の教育支援隊の隊長、葉山は開発局実験隊の隊長。
どちらも本来なら実戦に参加する部隊ではないが、戦争初期の深海棲艦による本土襲撃の際に迎撃の為に出撃し、その際に一度だけ勒を並べ、以降は何かと交流するようになったのだから、空軍の小林と同じく【似た者同士】とも言えよう。
「そんじゃあ、変わり者だね」
と村雨が止めを刺して、そこでまた爆笑となる。
本人たちは、そこまで言われているとは露知らず、同時刻には頃合いを見て迎えに来た、時雨と吹雪と夕立によりジオラマファクトリーから連れ出され、代わりに、やはりと言うかなんと言うか、一階の模型店で買い物に付き合わされてから、ようやく商業施設から出たのだった。
続く。
コラボ原案の改変中で、遅筆気味です。
コラボ先から受け継いでる人物と設定を、無理なくこちらの世界観に溶け込ませないとね。