衆議院選が公示され、いよいよ本格的な選挙戦に突入した。北朝鮮有事に備えた安全保障体制(及びその先にある憲法改正)と消費税率の引き上げ(とその使途を巡る議論)が争点になっている。
公示までに野党の勢力図がめまぐるしく変わったことが微妙に影響しているのだろうか、ここへ来て選挙の争点が「安全保障」ではなく、「消費税率引き上げ」問題に移っているような気がする。
筆者は、与党の消費税率引き上げについては反対の立場で、これについては当コラムでも再三言及してきたが、筆者が普段、比較的親しくさせていただいている識者の方は、口をそろえて「真の争点は、北朝鮮有事に対する対応であり、消費税率引き上げの話は大した問題ではない」とおっしゃっている。
筆者もその話を聞いて、なるほどと思ったが、このところのメディアの報道をみる限り、消費税率引き上げの是非がますます主要争点としてクローズアップされているように感じる。これは、「打倒安倍政権」の一番手として、小池百合子東京都知事率いる「希望の党」が台頭してきたためであろう。
ライバルが前原誠司代表の民進党であれば、消費増税を財源とした社会保障の充実という公約は争点になりえなかったはずだが、希望の党は、安全保障政策と憲法改正の公約が、一般有権者にとっては、政権与党とほぼ同じであるため、「安倍vs.小池」の対立軸を作り出したいメディアにとっては、公約が異なる消費税問題を争点にしないと盛り上がらないということが強く影響しているのだろう。
今回の選挙戦では、自民公明の政権与党は、次の消費税率引き上げ(2019年10月)は予定通り行う代わりに、それによって得られた税収増分の多くを子育てや教育といった主に若年世代への再分配に使うという公約を掲げている。
一方、野党は、消費税率引き上げは凍結し、少なくとも景気の回復を待ってから改めて検討すべしとしている。
従来は、安倍首相を中心に政権与党が消費税率引き上げを見送る一方、野党は財政規律が失われるとして、安倍政権の消費税率引き上げ延期を批判してきた。このように、消費税率引き上げを巡る与野党の立場はすっかり逆転してしまったようにみえる。
もっとも安倍首相、及び菅官房長官は、「リーマンショック級の(経済)危機が起きれば、消費税率の引き上げを見送ることもあり得る」旨の発言を行っており、政府与党も2019年10月の消費税率引き上げは必ずしも規定路線ではないことを強調している。
ただし、選挙戦では、消費税率引き上げの是非よりも、むしろ、それを財源とした再分配(特に世代間に公平な)政策の重要性を強調している。