蔓延し続けるデジタルアドフラウド(広告詐欺)のせいで、マーケターは相当のコスト増を強いられており、パブリッシャーは収益をかすめとられている。
ディスプレイ広告のアドフラウド被害額は、調査会社フォレスター・リサーチ(Forrester Research)によると、2016年時点で推定74億ドル(約8300億円)。2021年には、109億ドル(約1兆2000億円)に上る見込みだ。それ以上の被害を見積もるレポートも存在する。
最近の事例を振り返ると、米配車サービス大手ウーバー(Uber)が9月、電通傘下の英モバイル広告代理店フェッチ(Fetch)を相手取って訴訟を起こしたことで、いまだ解決策が見えないモバイルのアドフラウドの問題に注目が集まった。またファイナンシャル・タイムズ(Financial Times)は同月末、自社の顧客およびエージェンシーの担当者1万1000人に対し、同社のFT.comになりすましたドメインの広告枠が複数のアドエクスチェンジで大量に販売されていることについて、注意を呼びかけた。
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さらにCMOカウンシル(Chief Marketing Officer Council)が9月末に発表したレポートによると、CMO(最高マーケティング責任者)の72%が、ブランド、エージェンシー、パブリッシャー、顧客のあいだの信頼関係に生じている問題を解決し、広告をより厳重に管理するように、自身の上司から要求されているという。ここからわかるように、問題はすでにマーケティング部門だけでどうにかできるものではなくなっている。
デジタルアドフラウドは、手を変え品を変え行われている。たとえば、有名な広告詐欺スキーム「メスボット(Methbot)」の手法を真似たクリックファーム、ボット、ドメインなりすまし。パブリッシャーの広告在庫を転売して利ざやを稼ぐ行為や、広告を目に触れない位置やサイズでこっそり表示させる手法。さらにヘイトスピーチ、テロを称賛するコンテンツ、フェイクニュースなど、広告主のブランドにとってふさわしくないコンテンツの隣に広告を表示させる手口までもがある。こうした詐欺に気づかず、広告費を無駄に支払っているマーケターが後を絶たない。
以下、4つのチャートで、アドフラウドの現状を確認していこう。
日本はアドフラウド大国
アドフラウドがもっとも頻発しているのは、日本だ。詐欺防止アドテク企業のピクサレート(Pixalate)は5月に発表したレポートのなかで、2017年第1四半期、日本で取引されたデスクトップのプログラマティック広告の全インプレッションのうち81%が、アドフラウドだったとした。これにブラジル(38%)、アメリカ(37%)が続くが、日本での割合はこれらとは比べ物にならない数字だ。なおイギリスは、プログラマティック広告のインプレッション総数では世界第3位の座を占める一方で、デスクトップ広告におけるアドフラウドの割合は15%にすぎない。
SNSリスクの方が悩ましい
アドフラウドと不適切な位置の広告表示は、マーケターにとって2番目に大きな悩みだ。CMOカウンシルの最近のレポートで、マーケター300人を対象とするアンケート結果からわかった。もっとも多かった回答は、SNSでのリスクコントロール。次いで多かった回答がアドフラウドと不適切な位置の広告表示で、それぞれ3分の1のマーケターが懸念材料として挙げていた。
動画がアドフラウドのターゲットに
詐欺師が群がるのは、お金が流れるところだ。広告費の45%が動画に使われており、アドフラウドの65%は動画で発生している。特に問題があるのはプログラマティックマーケティングの動画広告であり、発生割合はダイレクトマーケティングの動画広告に比べて67%高いことが、フォレスター(Forrester)の調査でわかった。ピクサレートのレポートによると、動画広告のインプレッションに占めるアドフラウドの割合が最も高いのはインド(34%)で、次がアメリカ(27%)だった。イギリスでは12%だった。
第三者機関によるモバイル広告ベリフィケーション
アドフラウドは、デスクトップのディスプレイ広告だけではなく、モバイル広告でもはびこっている。イギリスでは、第三者機関にアドベリフィケーションを依頼して、モバイル広告におけるアドフラウドの検出やブランドセーフティの保護を行うメディアプランナーの割合が、12カ月間で24%から45%に増加した。エクスチェンジワイヤー/グランドトゥルース(ExchangeWire/GroundTruth)による最近のレポートから明らかになった。すでにツールを使っているプランナーのうち62%が、メディアパートナーがブランドセーフティツールを提供していることは価格よりも重要だと回答した。