【概要】
オープンアクセスは,主にリポジトリを活用するグリーンOAと,ジャーナルを無料化するゴールドOAと呼ばれる方法のいずれかによって実現されると考えられている。arXivを嚆矢とする分野別プレプリントサーバはこれまでリポジトリの一種別として位置付けられ,かつ,査読の前の草稿であることが原則であるため,研究成果の商業的流通への影響が少ない存在として理解されてきた。しかし,なかなかプレプリント流通が普及しなかった化学,生命科学の分野でも近年急速にプレプリント掲載数が増加する傾向が顕著となり,有力な学会誌をもつ国際学会(ChemRxivのACS他)や商業出版者(BioRNのElsevier)がプレプリントサービスの提供に参入してきている。さらに,これらのプラットフォームはデータ公開を含めて設計されており,オープンアクセスの展開におけるプレプリントサーバの位置づけは大きく変化しつつあるといってよい。
今年度の第2回目のSPARC Japanセミナーでは,プレプリントサーバの機能,運営の約30年の変遷を振り返りつつ,この変化の渦中にある研究者からの提言,さらに研究者ネットワークの商業出版者にとっての意義を論じ,研究推進への寄与,持続性のあるビジネスモデルの構築,質の確保などの将来の課題を含めてこれからのオープンアクセスを展望する。
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