日本の借金は1,000兆円超!誰が貸してる?本当に返せる?
日本の借金が、1,000兆円を超えたというニュースが、2年ほど前から流れています。1,000兆円というのは、国民一人あたり800万円をこえる数字であり、とてつもなく膨大な数字です。そして、この額は毎年30~40兆円増えていっているのです。
ではそもそも、日本の借金というのは、何を指しているのでしょうか。また、借りているのだとすれば、貸しているのは誰なのでしょうか。また、こんな膨大な借金、本当に返せるのでしょうか。解説します。
日本の借金が、1,000兆円を超えたというニュースが、2年ほど前から流れています。1,000兆円というのは、国民一人あたり800万円をこえる数字であり、とてつもなく膨大な数字です。そして、この額は毎年30~40兆円増えていっているのです。
ではそもそも、日本の借金というのは、何を指しているのでしょうか。また、借りているのだとすれば、貸しているのは誰なのでしょうか。また、こんな膨大な借金、本当に返せるのでしょうか。解説します。
まず、国の借金の定義から確認しましょう。
いわゆる、我々が「国の借金」と呼んでいるものは、「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」と呼ばれる、財務省が出している統計の数字になります。この数字は四半期単位に出てきます。2017年6月末時点では1,080兆円となっています。
内訳をみると、圧倒的に国債が多く、950兆円、残りを借入金と政府短期証券になります。ざっくり言うと、国の借金=国債、と言っても間違いではないでしょう。
国は、毎年予算を決めます。歳入と呼ばれる税収等の収入と、歳出と呼ばれる安全保障費、社会保障費などの支出の項目を決めます。例年、歳入に対して、歳出が多くなっています。これをバランスさせる必要があるため、政府は、国債という形で、証券を振り出します。国債は償還する(=返す)必要があるため、これを借金と言っているのです。
日本の借金は1,000兆円と言われますが、これは多い数字なのでしょうか、世界で見ると、どれくらいの位置づけなのでしょうか。
一般的に、国の借金が多いか少ないかは、政府総債務のGDP比で表すことが多いです。IMFが毎年出している、「World Economic Outlook Databases」によると、日本の政府総債務のGDP比は、なんと240%で世界一です。これは、借金を返すのに、GDP2.5年分が必要、ということです。2位がギリシャで、180%なので、日本の借金の大きさがわかるかと思います。
他の国と比較しても、アメリカは15位で107%、ブラジルは40位で78%、中国は46%で102位となっています。
日本も、1980年代は、120兆円程度で、対GDP50%程度と、そんなに大きくありませんでした。しかし、バブルが崩壊した1993年以降、毎年40~50兆円程度の割合で増え続けています。
なぜ、ここまで国債の発行額が増えてしまったのでしょうか。主な理由は2つあります。
国債が増える2つの理由
1つは、バブル崩壊後、税収が減ったことにより、国債の依存度が増えてしまったことです。当然、国家を運営する上で、最低限必要な支出があり、それを削るのは容易ではありません。そうなると、歳入が減ってしまうと、国債でそれを補う必要があるのです。
特に、バブル崩壊により国は、経済対策をする必要に迫られました。公共工事や就職支援等がその1つです。懐かしの地域振興券は、経済対策の一環ですね。現在も、経済対策として、様々な形で歳出を行っています。
もう一つは、社会保障費の増大です。政府の支出のうち、最も大きいのは国債利子払い、償還金払いですが、その次が社会保障費となっています。
社会保障費は高齢化を迎え、さらに増大していく予定です。政府も保険料を見直したり、年金の受給年齢を引き上げたり等を行っていますが、高齢化のスピードには追い付いていません。増大する社会保障費も、国債等を使って賄っています。
国債の支払いも増え、社会保障費も年々増える、こういうスパイラルに現在日本は入っています。今後、さらに国の借金が増える可能性があるのです。
日本の国債は、発行の目的や、償還期間の長短などにより、様々な種類のものがあります。
利回りについても、利子が固定の固定利付債と、変動するタイプの利付債があります。また物価と連動する、物価連動債があります。物価連動債は、元本割れすることもあります。利子はないものの、額面より低い金額で販売される、割引債というものもあります。
期間も、短いもので半年や1年、長いものだと10年、40年債というものもあります。個人向け国債は、主に3年、5年と10年で発行されています。個人向け国債の特徴として、中途解約の際の買い取り額保証が定められています。一定期間売却できない代わりに、その期間を過ぎれば、国が額面で買い取るのです。
目的としては、普通国債の他に、1年限りの特例公債法を制定して発行される赤字国債や、建設のために使われる建設国債、借換を目的とした借換国債等があります。東日本大震災後は、復興のための「個人向け復興国債」も出来ました。
個人向け国債について詳しくは総務省の下記のページから確認できます。
【参考】総務省 個人向け国債 カンタンガイド
http://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/main/guide/
では、国債を持っている人、いわゆる国にお金を貸しているのは誰なのでしょうか。日本銀行が出している、資金循環データによると、最も多く持っているのは、民間銀行です。
民間銀行が47兆円国債を保有しており、約47%を占めています。その次に持っているのが、日本銀行であり、386兆円、約4割を保有しています。
この2つで、全体の約9割を占めているのです。海外の比率は約6%しかありません。時系列でみると、年々民間銀行は縮小しており、その分、日本銀行の買い入れが増加しています。
では、日本の借金は、返す必要があるのでしょうか。実は、国の借金は必ずしも返す必要があるわけではありません。
みなさんも、銀行に預金をしています。これは銀行の立場からすると、個人に対して借金があるということになります。しかし、銀行はそれを返済しようとはしていません。必要な時に引き出せて、必要ないときは預けておけばいいわけです。
国の借金も、同じような感覚です。利息が払えて、期日さえ守れば、なんら問題がありません。
むしろ、銀行は、預金で国債を買い、運用する利益で我々の利息を払っているわけですから、銀行としても、急に国債をすべて償還されても、困るわけです。個人としても、余っているお金を銀行に入れておくより、国債を買った方が、利息が出るわけですから、余剰資金の運用先としての国債は、なくなることはありません。
確かに金額は大きくなっています。将来的には、国の財政をどう立て直すか、という問題が解決したわけではありません。しかし、すぐに全額返さないといけないとか、借金していることが悪だ、という考え方ではないことは、理解しておくとよいでしょう。
とはいえ、借金が世界一というのは、なんだか不安ですよね。2位のギリシャはデフォルトしそうになりましたが、日本は大丈夫なのでしょうか。
デフォルトとは?
金融関連でデフォルトとは債務不履行のことです。債務不履行は債務=約束が破られること、つまり債権の利払いや元本の償還が約束された通りに行われない事を指します。
まず、ギリシャがなぜデフォルトしそうになったかを解説します。
はじまりは、2009年の政権交代でした。この時に、旧政権が赤字を隠していたことが発覚したのです。従来、ギリシャの財政赤字は、GDPの4%程度と発表されていましたが、実際は13%近くに膨らんでおり、債務残高も国内総生産の113%にのぼっていました。
そこで、2010年に3か年財政健全化計画を出したのですが、その計画が、あまりに楽観的だと、マーケットから受け入れられませんでした。結果、格付け会社は、相次いでギリシャ国債の格付けを引き下げ、ギリシャ国債が暴落し、株価やユーロも急落したのです。
このため、ギリシャのGDPは落ち込み、ギリシャは破たんの危機を迎えました。そこで、ギリシャも加盟しているEUが国際通貨基金とともに、ギリシャに対して、財政赤字の削減等を前提とし、約12兆円の融資を行いました。ギリシャは約束通り、緊縮財政を行ったのですが、国民の理解が得られず、デモ等が頻発しました。
2015年の選挙で、反緊縮政策を掲げる左派政党が躍進し、緊縮措置を撤回するプランを出したことで、EUと、IMFが支援を打ち切ったのです。これによりギリシャ国内は、さらに混乱しました。
しかし、ギリシャが混乱するとEU自体が混乱し「リーマンショックのような状況が再び起こる」という不安もささやかれたため、現在は再度支援を行い、ギリシャの改革が進んみつつある状況です。
ギリシャの国債がデフォルトしそうになった要因は、以下の2点です。
ギリシャがデフォルトしそうになった2つの要因
当時、ギリシャの国債の保有者の8割は、外国の銀行や政府が保有していました。外国の銀行が保有しているということは、自国だけで物事が決まるのではなく、海外の要因を大きく受けやすい、ということになります。結果、海外勢が一斉に売却したことで、国債の価値は大きく下がりました。
また、ギリシャはEUに加盟しており、通貨はユーロを使用しています。国債もユーロ建てやドル建てで発行されています。ユーロはECBが発行しており、ギリシャ政府はECBにお願いしてお金を貸してもらわなければ、政府の債務を返済できません。そのために、ドイツなど他のユーロ加盟国を説得しなければならず、ここでも海外の影響を大いに受けます。
一方日本は、銀行、日銀で約9割の債権を保有しており、債権者と債務者が同じ国内にいる状況です。たとえて言うなら、日本の借金は、家族内のお金の貸し借りに似ているのです。そうなると、相手の財布のことも考えるので、むやみに高い金利をとったり、急な取り立てはしませんよね。
しかも、日本政府の債務は、円建てで発行されています。このため、仮に返済を求められたとしても、日本銀行がお金を印刷するだけで、返済が可能なのです。もちろん、通貨を発行しすぎれば、インフレ等のリスクもあるため、限度がありますが、今の日本はデフレであり、現在は通貨を発行する余裕も残されています。
また、日本は官民を合わせて見たとき、世界で最も多くの対外資産を持つ純債権国です。日本は対外純資産を380兆円程度保有しており、この数字は25年以上連続で世界一です。
このため、ギリシャ危機のような経済危機が起きると、逆に、世界の投資資金が円に集まり、結果として円高になります。つまり、日本政府が発行している日本の円は、それだけ信用されているのですね。対外純債務がGDPを大きく超えているギリシャとは、この点がまったく異なります。
日本国債の発行金利は、年率0.5%以下と、非常に低水準です。もし、マーケットが日本国債のデフォルトにリスクを持っているのであれば、高い金利を約束しない限り、誰も日本国債を買ってくれません。ギリシャは15%近くなっており、アメリカ、イギリスでも国債の金利は2%前後であることからも、日本国債のマーケットでの信頼性は非常に高いといえるでしょう。
こういったことで、日本はギリシャとは大きく事情が異なります。よって、日本国債がデフォルトするリスクは、非常に低いといえるでしょう。借金が1000兆円を超えたからと言って、大騒ぎする必要はないのかもしれません。
日本の借金は、1,000兆円を超えており、なおも今ふくらみ続けています。今後、いずれかのタイミングで、歳入と歳出のバランスの見直しが必要なのかもしれません。
しかし、日本国債を保有しているのはほとんど日本銀行と民間の銀行であり、また、すべてが円建てで発行されているため、急激に状況が変化する、ということは考えづらいです。
また、日本国民は1,700兆円以上の資産を保有しており、海外資産の保有も世界一です。このことからも、日本は非常に信頼されており、国債の利回りも非常に低く抑えられています。
日本国債が正常な範囲内で発行されているうちは、特にすべてを返す必要もないため、実はそんなに大騒ぎすることではないことかもしれません。必要以上に不安にならないことが重要です。
Copyright (C) お金の読み物 All Rights Reserved.
免責事項とプライバシーポリシー
運営者情報