ラスベガスで、米国史上最悪の銃乱射事件が起きました。米国民は今度こそショックを受けているのではないですか。
高濱:米主要紙のベテラン記者は筆者にこうコメントしています。実に意味深です。今の米国民のホンネを吐露しているからです。
「事件発生の瞬間、編集局にいた。『オー、ノー』との声が響き渡ったが、雰囲気的には、<またか>といった感じだったね。銃乱射事件には、もう慣れっこになっていて」
「ところが犠牲者が50人を超えたころからシーンと静まりかえった。<射撃犯は誰か>と固唾を飲んでいるうちに、<白人の男だ>と判明すると、誰かが『イスラム教徒によるロじゃなかったのか』と反射的に叫んだ。これがイスラム教徒だったら号外が出たな」
確かに、これがイスラム教過激派分子の仕業だったら、トランプ大統領だって、(まだ犯人の動機すら分かっていない段階で)「純粋な悪の所業だ」などとコメントはしなかったでしょうね。
高濱:そうだと思います。トランプ氏は、16年6月にフロリダ州オーランドでイスラム系「ホームグローン・テロリスト」が乱射事件を起こした時には「すべてのイスラム系移民は米国の安全を脅かす潜在的脅威である」と声を荒げていました。今回だって乱射犯がイスラム教徒だったら、「それ見たことか」とイスラム教を激しくなじったと思います。
("Blaming Muslims After Attack, Donald Trump Tosses Pluralism Aside," Jonathan Martin, New York Times, 6/1/2017)
犯人は退職した会計士。ギャンブル好きで秘かに大量の銃火器を集め、ボストンなどでの乱射も計画したようです。それ以上のことはまだ謎のままです。
「乱射犯はテロリスト」と報じたメディアは皆無
リベラル派の作家で公民権運動の活動家でもあるシャーン・キング氏は、ニュースサイトにこう書いています。「私の知人のあるイスラム教徒は、乱射事件の第一報を知り、『どうか、イスラム教過激派ではありませんように』と祈ったと言っている。黒人の友達も『犯人が黒人でないように』と祈っていた」
「もし乱射犯の犯人がイスラム教徒だったら、トランプ大統領はどんな大統領令を出しただろう。メディアはこぞって『犯人はテロリスト』と大々的に報じただろう。おそらく米国は大混乱に陥ったに違いない」
「ところが、犯人が68歳の白人と判明するや、主要紙は『犯人は一匹オオカミだった』と競って報じている。テロリストだと報じた新聞は一紙もなかった」
("The White Privilege of the 'Lone Wolf' Shooter," Shaun King, theintercept.com., 10/2/2017)
――トランプ大統領は今回の事件を受けて、銃規制を強化すべく動きますか。
高濱:実は、トランプ氏は大統領選に出る前、銃規制に前向きだった時期があります。2000年に出版した著書*で「共和党議員たちは全米ライフル協会(NRA)の人質になっている」と激しく批判しています。また12年、コネチカット州ニュータウンで小学生26人が犠牲になった際には、バラク・オバマ大統領(当時)の銃規制強化を評価していました。