中国の共産党大会は、一般に中国の最高指導部人事と内政問題を議論し決定する、きわめてドメスティックな会議なのだが、今大会は例年になく国際問題に関する重大決定が行われるのではないか、という噂が絶えない。いうまでもなく北朝鮮問題に関する決定である。その“噂”の根拠を今一度整理してみたい。
党大会に合わせ、発射実験を?
10月6日のロシア・スプートニクス通信が報じていたのだが、ロシアの軍事専門家・ヴァシリー・カシンは、北朝鮮が中国の党大会に合わせて、日本上空を通って太平洋北部の目標に向かう“火星14号”ICBMの発射実験を行うのではないか、という予測を含めた論評を発表した。
論評によれば、北朝鮮は米大統領トランプの想像の斜め上をいく強烈なリアクションをとり続けてきたが、その危機の先鋭化は、おそらく党大会かあるいは党大会直後に行われる一中全会のあたりがピークではないか、という。一中全会では、次の五年の最高指導部および軍組織の人事が承認される。つまり中国が、内政でてんやわんやのときに、思いっきり中国を挑発するような行動をとって、中国はもはや北朝鮮をコントロールなどできないのだ、とはっきりと世界に知らしめようとする、というわけである。
「半島情勢は党大会における重要な変数。いったん軍事摩擦が激化すれば、党大会の日程にも影響し、最悪の場合、重大決定が下される」とカシンは言う。
論評はさらに、こう指摘する。中国は目下の(北朝鮮)情勢から脱する妥当な方法がなく、中国ができることは、関係国に自制心を持つよう呼びかけることくらいだが、それは各国の行動に何の影響力も与えない。一方、たとえ北朝鮮の要因がなくとも米国のファースト主義によって、米中関係は複雑化してきている。北朝鮮と米国がハイレベルで直接対話することだけが、こうした情勢のネガティブな展開を防ぐことができるだろう、と。
カシンの論評に客観的な根拠があるかどうかは示されてはいないのだが、海外の独立系華字メディアの多くが、この論評を引用転電しており、注目している。
もう一つ、注目されているのが、10月2~6日に北朝鮮を訪問してきたばかりのロシア議員のアントン・モロゾフの発言で、10月6日のロシア通信(RIA)が報じている。「北朝鮮は近い将来、長距離ミサイル実験を再び行うだろう。全体的に言えば、北朝鮮は好戦的ムードに包まれている」「北朝鮮はトランプの国連総会での発言(北朝鮮は完全に破壊される)を米国の宣戦布告ととらえている」。次の北朝鮮のミサイル実験は、ミサイルが西海岸に届くことを証明するためのものらしい。