拙速をよしとすれば、部下が早く育つ

2017年10月11日(水)

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 政府主導で始まった働き方改革が浸透し、企業が自主的に働き方を見直す動きも加速しています。AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)の発達に伴いデジタルに任せられる分野が増え、企業も時短、人員削減をしても生産性が下がりにくい環境を作れるようになってきました。消費者がデジタルに慣れてきたこともあり、企業の益々のデジタル化導入は進むと考えられます。

 先日も大手都市銀行社長が改革案を発表しました。その中で、自動化、デジタル化により従業員の3分の1に当たる規模での施策の実施を発表したのをご存知の方も多いのではないでしょうか。

 企業によって取り組みの内容やレベルは様々ですし、立場によって見ている側面も違いますが、ビジネスパーソンの多くが「生産性」という言葉を意識せざるを得ない状況であることは間違いないでしょう。

 仕事が遅い、生産性が低いとジャッジされれば居場所がなくなるのでは……といった不安の声も聞こえてきます。とくに部署やチームでの目標を課せられている管理職にとっては個人の問題にとどまりません。部下のマネジメントも含めて改革し、結果を出すことができなければ、今後の昇級・昇進は難しいものになってくるでしょう。

 そこで参考にしていただきたいのが、世界的に見ても格段にビジネスのスピードが速い、華僑の合理的かつ人間的なメソッドです。

 生産性の向上とスピードは比例関係にあります。ゆっくりやっていて生産性が向上することはあり得ません。華僑のバイブルの一つであり、日本でも人気の『孫子』の作戦篇に「兵は拙速を聞くも、未だ巧の久しきを睹(み)ざるなり」という言葉があります。「作戦が拙くても速やかに決着させて利益を得たという話は聞くが、優れた作戦で戦を長引かせて良い結果を得たというケースは見たことがない」そのような意味です。計画が完璧でも、兵士の能力が高くても、ダラダラと戦っていては損害が大きくなってしまい、自国に利益をもたらすことができないということですね。

 ビジネスにおいても同様です。例えば、完璧な企画書を作り上げても、そのためにたくさんの時間と手間がかかっているなら生産性が高いとは言えません。

華僑的スピードアップの要は「省く」こと

 お金儲けが上手い、つまり生産性が高い華僑はビジネスを長い目で見ていますが、長い目で見ているからこそ、少しでも早く・速く動けばその分有利になると考え、スピードを重視しています。

 では、華僑はどのようにしてスピードを出しているのでしょうか? 要となるのは「無駄を省く」思考です。先述した孫子の言葉も、無駄な時間や手間をかけることの害を説いていると言えますが、ビジネス的にはチンギス・ハンに仕えた耶律楚材(やりつそざい)の言葉の方がしっくりくるかもしれません。楚材はモンゴル帝国を築くにあたって大胆な改革や新たな制度の導入を推進した人物ですので、働き方改革及び生産性向上に取り組む管理職の方の参考になるはずです。

 楚材は常々こう言っていました。「一利を興すは一害を除くに如かず。一事を生ずるは一事を省ずるに如かず」。意味は「有利なことを一つ始めるより、有害なことを一つ取り除いた方がよい。新しいことを一つはじめるよりは、余計なことを一つやめる方がよい」でいいでしょう。

 「余計なことをやめる」といえば、生産性への寄与度の低い作業をカットするなど、すでに実行している企業も多いことと思います。では「有害なことを取り除く」はどうでしょうか? そもそもどんなことが有害なのでしょうか?

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「拙速をよしとすれば、部下が早く育つ」の著者

大城 太

大城 太(おおしろ・だい)

前仲原物産社長

大学卒業後、外資系金融機関、医療機器メーカーを経て、華僑の大物と言われる人物に師事。起業1年目でアルバイトと2人で年商1億ビジネスを作成。現在、前仲原物産、エスディーメディカルなど5社の代表を務める。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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