「原発ゼロ」論議、影潜め 青森1区
目まぐるしい離合集散を経て、「安倍政治」の是非を問う衆院選が10日公示され、党首や候補者たちが街頭で第一声を上げた。
「エネルギーの安定供給で地域経済を支える」「青森は食料、エネルギー、国防に多大な実績がある」。青森1区に立候補した自民前職の津島淳氏(51)と希望前職の升田世喜男氏(60)は10日朝、青森市内でそれぞれ演説したが、自民党と希望の党の争点となっているはずの「原発ゼロ」をめぐる論議は影を潜め、共産新人の赤平勇人氏(27)だけが「即時原発ゼロ」を掲げる選挙戦となった。
区割り改定で、新たに加わった下北半島での集票が選挙結果を左右する1区。下北半島の有権者は約25%を占める。農業や漁業が中心の半島だが、東通原発や使用済み核燃料再処理工場などが集まり、原子力関連施設・関連産業は、自治体の予算や地域経済にとって大きな存在だ。
「(再稼働のめどがたたない)東通原発の再稼働は当然。原発を使い続けるのも当然」。今月7日、下北半島北部のむつ市で開かれた事務所開きで、津島氏は力強くこう言い切った。
一方、希望は「2030年までの原発ゼロ」を掲げるが、公認の升田氏は「電力の安定供給と(原発廃止に伴う)青森の経済的影響への配慮がなければ賛成しない」と語る。公約パンフレットにも原発政策についての記載は見当たらない。
下北半島の町議は「長年の原発事業を進める以外に企業が町に来る見込みはないのが現実。原発がなければ人の流れがなくなる」と言う。演説を聞いていた男性銀行員(53)も「目の前で事故がない限り、青森に原発は必要」と話した。
こうした動きに対し、赤平氏は東通原発の再稼働に反対を表明し、反原発票の集票を目指す。この日も「自然エネルギーをしっかり支援し、原発に頼らない社会を」と訴えた。【佐藤裕太、一宮俊介】