10月の平日、暑くもなく寒くもないとてつもなくいい日和に、私とピンクの歩く毛皮ことスキウサギ(略称・ウサギ)は三鷹の駅に降り立った。
ここからジブリ美術館までシャトルバス的なものが出てはいるが、玉川上水に沿って10分ほど歩くとすぐだ。
せっかくのいい気候、ウサギと二人、徒歩でジブリ美へ向かう。「ジブリ美術館まであと700メートル」と書かれた謎の動物があしらわれた看板を目にするたびにテンションも上がろうというもの、その証拠にウサギはさっきから森繁久弥(乙事主)のものまねをしている。
9時50分、ジブリ美に到着すると開場の10分前にも関わらず、入り口には長蛇の列が出来上がっていた。
偽物のチケットカウンターに鎮座する所沢のお化けこと「トトロ」がほくそ笑んでいる。
それにしても、来場者の外人比率の高さはどうだろう、日本人2割外国人8割くらいの割合。まるで空港だ。
ところで美術館に入場する時にジブリ作品のフィルムチケットが渡されるのだが、それが果たしどの作品のどのシーンなのか?
このドキドキ感はジブリ美術館の醍醐味の一つ。
前にここを訪れたときに、一面緑の草しか写ってないフィルム(ラピュタのタコが着地するシーン?)を渡されたトラウマが脳裏をよぎる。
せめて、せめてキャラクターが写っていてくれ…!
結果はこちら
「ゲド戦記」の国王のバストショットだった。いや、原作は好きだけどさ…。
「まあ、キャラクターが写っているだけよかったじゃん?」と、ウサギがなぐさめてくれた。(過去のジブリフィルムチケット一覧はあとで記事にまとめて載せます)
気を取り直した私たちは階段を降りて、地下に位置する中央ホールへ躍り出る。
気持ちいい吹き抜けの空間はいつ来ても心地良い。最初に訪れる人が最初に足を踏み入れる「動き始めの部屋」は無視して階段を登り、二階にある企画展示室へ向かう。
案の定、まだ人がほとんどいない。東京ディズニーランドに朝イチで入ったらとりあえず「カリブの海賊」を後回しにする感覚だ。
企画展示「食べるを描く。」は文字どおり、ジブリ作品の魅力的な食事シーンの数々がどのように作られたのかを貴重な資料とともに振り返る展示だ。
入り口には数々のジブリ飯が精巧な食品サンプルになって展示されていた、「紅の豚」の「魚のムニエルと白ワイン」、「もののけ姫」のジコ坊の味噌雑炊。「千と千尋の神隠し」で千尋の両親が貪り食う「神さまの食べ物」は食品サンプルになってもその正体が掴めきれない…なんなんだこの物体は…。
『高畑監督の劇場版「じゃりン子チエ」のおやっさんの涙入りお好み焼きがない…』とウサギが落ち込んでいた。劇場版「じゃりン子チエ」は傑作だけど、ジブリではないだろうに…。
展示室の中は古めかしいレストランのような空間になっていて、食べ作画にまつわる貴重な資料が展示されていた。作画経験者には違う意味でヨダレが溢れる資料の数々…。
「紅の豚」でフィオが飲む瓶入りレモネードの塗り分けの指示、レモネード水面の送り…、「紅の豚」でジーナのグラスに注がれるワインのねじれ落ちと泡の静まり…。
非常に勉強になるし、私の体に脈々の流れるアニミズムの血潮がぽっぽと火照ってくるのを感じる…。
特に目を奪われたのが「となりの山田くん」で酔って帰って来た親父がモソモソとバナナを食べるシーンの原画。あのアニメ史上に燦然と輝く名食シーンの原画が見れるなんて!
この微妙な線の強弱、緩みによってあの絶妙なバナナ食いシーンが生まれたのか…!ああ、願わくば手にとってパラパラしたい!いやいっそのことQARで見て見たい!
しばらく、ヨダレを垂らしながら食い入るように原画を見つめていた。
展示の後半には「となりのトトロ」の草壁家の台所や、「天空の城ラピュタ」のタイガーモスの厨房が実寸で精巧にセット化されていて見応えがある。
ついさっきまで登場人物たちがそこで料理をしていたかのようなリアルさがある。
ふと、草壁家の壁にこんな感じの書が飾られているのが目に入った。
美術館スタッフの方に「これは誰が書いたものですか?」と尋ねてみると、「いや…、その…誰が書いたと言う…ことはないんですよ~笑」と返って来てちょっと和んだ。
後半に続く。(この記事は誰かに頼まれたということは一切なくキューライスが完全なる趣味で描いております)
「官位をさずけよう」!
バナナを食べるシーンは名シーン!
リア王のような乙事主!
高畑監督の傑作!お好み焼きが美味しそう!