データ改ざんの神戸鋼株に売り殺到、「信頼の代償大きい」と市場

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Steel Annealing Operations Inside The PRO-TEC Coating Co.
Bloomberg
  • 中長期的な影響は深刻となる可能性-三菱UFJモルガン証
  • 交換コストは100億-150億円と試算、さらに波及も-JPモルガン証

神戸製鋼所株はストップ安売り気配となり売買が成立していない。アルミや銅の製品の一部でデータを改ざんしていたことが明らかとなり、同社のコンプライアンスに対する姿勢や業績への影響を懸念した売りが殺到している

  午前10時36分現在では前週末比300円(22%)安の1068円の売り気配。買い注文167万株に対して、売り注文は2970万株。差し引き2803万株の売り越しとなっている。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の黒坂慶樹シニアアナリストは9日付の投資家向けリポートで「神戸鋼の失った信頼の代償は大きい」として、「中長期的な影響は深刻となる可能性がある」との見方を示した。株価への影響については「コンプライアンスに問題を抱える企業は投資対象として劣後する傾向がある」として、「ネガティブ」としている。

  JPモルガン証券の森和久アナリストは10日付のリポートで「コスト負担は今後のリコールを含めた対応次第で大きく変わるとみられる」と指摘。「仮にアルミ製品の年間販売対象となった5%をベースとした場合、神戸鋼が全量コスト負担した上で交換を行うコストは100億-150億円規模と試算される」とした上で「顧客離れが同部門のみならず、他部門にも及ぶ可能性もあり、一定規模の影響は覚悟する必要があるだろう」との認識を示した。

  神戸鋼は8日、顧客の製品仕様に適合させるため、強度などの検査証明書のデータを書き換えて出荷していた事実が判明したと発表した。現時点で分かっているのは、出荷期間の対象が2016年9月1日から17年8月31日まで。内訳はアルミの板や押出品が約1万9300トン、銅板条や銅管が約2200トン、アルミ鋳鍛造品が約1万9400個。

  神戸鋼では具体的な出荷先については明らかにしていないが、納入先は約200社に及ぶ。出荷先企業に対し、品質への影響についての技術的検証を顧客と共に実施しており、これまでの検証・調査では安全性に疑いを生じさせる具体的な問題は確認されていないとしている。 業績への影響については判明した時点で公表する予定。

  昨年6月には、約3割を出資するグループ会社の神鋼鋼線工業の子会社が製造するばね用ステンレス鋼線の一部でデータ改ざんが見つかり、規格外品を出荷していたことが分かっている。

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衆院選公示、与野党3極の争いへ-野党は「安倍1強」に対決姿勢

Japan's Party Leaders Debate Ahead of General Election

安倍晋三首相と小池百合子東京都知事

Photographer: Akio Kon / Bloomberg
  • 自公は過半数を勝敗ラインに設定-消費税、憲法、原発で論戦
  • 3極の構図鮮明で「選択肢広がる」-政治ジャーナリスト・細川氏

衆院選(定数465)が10日公示され、22日の投開票に向けた選挙戦がスタートした。小池百合子東京都知事が率いる希望の党結成をきっかけに野党の構図が激変する中で、5年近く政権の座にある安倍晋三首相(自民党総裁)の政治姿勢が問われる選挙となる。政策面では消費税や憲法改正、原発政策などをめぐり、論戦が交わされる見通しだ。

  安倍首相は9日夜に放映されたTBS番組での党首討論で、今回の衆院選は北朝鮮の脅威と少子高齢化という「国難とも言える課題」を「どうやって乗り越えていくか。これを問う選挙だ」と語った。小池氏は同番組で「チャレンジャーとして新しい勢力をつくった」と述べ、「しがらみなく、国民にとって必要な候補者」を擁立したいと強調した。

党首討論で勢ぞろいした与野党党首、10月8日
党首討論で勢ぞろいした与野党党首、10月8日
Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  衆院選は自民、公明の連立与党が289の小選挙区のうち、あわせて286人の公認候補を擁立するほか、残り3選挙区でも自民党内の調整が難航して公認を得られなかった前職らが出馬する。野党側は東京と大阪の小選挙区で調整を行っている希望と日本維新の会、安保法制反対などで足並みをそろえる立憲民主、共産、社民の各党という二つの勢力がそれぞれ候補者を立てて戦う。

  政治ジャーナリストの細川珠生氏は、こうした3極の構図が鮮明になったことは、ここ数年の1強多弱の政治状況と比べ国民の選択肢が広がったとの見方を示す。ただ、新党が準備は整わない状況で選挙戦を迎えるため「政策が煮詰められていない」と指摘。争点の一つである消費増税についても、背景を含め「材料がないとなかなか判断できない」と政策で投票先を決めることが難しいとの見方を示した。

  読売新聞が7、8日に実施した世論調査によると、比例代表の投票先政党はトップの自民が32%と前回調査(9月28、29日)の34%からほぼ横ばい。希望は13%と前回の19%から下がり、立憲民主が7%で続いた。この他、公明が5%、共産が4%、日本維新が3%。「決めていない」は27%だった。

勝敗ライン

  安倍首相は8日、日本記者クラブの党首討論会で、与党の勝敗ラインについて「過半数を維持すれば政権を継続する」と強調。公明の山口那津男代表も与党で過半数を目指す考えを示した。希望の小池代表は「安倍1強政治を変えていくというのが私どもの大きな旗印だ」と主張。共産の志位和夫委員長は安倍首相の退陣を求めた。

与野党党首による党首討論の記事はこちら

  政権選択の選挙となる衆院選。与党側は目標とする過半数を確保できれば、選挙後の特別国会で行われる首相指名選挙で現職の自民党総裁である安倍首相に投票するが、事実上の野党第1党となる希望は首相候補の名前を明らかにしていない。小池代表は8日のNHK番組で自身の衆院選出馬を否定した上で、「結果を見ながら考えていく」として選挙後に判断する意向を示した。

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