これが「唯一の戦争被爆国」の対応だろうか。広島、長崎の被爆者と共に核の非人道性を訴える核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のノーベル平和賞の決定時、日本政府は沈黙した

▼外務省が「核廃絶のゴールは共有」と、一応の「歓迎」談話を出したのは2日遅れの8日。それでも「アプローチが異なる」と距離を置いた。日系英国人作家カズオ・イシグロさんの同文学賞決定で、安倍晋三首相が即座に祝福コメントを出した対応とは異なる

▼ICANは全ての核を非合法化する核兵器禁止条約に取り組んだ。7月、国連に加盟する173カ国のうち122の賛成で採択されたが、日本は全ての核保有国などとそろって背を向けた

▼核兵器が爆発すれば世界はどうなるか、日本が一番知っているはずだ。現実的な解決方法は核抑止論を捨て、全ての保有国が公平に放棄するしかない

▼ICANのフィン事務局長は「核の脅しと核開発をすぐに中止せよとのメッセージだ」と、授賞は米朝双方への警告と受け止めている。米国が「俺も捨てるからお前も捨ててくれ」との姿勢にならない限り、北朝鮮の暴走は止まらないのではないか

▼両国の間で、日本はどうするべきか。米国の「核の傘」に頼る矛盾から脱却した時、唯一の被爆国の言葉は真の説得力を持ち、世界に発信できるのだが。(磯野直)