裁判では、主に2つの点が争点になりました。
1つ目は、国と東京電力が大規模な津波を事前に予測し、被害を防ぐことができたかどうかです。原告は、国と東京電力が遅くとも平成18年までに、福島第一原発の敷地の高さを超える津波が来ることを予測できたと主張しています。その根拠として、平成14年に政府の地震調査研究推進本部が発表した「長期評価」の中で、三陸沖から房総沖にかけてマグニチュード8クラスの巨大地震が、30年以内に20%の確率で発生すると示されたとしています。
さらに、平成18年に電力会社などが参加した勉強会で、福島第一原発の敷地を超える津波が来た場合、すべての電源が失われる危険性があると示されていたとしています。そのうえで、東京電力には、こうした予測に基づいて、非常用電源設備などを津波から防護するための対策を取らなかった過失があると主張し、国については、原発事故を防ぐ対策を東京電力に義務づけなかったことが著しく不合理だと主張しました。
これに対し、国と東京電力は「平成14年の長期評価は地震学者の間でも異論があり、科学的な考えとして確立したものでなく、大規模な津波は予測できなかった」と主張しました。そのうえで、平成18年の試算と比べて実際の津波は非常に大きく、試算に基づいて対策をしても事故は防げなかったとしています。
争点の2つ目は、国の審査会の指針で示されている慰謝料の対象地域や金額が妥当かどうかです。原発事故で受けた精神的損害について、国の指針では、放射線量が比較的高く、避難を余儀なくされた沿岸部の住民に850万円から1450万円を支払い、県中部などの住民には12万円を支払うと定める一方、県西部の会津地方は支払いの対象から外れるなど、地域によって大きな差があります。
原告のおよそ8割は、事故後も避難せずに自宅で暮らし続けてきた住民で、健康不安を抱えたまま日常生活を強いられることの精神的苦痛は大きく、指針を基に東京電力から支払われている額は不十分だとして、一律で毎月5万円の慰謝料を支払うことなどを求めました。
これに対し国と東京電力は、被害には個人差があるため一律の賠償は認められず、指針に基づいて適切な額が支払われているなどと争っていました。
福島第一原発事故 集団訴訟 きょう判決 福島地裁
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東京電力福島第一原子力発電所の事故で、福島県で暮らす住民などおよそ3800人が、生活の基盤が損なわれ精神的苦痛を受けたとして、国と東京電力に慰謝料などを求めた裁判は10日、福島地方裁判所で判決が言い渡されます。全国で起こされている原発事故の集団訴訟で原告の数が最も多く、裁判所の判断が注目されます。
原発事故のあとも福島県の自宅で暮らし続ける住民や、避難した人などおよそ3800人は、平成25年、生活の基盤が損なわれ精神的苦痛を受けたとして、放射線量を事故前の水準まで低くすることや慰謝料の支払いを求める訴えを起こしました。
裁判では、国と東京電力が大規模な津波を事前に予測して、被害を防ぐことができたかどうかや、国の審査会の指針で示されている慰謝料の対象地域や、金額が妥当かどうかが争われました。
原告は、平成14年に政府の地震調査研究推進本部が巨大地震の可能性を示したことを根拠に、国などが津波の被害を予測できたにもかかわらず、必要な対策を取らなかったなどと主張しました。
これに対し、国と東京電力は、平成14年の予測は抽象的で、当時の予測に基づいて対策を取ったとしても事故は防げなかったなどと主張しました。
判決は、10日午後2時に福島地方裁判所で言い渡されます。原発事故をめぐる集団訴訟では、全国18の都道府県で1万2000人余りが訴えを起こしていて、前橋地方裁判所はことし3月、国と東京電力の責任を初めて認めて賠償を命じています。今回の原告の数は一連の集団訴訟で最も多く、裁判所がどのような判断を示すのか注目されます。
裁判では、国と東京電力が大規模な津波を事前に予測して、被害を防ぐことができたかどうかや、国の審査会の指針で示されている慰謝料の対象地域や、金額が妥当かどうかが争われました。
原告は、平成14年に政府の地震調査研究推進本部が巨大地震の可能性を示したことを根拠に、国などが津波の被害を予測できたにもかかわらず、必要な対策を取らなかったなどと主張しました。
これに対し、国と東京電力は、平成14年の予測は抽象的で、当時の予測に基づいて対策を取ったとしても事故は防げなかったなどと主張しました。
判決は、10日午後2時に福島地方裁判所で言い渡されます。原発事故をめぐる集団訴訟では、全国18の都道府県で1万2000人余りが訴えを起こしていて、前橋地方裁判所はことし3月、国と東京電力の責任を初めて認めて賠償を命じています。今回の原告の数は一連の集団訴訟で最も多く、裁判所がどのような判断を示すのか注目されます。
裁判の主要な争点は2つ
裁判では、主に2つの点が争点になりました。
1つ目は、国と東京電力が大規模な津波を事前に予測し、被害を防ぐことができたかどうかです。原告は、国と東京電力が遅くとも平成18年までに、福島第一原発の敷地の高さを超える津波が来ることを予測できたと主張しています。その根拠として、平成14年に政府の地震調査研究推進本部が発表した「長期評価」の中で、三陸沖から房総沖にかけてマグニチュード8クラスの巨大地震が、30年以内に20%の確率で発生すると示されたとしています。
さらに、平成18年に電力会社などが参加した勉強会で、福島第一原発の敷地を超える津波が来た場合、すべての電源が失われる危険性があると示されていたとしています。そのうえで、東京電力には、こうした予測に基づいて、非常用電源設備などを津波から防護するための対策を取らなかった過失があると主張し、国については、原発事故を防ぐ対策を東京電力に義務づけなかったことが著しく不合理だと主張しました。
これに対し、国と東京電力は「平成14年の長期評価は地震学者の間でも異論があり、科学的な考えとして確立したものでなく、大規模な津波は予測できなかった」と主張しました。そのうえで、平成18年の試算と比べて実際の津波は非常に大きく、試算に基づいて対策をしても事故は防げなかったとしています。
争点の2つ目は、国の審査会の指針で示されている慰謝料の対象地域や金額が妥当かどうかです。原発事故で受けた精神的損害について、国の指針では、放射線量が比較的高く、避難を余儀なくされた沿岸部の住民に850万円から1450万円を支払い、県中部などの住民には12万円を支払うと定める一方、県西部の会津地方は支払いの対象から外れるなど、地域によって大きな差があります。
原告のおよそ8割は、事故後も避難せずに自宅で暮らし続けてきた住民で、健康不安を抱えたまま日常生活を強いられることの精神的苦痛は大きく、指針を基に東京電力から支払われている額は不十分だとして、一律で毎月5万円の慰謝料を支払うことなどを求めました。
これに対し国と東京電力は、被害には個人差があるため一律の賠償は認められず、指針に基づいて適切な額が支払われているなどと争っていました。
1つ目は、国と東京電力が大規模な津波を事前に予測し、被害を防ぐことができたかどうかです。原告は、国と東京電力が遅くとも平成18年までに、福島第一原発の敷地の高さを超える津波が来ることを予測できたと主張しています。その根拠として、平成14年に政府の地震調査研究推進本部が発表した「長期評価」の中で、三陸沖から房総沖にかけてマグニチュード8クラスの巨大地震が、30年以内に20%の確率で発生すると示されたとしています。
さらに、平成18年に電力会社などが参加した勉強会で、福島第一原発の敷地を超える津波が来た場合、すべての電源が失われる危険性があると示されていたとしています。そのうえで、東京電力には、こうした予測に基づいて、非常用電源設備などを津波から防護するための対策を取らなかった過失があると主張し、国については、原発事故を防ぐ対策を東京電力に義務づけなかったことが著しく不合理だと主張しました。
これに対し、国と東京電力は「平成14年の長期評価は地震学者の間でも異論があり、科学的な考えとして確立したものでなく、大規模な津波は予測できなかった」と主張しました。そのうえで、平成18年の試算と比べて実際の津波は非常に大きく、試算に基づいて対策をしても事故は防げなかったとしています。
争点の2つ目は、国の審査会の指針で示されている慰謝料の対象地域や金額が妥当かどうかです。原発事故で受けた精神的損害について、国の指針では、放射線量が比較的高く、避難を余儀なくされた沿岸部の住民に850万円から1450万円を支払い、県中部などの住民には12万円を支払うと定める一方、県西部の会津地方は支払いの対象から外れるなど、地域によって大きな差があります。
原告のおよそ8割は、事故後も避難せずに自宅で暮らし続けてきた住民で、健康不安を抱えたまま日常生活を強いられることの精神的苦痛は大きく、指針を基に東京電力から支払われている額は不十分だとして、一律で毎月5万円の慰謝料を支払うことなどを求めました。
これに対し国と東京電力は、被害には個人差があるため一律の賠償は認められず、指針に基づいて適切な額が支払われているなどと争っていました。
各地の原発訴訟 2地裁で判断分かれる
福島第一原発の事故のあと、東京電力は国の審査会の指針に基づいて福島県に住む人や県外に避難した人に賠償を行っていますが、事故の責任を問うために裁判を起こす動きが全国各地で広がっています。これまでに、全国で少なくとも18の都道府県で31件の裁判が起こされ、原告の数は1万2000人余りに上っています。
このうち、2つの裁判で判決が言い渡され、ことし3月、前橋地方裁判所は「福島第一原発の敷地を超える津波を事前に予測して、事故を防ぐことはできた」として、国と東京電力の責任を初めて認め、賠償を命じました。一方、千葉地方裁判所は先月、「国は津波を予測できたが、対策を講じても事故は避けられなかった可能性がある」として国の責任を認めず、東京電力に賠償を命じました。
国の責任について裁判所の判断が分かれる中で、福島地方裁判所がどのような判断を示すのか注目されます。
このうち、2つの裁判で判決が言い渡され、ことし3月、前橋地方裁判所は「福島第一原発の敷地を超える津波を事前に予測して、事故を防ぐことはできた」として、国と東京電力の責任を初めて認め、賠償を命じました。一方、千葉地方裁判所は先月、「国は津波を予測できたが、対策を講じても事故は避けられなかった可能性がある」として国の責任を認めず、東京電力に賠償を命じました。
国の責任について裁判所の判断が分かれる中で、福島地方裁判所がどのような判断を示すのか注目されます。
福島第一原発事故 集団訴訟 きょう判決 福島地裁
東京電力福島第一原子力発電所の事故で、福島県で暮らす住民などおよそ3800人が、生活の基盤が損なわれ精神的苦痛を受けたとして、国と東京電力に慰謝料などを求めた裁判は10日、福島地方裁判所で判決が言い渡されます。全国で起こされている原発事故の集団訴訟で原告の数が最も多く、裁判所の判断が注目されます。
原発事故のあとも福島県の自宅で暮らし続ける住民や、避難した人などおよそ3800人は、平成25年、生活の基盤が損なわれ精神的苦痛を受けたとして、放射線量を事故前の水準まで低くすることや慰謝料の支払いを求める訴えを起こしました。
裁判では、国と東京電力が大規模な津波を事前に予測して、被害を防ぐことができたかどうかや、国の審査会の指針で示されている慰謝料の対象地域や、金額が妥当かどうかが争われました。
原告は、平成14年に政府の地震調査研究推進本部が巨大地震の可能性を示したことを根拠に、国などが津波の被害を予測できたにもかかわらず、必要な対策を取らなかったなどと主張しました。
これに対し、国と東京電力は、平成14年の予測は抽象的で、当時の予測に基づいて対策を取ったとしても事故は防げなかったなどと主張しました。
判決は、10日午後2時に福島地方裁判所で言い渡されます。原発事故をめぐる集団訴訟では、全国18の都道府県で1万2000人余りが訴えを起こしていて、前橋地方裁判所はことし3月、国と東京電力の責任を初めて認めて賠償を命じています。今回の原告の数は一連の集団訴訟で最も多く、裁判所がどのような判断を示すのか注目されます。
裁判の主要な争点は2つ
各地の原発訴訟 2地裁で判断分かれる
福島第一原発の事故のあと、東京電力は国の審査会の指針に基づいて福島県に住む人や県外に避難した人に賠償を行っていますが、事故の責任を問うために裁判を起こす動きが全国各地で広がっています。これまでに、全国で少なくとも18の都道府県で31件の裁判が起こされ、原告の数は1万2000人余りに上っています。
このうち、2つの裁判で判決が言い渡され、ことし3月、前橋地方裁判所は「福島第一原発の敷地を超える津波を事前に予測して、事故を防ぐことはできた」として、国と東京電力の責任を初めて認め、賠償を命じました。一方、千葉地方裁判所は先月、「国は津波を予測できたが、対策を講じても事故は避けられなかった可能性がある」として国の責任を認めず、東京電力に賠償を命じました。
国の責任について裁判所の判断が分かれる中で、福島地方裁判所がどのような判断を示すのか注目されます。
このうち、2つの裁判で判決が言い渡され、ことし3月、前橋地方裁判所は「福島第一原発の敷地を超える津波を事前に予測して、事故を防ぐことはできた」として、国と東京電力の責任を初めて認め、賠償を命じました。一方、千葉地方裁判所は先月、「国は津波を予測できたが、対策を講じても事故は避けられなかった可能性がある」として国の責任を認めず、東京電力に賠償を命じました。
国の責任について裁判所の判断が分かれる中で、福島地方裁判所がどのような判断を示すのか注目されます。