平均寿命を確認すると男性80.98歳、女性87.14歳と女性の方が7年近く長生きすることが統計上明らかになっています。長生きできることは素晴らしいことではありますが、1つ考えておく必要があることが、夫が死亡した後の妻の生活になるでしょう。
特に、夫の老齢厚生年金が老後資金の支柱となっており、妻が老齢基礎年金のみしか受給していない場合は老後資金が枯渇する可能性が高まります。
今回は、夫の死後に妻の「年金額がいくら減ってしまうのか」遺族年金の受給額を踏まえて解説を行います。
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遺族基礎年金と遺族厚生年金の違い
遺族年金は遺族基礎年金と遺族厚生年金に分かれています。それぞれ受給対象者と受給額の違いを確認してみましょう。申請方法や受給額の詳細は「遺族年金の仕組み|受給金額はいつまでいくら貰えるのか?」をご参照ください。
受給対象と受給額 | 遺族基礎年金 | 遺族厚生年金 |
受給対象者 | 18歳未満の子供がいる妻 | 妻、18歳未満の子供がいる場合は遺族基礎年金も受給可能 |
受給額 | 779,300円+子の加算 | 老齢厚生年金受給額の3/4 |
上記の通り、遺族基礎年金は国民年金加入者も厚生年金加入者も18歳未満(障害者等級1級または2級の子供がいる場合は20歳)の子供がいる場合は受給可能になります。
会社員や公務員の妻で遺族厚生年金が受給できる妻は自分の年金と遺族厚生年金を合わせることで年金だけで生活できる。と考えてしまいますが、ここに誤解があります。
遺族厚生年金は、老齢厚生年金の受給額に対して3/4した金額が目安となりますが、「老齢基礎年金」は3/4には含まれておりません。詳しく解説を行います。
夫の死後妻が受け取れる遺族年金の種類
妻が受け取ることが出来る遺族年金の種類について詳しく確認をしてみましょう。以下の図は、夫が40年間会社員として厚生年金を納め、妻は第3号被保険者として20歳から60歳まで国民年金に加入したものとして受け取れる年金の種類を表しています。
夫が生きている間は、夫の老齢厚生年金と老齢基礎年金に加え、妻の老齢基礎年金が受給できることになります。
夫が死亡し、18歳未満の子供がいる場合は、妻の老齢基礎年金に加えて、遺族基礎年金と遺族厚生年金が受給可能になります。
夫が死亡し、18歳未満の子供がいない場合の受給できる年金は、妻の老齢基礎年金に加え遺族厚生年金のみの支給となることから受給額が大幅に減ってしまうこととなります。
妻の遺族年金はいくら受給できるか
それでは、実際にいくら年金受給額が減少してしまうのか計算を行いたいと思います。モデルケースは以下としたいと思います。一般的な遺族年金の計算方法は「遺族年金の計算方法を解説|早見表・エクセルシミュレーション付き」をご参照ください。
- 夫婦合計の年金受給額:月額25万円
- 夫:68歳(22歳~62歳の40年間を厚生年金加入)老齢年金月額18万5,000円
- 妻:65歳(20歳~60歳の40年間を国民年金加入)老齢年金月額6万5,000円
- 子供はすでに成人し独立している
夫婦二人で健康で過ごしていた時は毎月25万円の年金収入がありますので、年金のみでの生活も不可能ではないでしょう。
さて、夫が亡くなった場合、遺族厚生年金を受給することが可能となりますが、受給額は18万5000円に対して3/4である13万8,750円受給できると考えてしまいますが、これが誤りです。
夫の老齢年金の中には老齢基礎年金と老齢厚生年金が含まれていますので、老齢基礎年金部分を引いた額に対して3/4する必要があります。
従って、老齢基礎年金を引いた12万円の3/4となりますので、遺族厚生年金として受給できる年金額は9万円となります。妻の老齢基礎年金6.5万円を足すと15万5,000円となります。
結果として、夫が生きていた時は25万円の年金収入があったにも関わらず、死亡後は9.5万円の収入減となり15.5万円しか年金を受給することが出来なくなってしまうのです。
遺族年金のみで生活はできるのか
上記のモデルケースは比較的一般的な家庭におけるシミュレーションでしたので多くの方が該当する可能性が高いと言えるでしょう。
さて、問題は15.5万円の年金収入で残された妻は生活できるのか?という点です。「年金だけで生活できる?家計簿・節約方法・税金など老後の疑問を解説」にて家計調査のデータを参照すると、独身高齢者の生活費は15.6万円が必要であるとお伝えしました。
遺族厚生年金と妻の年金収入を合わせれば15.5万円の収入があることからなんとか生活はやっていけそうであることが分かります。ぎりぎりではありますが、安心とも言えるでしょう。
介護費を見据えた老後資金の準備は必要
ただし、老後の生活で一番費用が発生してしまうのは介護費用になります。特に介護施設に入居するとなると施設によっては数百万円の入居一時金と数十万円の入居費が発生してしまいます。
また、これから消費税の増税や社会保障関連の法改正が予測されるなど一定の老後資金が必要であると想定できます。以前「老後資金の必要額|夫婦二人で5000万円の貯蓄が必要な理由」にて夫婦二人世帯の場合は、少なくても3000万円、理想は5000万円の老後資金が必要であるとお伝えしました。
また、独身女性に関しては「独身女性の老後資金はいくら?必要額をシミュレーション」にて2500万円の老後資金が必要であると考えられます。
あくまで目安の必要額ではありますが、一度ご自身で計画を立て不足する老後資金の貯蓄方法を検討した方が良いでしょう。
老後資金の貯め方は複数ある
遺族年金の受給だけでは老後資金に不安が残る場合は、老後資金を増やす取り組みが必要であると言えます。現在おすすめしたい老後資金の貯め方を順にご紹介したいと思います。
ここでは、すでに老後を迎えている。または老後まであとわずか。という方に向けになるべく低リスクで資産を増やせる方法に限定したいと思います。
リスクとリターンのバランスが良い「退職金運用プラン」
退職金運用プランは、定期預金と投資信託を合わせたような商品で金融機関が主に提供しております。定期預金の確実性と投資信託を掛け合わせることで低リスクでありながら一定のリターンが得られるのが魅力の商品となっています。みずほ銀行では運用利回りが8%と非常に良い成績を納めていますので検討の価値が高いでしょう。
詳しくは「退職金の運用で失敗しないおすすめプラン5種を徹底比較」をご参照ください。
ロボアドバイザーで簡単に資産運用
あまり聞きなれない言葉ですが、資産運用でも最新のテクノロジーが登場する時代になりました。老後資金の一部を預けることでロボットが投資先の選定から運用、さらには自動節税まで全て行なってくれる便利なツールです。ロボアドバイザーに任せることで投資経験があまり無い方でも始めやすい点が非常におすすめです。
詳しくは「ロボアドバイザーとは?手数料・機能面・運用実績から比較する」をご参照ください。
終身保険で確実に貯蓄を増やす
終身保険は解約返戻金にて掛けた金額以上に資金を増やすことが可能になります。保険会社の倒産リスクなどもありますが、比較的確実に資金を増やすことが可能になります。保険返戻金が受け取れるのが早くて10年後〜となりますので、気長に資産運用できる方が向いていると言えるでしょう。
詳しくは「老後の保険|60歳からでも老後資金が確保できるおすすめの方法」をご参照ください。
リバースモーゲージで住宅を担保に借り入れ
リバースモーゲージは住宅を担保に金融機関から借り入れをすることができる制度になります。返済時に住宅を売却し、その売却益で借入金を返済する仕組みとなります。そのため、契約者が死亡した時に住宅を売却をする必要が出てしまいますが、多くの商品は配偶者に引き継ぎが可能です。審査に通れば確実に資産を増やすこともできるので検討の価値はあるでしょう。
詳しくは「リバースモーゲージとは|1から理解し使いこなすための全知識」をご参照ください。
まとめ
夫の死亡後に妻が受け取れる年金額がどのくらい減少するのかについて解説を行いました。
遺族年金は妻にとって貴重な収入源である一方、それだけでは生活が厳しいというのも事実です。
一方で遺族年金は全額非課税になりますので子供世帯の扶養家族になるなどで節約も可能です。詳しくは「遺族年金が非課税の根拠|扶養家族は所得税や住民税の節約にも繋がる」をご参照ください。