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2017-10-07 Trends in the Science 22(8) Special feature (2017)

非科学的知識の広がりと専門家の責任: 高校副教材「妊娠のしやすさ」グラフをめぐり可視化されたこと

『学術の動向』22(8): 18-23 に「非科学的知識の広がりと専門家の責任: 高校副教材「妊娠のしやすさ」グラフをめぐり可視化されたこと」というタイトルで寄稿しました。「卵子の老化」が問題になる社会を考える: 少子化社会対策と医療・ジェンダー という特集の一部です。

雑誌掲載版の電子ファイルは、2017年12月ごろに J-Stageサイト で公開される予定です。

なお、20ページでつぎのようになっている段落について。

後にあきらかになった事実を総合すると、図2のグラフを作ったのは、政府に助言する立場にあった著名な産婦人科医師である。これは2015年10月2日有村治子内閣府特命担当大臣 (当時) 記者会見、翌年5月25日国会 (参議院行政監視委員会) 政府参考人答弁で確認されており、本人も認めている (西山・柘植編 2017: 53-57)。図2に酷似したグラフは2013年には使われていた。吉村 (2013) は「22歳時の妊孕力を1.0とすると、30歳では0.6を切り、40歳では0.3前後となる」と、20代のうちから妊孕力が大きく下がるという根拠としてこのグラフを示している。

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田中 重人 (2017)「非科学的知識の広がりと専門家の責任: 高校副教材「妊娠のしやすさ」グラフをめぐり可視化されたこと」『学術の動向』22(8) (p. 20)


この部分は、校了時の原稿ではつぎのようになっていたものです。

後にあきらかになった情報 (西山・柘植編 2017: 53-57) を総合すると、図2のグラフを作ったのは、吉村泰典・慶應義塾大学名誉教授 (日本産科婦人科学会元理事長、日本生殖医学会元理事長、内閣官房参与) である。吉村は、自身が代表をつとめる一般社団法人「吉村やすのり生命の環境研究所」サイトで、図2に酷似したグラフを使ってきた。たとえば「22歳時の妊孕力を1.0とすると、30歳では0.6を切り、40歳では0.3前後となる」(吉村 2013) といった具合に、20代のうちから妊孕力が大きく下がるという持論の根拠としてこのグラフを示している。


校了後になって編集委員長から修正依頼があり、特集執筆者で協議した結果、現在のような文面になりました。最終的には、「吉村泰典」の氏名や肩書がなくなり、「政府に助言する立場にあった著名な産婦人科医師」というぼやかした表現になっています。一方で、大臣記者会見国会質問 の情報を加え、改竄グラフを使用したブログ記事 (吉村 (2013)) への文献参照はそのまま残しました。

訂正事項

掲載時の英文表題 (6ページ) は、

Professional Responsibility for Spreading Unscientific Knowledge: The case of the "Ease of Conception" Graph in Supplementary a High School Textbook

となっており、冠詞 a が変な位置に入っていました。国立国会図書館 (NDL) 雑誌記事索引国立情報学研究所CiNii の情報は、このまちがった英文表題のままになっています。この点の訂正は、次の9月号の5頁に掲載されました。

正しい表題は、
Professional Responsibility for Spreading Unscientific Knowledge: The case of the "Ease of Conception" Graph in a Supplementary High School Textbook
です (J-Stage に全文ファイルが載るときには訂正される予定)。

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