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09 Oct 2017 18:23
記事

痴漢の4ヶ月後に強制わいせつ未遂 性犯罪にいたるトリガーを除去せずに再犯防止は可能なのか

性犯罪に絡んだ裁判を傍聴していると、初めて起訴されたにもかかわらず、複数の犯罪を繰り返していたというケースは珍しくはない。今回傍聴した裁判では、同じような行動パターンを繰り返した結果、より重い犯罪をおかすに至った。しかも、きっかけになったもの(トリガー)が一緒だった。トリガーを排除できるのかが、再犯を防ぐ手立てだろうが、それができるのか....。

飲食店に勤務していた韓国人の男(26)は今年3月、新宿区百人町の路上で通行中の女性に痴漢をした。その4ヶ月後の7月、新宿区大久保の路上で、通行中の女性を襲う強制わいせつ未遂事件を起こし、逮捕、起訴された。9月5日、東京地裁(石田寿一裁判長)で審理があり、即日、懲役1年2ヶ月、執行猶予3年の有罪判決が言い渡された。

被告人は路上でいきなり女性を襲った

起訴状や冒頭陳述などによると、3月23日午前4時40分ごろ、新宿区百人町の路上で、男が帰宅途中に通行中の女性のお尻を右手で着衣の上から触った。また、7月3日午前4時20分ごろ、男が帰宅途中に通行中の女性を見て、無理やりキスしようと考え、人目につかない路上に連れ込み、押し倒した。しかし、女性が抵抗したこともあり、未遂となった。

男はいずれの事件でも起訴事実を認めた。

その後、強制わいせつ未遂事件の被害女性の供述調書が読み上げられた。それによると、路上を歩いていると、いきなり首を後ろから押され、ヘッドロックされた。当初は知り合いがふざけてやっているのかと思った、しかし、前のめりにさせられたため、「これはふざけているのではない」と判断し、右腕を振り払った。小走りで逃げると、またヘッドロックされ、引きづられ、左側の路地に連れ込まれた。

「レイプされるのではないか」と被害女性は思った。そのため、足を踏ん張って抵抗をした。さらに引きづられ、右腕を首から抜こうと思ってもなかなか抜くことができなかった。女性は倒されて、被告人は体の上に乗って来た。しかし、しばらくすると、男は動かなくなった。

被害女性は「ますます怖くなった。本当にレイプされるのではないか。殺されるのではないか」と思っていた。ただ、このとき、体をくねらせ、抜け出すことができた。その場から逃げ出すと、目撃者の男性2人に助けを求めることができた。

ちなみに、民事上の和解は成立している。被告人は示談金50万円を被害者に支払った。

痴漢事件の被害女性の供述調書も読み上げられた。それによると、女性が大久保通りを歩いていると、同じ方向を歩いている被告人が前を歩いていた。女性の方を見ていたので不審に思い、早足で被告人を追い抜いた。しかし被告人が徐々に近づき、お尻の真ん中あたりを触られたので、腕を掴んだ。「触りましたよね」と問い詰めると、「触ってない」」「触ってない」というので、交番に連れて行った。

2つの事件に共通するのは、犯行前の過度な飲酒

この日、情状証人としては、韓国から日本へ来た被告人の母親が証言台に立った。今後は韓国で一緒に住み、生活に干渉していくと誓った。続いて、被告人質問が行われた。

弁護人:7月の事件で「人目につかない路地」と供述しているが、どういう意味か?

被告人:最初はどんな場所からは知りませんでした。お酒を飲んで、してはいけないことをしたが、記憶がありませんでした。今はお酒を飲んでいないのでわかりますが、無意識にそうしていた。

弁護人:被害者が倒れたときはどう思ったのか?

被告人:女性の上に乗ったとき、「してはいけないことをしてしまった」と思い、何もできない状態だった。

弁護人:調書には「大声を出されて、まずいことになった」ともあるが、「まずい」とは?

被告人:韓国語で「まずい」は、「大変なことをしてしまった」という意味

弁護人:被害者との間で示談をしたが、誰が示談金を準備したのか?

被告人:6月の給料と、両親に出してもらった。

弁護人:事件の原因はなにか?

被告人:平常心を失うほどの飲酒をし、個人的な感情を持ってしまった。

弁護人:3月の事件は二軒、飲酒している。その後に事件があった?

被告人:はい

弁護人:被害者をどう触った?

被告人:お尻をタッチした。その後、手首を掴まれた。

弁護人:3月の事件の原因は?

被告人:7月同様に、お酒の飲み過ぎ。通常ない心を持ってしまった。

弁護人:今後もお酒を飲めば同じことをするのでは?

被告人:今回の事件後、お酒やタバコといった害になるものはやめるよう努力している。今回同様の事件を起こさないようにする。


この2つの事件に共通するのは仕事が終わって、深夜から未明にかけて飲酒をしていることだ。強制わいせつ未遂事件の際には、1ℓあたり、0.43mlのアルコール成分を検知した。また、痴漢事件のときは、アルコール検知について触れていないが、仕事帰りに2軒ほどハシゴしている。

痴漢事件後は彼女がサポートしてくれたが別れた後に....

検察官による反対尋問は以下の通り。

検察官:7月の事件で、「なんてことをしてしまったんだ」と思ったんですよね?

被告人:はい

検察官:でも、自分からは女性の体から退こうとはしなかった。謝ったり、起こそうとも思わなかった。

被告人:はい

検察官:なぜですか?

被告人:考えが一つのことに集中して、行動がとれないでいた。

検察官:3月の事件も7月の事件もお酒が原因。7月は女性を襲うまでになった。

被告人:はい

検察官:3月の事件後、お酒を飲まないように、と考えなかったのか?

被告人:そうではない。お酒の量を減らすように努力した・当時の彼女も精神的にサポートしてくれた。

検察官:7月のときは彼女がいない?

被告人:付き合っている当時は減らそうとしていた。別れてからもお酒の量を減らそうという気持ちに変わりはありませんでした。

検察官:3月の事件でもっと反省していればよかったのでは?

被告人:そう思います。


韓国は飲酒量がトップクラス。帰国すれば、再犯しないのか?

通常、証拠調べと被告人質問が終わっても、判決言い渡し期日は別に設定されるが、この裁判では、即日、判決となった。検察側は求刑で1年2ヶ月を、弁護側は執行猶予を求めた。  石田裁判長は、懲役1年2ヶ月、執行猶予3年の有罪判決を下した。強制わいせつ未遂事件は暴行の程度は強いものの未遂だったこと、母親が協力して被害者と和解したこと、前科がないこと、その上で、起訴事実を認め、反省と謝罪をし、韓国に帰国して家族と暮らすということを考慮した、と理由を述べた。

判決そのものは、過去の判例を鑑みれば、特に重いものでも、軽いものでもないだろう。しかし、被告人が再犯をしないための方策は裁判では、家族と暮らす以外には話し合われなかった。

2つの事件の共通点は、犯行場所が近隣で、時刻がいずれも午前4時を過ぎていた。しかも、アルコールを摂取した後に罪を犯している。こうした事件を防ぐには、行動パターンを変えることが必要であり、事件を起こすに至った一つひとつの要素を排除していくことが求められる。

たしかに韓国に帰れば、犯行場所は除外される。しかし、自宅で家族一緒に住むとして、午前4時まで外出しないことができるのか、また飲酒量を減らす、あるいは飲酒そのものを抑えることができるのか。被告人は彼女がいたときは飲酒量を減らす努力をし、彼女も支えてくれていたという。しかし、精神的なサポートを失ったあとに犯行を繰り返した。

WHOによる飲酒量のランキング(2014年)では、韓国の飲酒量は世界ランキングで32位、日本は55位だ。ちなみに、アルコール依存症のランキング(2010年)では、韓国は12位、日本は136位だ。むしろ、韓国の文化のほうがアルコールのリスクは高い。家族が精神的なサポートになりえるのか未知数であり、かつ、家族の自主的な努力に任せていいのかも疑問だ。

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