神戸・大阪と鹿児島、奄美群島、沖縄本島を結ぶ旅客フェリー「琉球エキスプレス」が運航を休止することになり、最後の便が9日午前、那覇市港町の那覇新港に入港した。格安航空会社(LCC)の参入で、乗船客が減少したことが要因。同路線の運航休止で、沖縄と本州を結ぶ旅客フェリーはなくなる。乗船した人たちは、その姿を写真に収めるなどして惜しんでいた。
「琉球エキスプレス」は午前8時半ごろ、定刻通りに入港し、関西や奄美から乗ってきた68人が下船した。
徳之島出身で子どもや学生のころ、帰省する際に利用した武山吉行さん(51)=兵庫県姫路市=は「子どものころの記憶では大浴場やレストランがあったが、だいぶ変わっていた。あのころを思い出すと懐かしい。飛行機の時代かと思うと寂しい」と話した。
学生時代から「いつかは乗ってみたい」と思い続けていた那覇市出身の佐々木芙由子さん(31)は娘の綾花(あやか)ちゃん(4)、紬葵(ゆき)ちゃん(1)、友人の大城ありささん(31)と神戸からの船旅を楽しんだ。
佐々木さんは「子どもが大きくなったら乗ろうと思っていたが、最後ということで乗船した。船内でたくさんの人から話を聞けて楽しかった」と満足げな表情を浮かべた。
マルエーフェリーによると、年間乗客数は1998年の約2万7600人をピークに、この20年ほどで約7200人まで減少した。運航の継続が企業の経営環境を悪化させることになり、雇用の安定確保を図るため、休止を決定したという。マルエーフェリーは今後、阪神航路を貨物船に切り替え、旅客の乗船はできなくなる。【琉球新報電子版】