データを見ると、わかりやすい...!
Geophysical Research Lettersで公開された研究によると「大洋航路のある地域では、海上船舶によるエアロゾル粒子や前駆物質の排出が、気流の微物理的過程の増進や雷雨帯電を引き起こすと我々は仮定しています」
…え? なに、どういうこと?と目をしばたかせたくなりますが、簡単に言いかえると次のとおり。
巨大な積乱雲をともなう嵐は、雷を発生させることがあります。この放電にはかなり丈の長い雲を必要としますが、科学者たちは船の排気ガスに含まれるエアロゾルやちり粒子がちいさな雲粒を多く生み出し、雨を遅らせ雲を大きくすると示唆しているのです。
こうした粒子が特に海上で雷にどれほど影響しているのか、実際に調べることは困難です。そのため科学者たちは航路上と付近で発生した雷と、排気量の関連性に注目しました。World Wide Lightning Location Networkから10億以上の落雷とEmissions Database for Global Atmospheric Researchなどから排出量を調べてデータを掛け合わせたところ「ボートからの排気ガスが雷を引き起こす可能性がある」という彼らの仮説に沿った研究結果が得られたそうなのです。
論文では「世界の主要な2つの航路を中心に、雷の発生頻度が年率約2倍増加していることがわかった」として「こうした雷の増加は気象要因としては説明できず、我々は船舶の排気ガスによって生じるエアロゾル粒子が雲の微物理や気流、氷晶過程を混乱させて雷の発生を促進していると結論づける」と記されています。
…とはいっても、まだなんとなく腑に落ちない…と感じている人は以下のチャートを比較してみましょう。上の地図は年間平均の落雷を、下の地図には船舶からの排出量を示しています。両図ともに赤いアウトラインのひとつは北スマトラから西に突き出ており、もうひとつはシンガポールから北東にかけて伸びているのが特徴です。
オーストラリアにあるニューサウスウェールズ大学の科学者Steven Sherwood氏は、Ship&Bunker にこうした排気微粒子と雲の関係はまだ完全に示されたわけではなく不確実性が残ることを認めつつ、それでもやはり今回の研究結果が重要で「船舶の排気ガス量が雲に与える影響について、さらに大きな問題を紐解いていく」のに役立つと指摘しています。
Image: Aigars Mahinovs/Flickr
Source: Geophysical Research Letters, World Wide Lightning Location Network, Emissions Database for Global Atmospheric Research
Ryan F. Mandelbaum - Gizmodo US[原文]
(Rina Fukazu)