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今どきの就活

今の就活は親の世代の就活とは全く違うものです。
最新の就活事情を知りましょう!

今どきの就活を知りましょう

バブル前~全盛期だった私たち親の時代の就活

初めにお伝えしたいのは、親世代が経験した「就職活動」と今の「就活」は、世の中の状況も就活のやり方も全く違うということです。1980年代に就職活動をした方は思い出してみてください。ときはバブル景気直前からバブル全盛の時代。好景気の中、どの企業も多くの学生を採用しようと奪い合う「売り手市場」でした。いわゆる「青田買い」も横行しました。しかも当時の大学生は4人に1人の「エリート」。大学さえ出れば、どこかには就職でき、しかも正社員が当たり前でした。

応募方法も今とは大違いです。インターネットなどありませんでしたから、自宅に送られてきた分厚い就職情報誌に付いているハガキを送って入社案内を入手し、簡単な履歴書を郵送したと思います。筆記試験や数回の面接を経て、優秀な学生は1人でいくつも内定をもらったものです。企業は、内定を出した学生になんとか入社してもらおうと、海外旅行に招待したり、豪華なパーティーを開いたり。贅沢な内定者囲い込みが話題になりました。就職活動の時期も大学4年生の春か夏ころの数ヵ月間程度でした。

近年の就活事情をおさらい

今の日本に、「大学生」というブランドは存在しません。少子化が進む一方で大学は増え続け、いまや2人に1人超が大学生。選り好みさえしなければ誰でも大学生になれる「大学全入時代」です。バブルのころ37万人ほどだった大学卒業生の数はいま毎年56万人前後。ざっと1.5倍に増えました。

一方、2000年代以降、雇用にかかわる規制緩和が進み、企業は契約社員や派遣社員といった非正社員を増やしてきました。2008年のリーマンショックで世界同時不況が起きると、経費削減を迫られた企業はさらに正社員の数や採用数を減らし、バブル崩壊後の「就職氷河期」よりも厳しい「超氷河期」に。「大学を出ればみんな正社員」は昔のことになり、正社員になることが簡単ではない時代になりました。

その後、安倍政権の経済政策アベノミクスによる円安株高などで業績が回復した大企業は採用数を増やしました。就活は長く企業有利の「買い手市場」でしたが、2015年卒採用のころから久々に「売り手市場」に転じ、2018年卒業生の内定率や就職率は「バブル期並み」といわれるほどまでに高くなりました。

大卒の求人倍率は、1.23だった2012年卒から6年連続で上がり、2018年卒は1.78になりました(リクルートワークス調べ)。求人倍率は企業の求人数を就職希望者数で割ったもので、学生1人に用意された椅子の数を表します。学生1人に企業の椅子は1.8個近く。一時的に比べれば、今の就活生は数の上ではかなり恵まれた状況にあるといえます。

WEBエントリーとESの功罪

バブル前後の時代と今のもっとも大きな違いの一つが、インターネットの存在です。かつての学生が就職活動の最初に手にした就職情報誌は、全員の家に平等に届いていたわけではありません。当時は「学歴」による選別が当然のように行われており、上位校の学生とそれ以外の学生には情報格差がありました。

1990年代以降ネットが普及し、就職情報誌に代わって就職情報サイト(就活ナビ)が必須のツールになりました。ネットでは誰もが同じ情報を見ることができるため、公平・平等です。企業への応募も、ハガキからWEB上で個人情報を登録する方法(プレエントリー)に変わりました。この結果、かつては事実上、上位校の学生を対象に選考していた人気企業に応募が殺到するようになったのです。数万人が応募する会社も珍しくありません。

同じころに広まったのがエントリーシート(ES)です。市販の規定の用紙に経歴と簡単な志望動機などを書く履歴書に対し、志望動機や自己PR、学生時代に力を入れたことなど各社が独自に設けた設問に答えるのがESの特徴です。項目数が多いうえ、一つの設問に200字から400字も書かなければならないので大変です。項目ごとに800字、1000字と作文並みに書かせる企業もあります。プレエントリーのあとESを提出して正式な「本エントリー」となります。このESを、1人20~40通ほど出すのが今の就活です。誰でも応募はできますが、いいかげんなESでは面接に進むことすらできません。

一方で、数万人もの学生が応募してくると、企業は丁寧な選考などできません。面接できる人数には限りがありますから、ESによる書類選考とSPIなどの適性検査でばっさりと落とす企業が多くなりました。

就活日程変更とインターンシップ急増

少しでも早く優秀な学生を採りたい企業と、就活に学業の邪魔をされたくない大学――。両者の間の綱引きで、就活スケジュールは昔から前倒し、後ろ倒しを繰り返してきました。かつて企業と大学の間には「就職協定」がありましたが、協定破りが後を絶たずに形骸化し、1997年卒採用で廃止されました。翌年から経団連(当時は日経連)は「企業広報解禁は3年生の10月(2013年卒採用からは12月)、選考開始は4年の4月」とする倫理憲章を定めました。しかし3年生から就活が始まるため学業に支障が出るとの批判があり、安倍首相が経団連会長らに後ろ倒しを要請。経団連は2016年卒採用で「広報解禁は3年生の3月、選考開始を4年の8月」とする「採用選考に関する指針」を決めました。

就活後ろ倒しとともに、学生に早く接触しようと3年生の夏から冬にかけてインターンシップ(就業体験)を実施する企業が急増。経団連は教育の一環であるインターンを採用選考に結びつけてはいけないとしていますが、インターン参加者を優遇するなど選考の参考にする企業も多いため、結局、就活は3年生の夏から丸1年続くことになり「早期化・長期化」してしまいました。指針を破って7月までに内々定を出す企業が続出したうえ、就活を終えるよう迫る「オワハラ(就活終われハラスメント)」も横行するなど2016卒採用は大混乱に陥りました。これを受けて経団連は、2017卒採用からは選考開始時期のみ「4年生の6月」と2カ月前倒しする新たな指針を定めたのです。

インターンについて経団連は従来、「5日間以上」実施しなければならないと定めていました。しかし、企業が実施しやすく学生も参加しやすい1日だけのワンデーインターンを認めてほしいという要望が強く、2019年卒採用からは教育効果の高いものに限ってワンデーを容認。ワンデーが急増しています。

スケジュール、選考方法

一般的な就活スケジュール

今の就活のスケジュールをまとめると――3年生(大学院1年生)の夏からのインターンで事実上スタート(インターンは翌年2月まで多くの企業が実施)。3月に会社説明会と採用本番のエントリーが始まり、4年生の6月からの面接を経て内々定――というのが一般的なスケジュールです。ただし、3~5月の間に面接をして内々定を出す企業も多く、経団連の指針は形骸化しています。IT系や外資系など経団連の指針に縛られない企業の中には、3年生の冬に選考を始め、春までに内々定を出すところもあります。

2019年3月卒業予定の就活生の一般的なスケジュールは以下のとおりです。

2017年 5月~7月 大学のキャリアセンターによる就職ガイダンス
7月~ 各企業がインターン実施(原則として採用選考とは無関係)
外資系やIT系、ベンチャー企業、一部マスコミなどが採用選考
2018年 3月~ 企業の広報活動開始(就職情報サイト=就活ナビ・企業の採用
ホームページオープン、合同企業説明会・個別の会社説明会)
企業へのプレエントリー開始
3月~5月 ESの作成・提出(本エントリー)
6月~ 企業の採用選考開始(筆記試験、面接)
6月~7月 多くの企業が内々定を出す
10月1日 多くの企業が内定式開催
2019年 4月1日 入社

※「企業広報3月解禁、選考6月解禁」は経団連指針のスケジュール。経団連に加盟していない企業の多くが5月までに内々定を出し、加盟企業の中にも5月までに事実上の面接をして内々定を出す企業がある。

選考方法(ESによる書類選考→GD・面接)

学生は、3年の3月になると、各企業の採用ホームページ(HP)や就活ナビから、プレエントリー、会社説明会の申し込み、ES提出(本エントリー)などを行います。多くの企業は、書類選考、適性検査などのあと、筆記試験や面接を実施します。

面接は、学生1人に対する個人面接、学生数人を同時に見るグループ(集団)面接、学生5~8人によるグループディスカッション(GD)など、形式はさまざまです。内々定までの面接回数は3回程度が普通ですが、中には6回以上面接をする企業も。正式な面接の前に、リクルーターと呼ばれる若手社員による面談を繰り返す企業もあります。リクルーターの多くは学生の大学を出た先輩社員で、会った学生の情報を人事部に報告します。

筆記試験は、SPIなどの適性検査だけという企業が多いのですが、マスコミを中心に時事問題、作文・小論文のテストを実施するところもあります。

子どもに立ちはだかる壁!

進む二極化

学生有利の「売り手市場」が続く中、学生の対応は二つに分かれています。就活本番のスタートは遅くなったものの、3年生の夏から始まるインターンに参加したり、早めに就活を意識して自己分析や業界研究を始めたりする学生と、「売り手市場だし、何とかなる」と油断して解禁の3月になって慌てて始め、採用担当者を「企業研究が浅い」と嘆かせる学生です。各企業は求める学生を獲得するため、ESに工夫を凝らしており、一夜漬けではとても対応できません。採用本番は3ヵ月間の「短期決戦」。早くから準備を始めていくつも内定を獲得する学生と、準備不足でいきなり本番に突入し、何社受けても内定をもらえない学生の「二極化」が進んでいます。

メンタル面のケアも大切

親の世代の就職活動では、実際に選考を受けた企業は数社から10社程度だった人が多いのではないでしょうか。人によって異なりますが、今の就活では50社前後にプレエントリーし、20~40社ほどに本エントリーという学生が多いようです。WEBエントリーが手軽にできる分、たくさん受けてたくさん落ちるのが今の就活です。落ち続けても最終的に1社内定を得ればいいのですが、「落とされるたびに自分が否定されたように感じる」と心理的に追い詰められてしまう学生もいます。

今は一部の学生を除き、入りたい会社にすんなり内定をもらえる時代ではありません。実際、年56万人ほどの卒業生のうち、正社員として就職できる学生は40万人前後。非正社員、アルバイト、「進学も就職もしていない人」を合わせると8万人近くに上ります。ここには正社員になりたくてもなれなかった人が多く含まれています。売り手市場にもかかわらず、就活生はみな「自分は正社員になれないのではないか」という不安と戦っています。メンタル面のケアも大切なのです。