みんな…。
（一同）待ってるぞ！明治３５年京都。
ここに笑いを商売にして大阪を笑いの都にやがて日本中を笑顔にした一人の女性がいます。
笑う事がとっても大好きなこの物語の主人公です。
こないにぎょうさんの人がわろてはる。
すごいお人がいてはるもんやな。
・「出かける時の忘れ物」・「ひょいとつかむハンカチのように」・「心の中にすべり込む」・「いちばんちいさな魔法」・「泣いたり笑ったり」・「今日も歩き出す」ここはてんの実家。
京都で一二を争う薬問屋藤岡屋です。
こちらは…ほな。
（一同）おはようお帰りやす。
怒ると怖いと評判で付いたあだ名がギョロ目の鬼さん。
（くしゃみ）あ〜…。
一方てんはというと…。
何にでもよく笑うゲラ笑い上戸でした。
（りん）う〜んおいしいおすぅ。
やっぱりお母はんの料理は天下一や。
その甘鯛の酒塩焼きなぁわざとウロコごと皮を残しましたんえ。
（新一）へえ〜。
ホンマや。
目ぇからウロコの料理やな。
目ぇからウロコや〜。
（笑い声）人の生き死にに関わる薬屋の娘がゲラが過ぎる。
近々ドイツの薬会社の社長ご一家を招いての大事なホゥム・パァティもある。
それまでに笑い癖を直すんや。
ほならわてが一からしつけ直しまひょ。
おじぎには４種類ある。
まずは会釈礼。
敬愛礼。
尊敬礼。
最敬礼。
それやったらからくり人形どっせ。
からくりて…。
その笑い癖。
すんまへん！ゲラを止める方法はないんやろか。
僕は好きやで。
てんの笑い上戸。
何にでもよう笑うという事は人の哀しみにも敏感やいう事やと僕は思う。
お前が笑うとみんな楽しなるんや。
そしてホームパーティーの日
（ドイツ語）「ドイツで売り出した我が社の新薬や」言うてはります。
あ〜こらこらおおきに。
ダンケシェーン。
ダンケシェーン。
長女のてんです。
てんはそちらのニーナさんと同い年仲ようしてやって下さい。
（新一のドイツ語）
（ドイツ語）
（新一）「一緒に飲まないか」と言うてはります。
私は酒はどうも不調法なもので。
ビッテ。
（笑い声）てん！てん！てん！お前何やって…。
あっち行け！あ〜っ薬！あ〜っ！
（悲鳴）
（儀兵衛）薬が割れた！大事なお客様になんちゅう事を！堪忍しとくれやす！金輪際わろたらアカン！お父はんうちが嫌いなんやろか。
自分の子を嫌いな親なんていてまへんえ。
笑うのが苦手なだけどす。
小さい頃から親元を離れて甘える事も許されんと一心不乱に働いてきはったんや。
藤岡屋の当主としてお父はんが笑う暇ものう尽くしてきてくれはったんは確か。
一睡もせんと外国語を必死に勉強して遠い異国の習わしを覚えたり…無愛想なあの人がホゥム・パァティをしはるやなんてなあ。
・
（せきこみ）兄さん！誰か！誰か！しっかりして兄さん！どないした新一…。
しっかりせえ！おい！ここ何年も発作はのうて安心してましたんやけど…。
喘息いうんは大人になって出るとやっかいなもんでしてなぁ。
学校は休学してゆっくり静養した方がよろしいな。
休学？そないに悪いんですか？あの子進学していずれは留学したいと…。
しず。
…よう分かりました。
（しず）新一兄さんは大丈夫。
ただなぁ安静にさせてやりたいよって離れには行かんといてな。
あんたが笑うと新一もつられてわろてしまいますやろ。
やっぱりお父はんの言わはるとおりゲラでええ事ないいうんはホンマなんや。
あんたの笑い上戸はな新一が喘息になった頃からなんえ。
私が看病で掛かりきりになってこの家がし〜んとして暗うなってな。
そん時一番寂しい思いしてるはずのあんたが小さい事で急に笑いだしてな。
おかげで家ん中明るうなった。
感謝してるんえ。
あんたの名前はなおてんとさまから頂いた名ぁや。
え？いつでも明るく周りを照らすような子ぉでいてほしい。
そう願うて付けたんや。
京都の年中行事の一つくすり祭りの日。
てんと風太はないしょで寄席に出かけます
（風太）よいしょ。
もう間に合わへん。
横から行くで。
えっ！？
（落語家）「こらホンマにね珍しい名前で…」。
落語や。
「ちりとてちんちゅうもんや。
元祖やないとあきまへんでちりとてちんは。
くっさ〜！」。
（笑い声）どっから潜り込んだんや！逃げろ！アイタタタタ！こ〜ら！
（笑い声）これがてんが初めて笑いの力を知った瞬間でした。
（藤吉）おうおう来たで来たで！
（キース）やっば〜！よっ！よっ！何やお前ら！お〜っ！痛っ！
（悲鳴）アカン…ほなまた。
さいなら。
おお…キース！？ああ…来よった。
今変な格好の奴ら来えへんかったけ？あっち。
おい向こうや！はぁ〜おおきに。
何や？お前。
俺は…。
あ〜っ見つけたでお前ら！てん逃げろ！おお…。
か〜っ腹立つな〜！おお…何や何や。
こら〜っ！・おらんかったぞ！来よった！へ？こっちや！へ？へ？ホイホイホイホイ…。
・捜せ捜せ！どこ行きよった！？行くぞ！行ったようやな。
さっきの奴キースいうんやけど食い逃げしよって。
へ！あいつらが飯食わしたる言うからただやと思うて食べたらとんでもない金払えて脅されてな。
俺は何も食べてないのにや。
（おなかが鳴る音）チョコレート。
くれんのか？おおきに！うまっ！うまいなぁ！僕は旅芸人一座の芸人でな。
芸人さん！？お…おお。
すごい。
初代北村藤吉たぁ俺の事よ。
知らんのんか。
大阪やったら知らん者はない売れっ子芸人やで。
全国津々浦々を大笑いさせる日本一の芸人や。
日本一！すごいホンマにすごい。
すごいやろ？名前は？てん。
てん？「てんご」のてんや！てんてんてんごのおてんちゃんや。
ええ名前や。
うちてんごはよう知らん。
え？家ん中では笑い禁止わろたらアカンねん。
何や？それ。
よう分からんけどもったいないなぁ。
笑わんやなんて人生損してるで。
・
（風太）てん！どこにおるんや！帰らんと！どないしたんや？心配したで！何してんにゃお前！てんに近づくな！風太。
（キース）何してんねん？あいつらもう諦めよったわ。
京の都は悪者も品がええもんやな。
（笑い声）お前も誰や？え？ええさかいお父はんに怒られるよって…。
てん待って。
（藤吉）ちょっと待って！泥棒芸人？泥棒に間違えられただけです。
ええ人なんや。
あんなけったいな格好して。
カス芸人に決もてる。
風太がそないに妬くほどすてきな人やったんか？
（２人）そんなんやない！そんなんや…ただ…。
どないしたんや？酒瓶の中身が夜な夜な減っていくんどす。
旦さんは下戸一滴も飲まぁらへん。
高い酒に手ぇ出す不届き者は…。
（４人）風太！へ？何でもかんでも盗み食いするのはお前しか…。
わてが盗み食いしたのは紅白まんじゅうです！え？え！？ネズミか思たわ！３つも４つものうなって。
５つです！
（一同）えっ！…すんまへん。
そやけどわては酒なんか絶対に飲んでまへん。
酒瓶に印つけて確かめてみたらええ。
その翌朝
減っとる…ホンマに酒がのうなってる！ネズミやないんやったらバケ猫ちゃうか？
（サエ平助）バケ猫！？代々この家にはバケ猫がいはってなぁ。
嘘でっしゃろ？お前がマタタビでバケ猫をおびき寄せる。
出てきたところを俺がこのこん棒でたたきのめす。
・
（風の音と猫の鳴き声）来た！
こうして夜も更けた頃
うちのせいや。
お父はんが…バケ猫になってしまわはった。
うちがわろたせいで？うちがパァティをむちゃくちゃにしたさかい？お父はんドイツの薬会社とどうしても取り引きしたいと思うてはるんや。
何で？きっと新一のためやろなぁ。
ドイツにはいろ〜んな病気を治す魔法のようなお薬があるらしいんえ。
けど取り引きが思うようにいかんようで…こっそりお酒を飲むようになったんや。
すみまへんどした！うちあなたをわろたんやのうてチョウチョがお嬢さんのリボンみたいで楽しゅうて楽しゅうて…。
そやからお父はんの事見捨てんといて下さい。
お父はんは魔法のお薬を手ぇに入れて兄さんや苦しんでいる人たちを助けたいんどす。
お願いします！お願いします！すんまへん。
あのドイツさんに会うてきました。
何やと！？うちのせいでお父はんがバケ猫に…。
そんなアホな事…。
お父はんがお酒を…。
よっしゃ！な…何ですのん？
（サエ）旦さん？いや何してはるんどす！
（しず）あなた！ちょっと旦さん！何しはりますのん！？てん！風太！酒瓶皆持ってこい！
（２人）へえ！これでもう二度とうちにバケ猫は出てこぉへん！てんがバケ猫退治してくれたわ。
お父はん…。
よいしょ。
笑ってよし。
へ？だが笑い過ぎたらいかん。
これで腹いっぱい笑えるで！食う事ばっかりやな！
（笑い声）
笑い禁止令も解けみんなでお参りに出かけました
・とざいと〜ざい！風太！りんの事少〜しお願い！へ？てん！「四十七の義士を〜」。
「そんなに集まるか？」。
（笑い声）「２〜３人減っても」。
・「ギシいでよ〜！」。
へ？シシ？アホ！まだ四段目…。
「プギィィィィ〜ッ！プギィッ！プッ…プ…」。
アホ！何しとんねん！イノシシが出んのは五段目や！落ちが分からんやろ！
（観客）帰れ帰れ！「おお〜！討ち入り前にシシ鍋で一杯いくとするか」。
（拍手と笑い声）今度は逃げよった！しょうもないシシじゃわい！藤吉さんは？おお！藤吉さんは？あ〜…。
かわいい簪持ってるやないの。
ご祝儀代わりにもろとくわ。
あ…。
藤吉やったらあっちや。
こっちやで。
はい。
てんごのてんちゃんが来たで。
おぉ！見せたかったわ俺の芝居。
もうみんな大笑いでワッハハ〜いうてな。
全部見られとったで。
えっ。
悪いんやけど今日は去んでくれるか？堪忍な。
チョコチョコ！どないしたんや？泣いてはったんや。
あのお人。
てん！てん！フフフフフフフ。
うまっ！よかった。
笑いの世界はええわ。
何か心が温こうなる。
そやから芸人さんに？ああ。
俺が日本中を明るうぬくぬくにしたるってな。
たった一人でええ。
一人でもわろてくれはったらその笑いが広がってみんなが幸せになれるて思うんやけどな。
「とざいと〜ざい！『塩谷判官切腹の段』！」「アイタッタタタタタタ…」。
何で受けたん？泥棒さん。
よっしゃ！「天下の大泥棒石川チョコ衛門たあ俺の事よ！」。
チョコ衛門やて。
はぁ。
君は僕の芸にわろうてくれた第一号のお客さんや。
え？なあ。
これからもその笑顔でずっと…。
わろてんか？手紙書いてあげるわ。
ホンマ！？ああ。
旅先の様子書いて送るわ。
約束や。
あっそや。
チョコのお礼や。
（鈴の音）
（藤吉）「テンテンテンゴのおてんちゃん僕は今越中富山におる」。
てんは藤吉から旅の手紙を受け取りながら笑顔がまぶしい年頃の娘へと成長したのです。
（風太）また来たで。
危なっ！おおきに風太！あいつ今度はどこにいんのや？北国かもしれんし海に囲まれた南の島かもしれんし。
楽しみやなあ！2017/10/08(日) 11:08〜11:28
ＮＨＫ総合１・神戸
「わろてんか」一週間[新] 第１週「わろたらアカン」[字]
京都の薬問屋の娘・藤岡てん（新井美羽）は笑い上戸な女の子だが、その“笑い”が過ぎて商談を台無しにし、父・儀兵衛（遠藤憲一）から“笑い禁止”を言い渡される。
詳細情報
番組内容
時代は明治後半。京都の薬問屋の娘・藤岡てん（新井美羽）は笑い上戸な女の子だが、その“笑い”が過ぎて大切な商談を台無しにしてしまい、父・儀兵衛（遠藤憲一）から“笑い禁止”を言い渡される。年に一度の祭りの日、てんは丁稚の風太（鈴木福）と寄席に行き、初めて落語や芸を見る。そこで楽しく笑う人々を目の当たりにし心奪われる。その帰り道、男らに追われる青年・藤吉（松坂桃李）と出会い、てんの人生は動きはじめる。
出演者
【出演】葵わかな，松坂桃李，濱田岳，千葉雄大，新井美羽，鈴木福，鈴木保奈美，竹下景子，遠藤憲一
原作・脚本
【作】吉田智子
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
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