写真ブログとして頑張っていたときもありましたがとうとう自作キーボードが混入します。
Twitterの方はすでにほとんどキーボードの話ばっかりになってましたが、ここ1年半ぐらいメカニカルキーボードを自作する界隈で活動をしてた流れでとうとうキーキャップを自作するに至った話です。
キーキャップとは
キーボードの盤面の文字が書いてあるアレです。
カスタム、自作キーボードの界隈では色形様々なキーキャップの中から好みのキーキャップをとっかえひっかえしてニヤニヤする行為も楽しみの一つでもあります。
キーキャップはプラスチックの成形が伴うことから個人での製造が難しい部分(最近では3Dプリンタで出力するなどの手法もありますが)で、完成品のキーキャップのセットは少数で高額ということもあり、財布を痛めつける原因になっています。
そうしたことから最近では何も刻印されて無いキーキャップ(Blank Keycaps)を購入し、自分で好きな刻印を入れる人達が現れ、自分も試してみることにしました。
刻印する手法
市販のキーキャップでは、耐久性やコストなどの面からいろいろな刻印方法があります。以下に代表的な物をまとめました。
- シルクスクリーン印刷
安いキーボードやノートパソコンのキーキャップの刻印に使われる方法。キーキャップの上にインクを乗せて印刷する。耐久性を高めるために更に上から樹脂などでコーティングをしたものもあるが原理的に摩耗するとなくなってしまう。
- 昇華印刷
昇華インクという特殊なインクを使い、熱と圧力でプラスチックに浸透させる方法。キーキャップ表面から数μm染み込むので、摩耗しても印字は基本的になくならない。
- レーザー刻印
名前の通りレーザーでプラスチック表面に模様を刻み込む方法。昇華印刷と同じように刻印の耐久性は高いが原理的に色は黒かグレーぐらいしか表現できないため、自由な絵柄が作りづらい。文字だけなら安価にできるのでちょっとこだわったキーボードなんかに使われていたりする。
- 二色成形(n色成形)
刻印手法というよりキーキャップの製造手法に近いが、キーキャップのプラスチック成形をする際に文字の部分とその他の部分を別々のプラスチックとして射出成形する形で刻印を表現する。刻印の部分は金太郎飴状態になっているのでかなり大胆に削り取るように摩耗しても刻印は消えない。
最後の二色成形はまず大掛かりな射出成形と精密な金型が必要になってくるので個人では無理です。今回は昇華印刷という方法でキーキャップに刻印してみた例を海外で見つけたので、こちらを試してみました。英語ではDye-sub(sublimation)というらしいです。
Idea23 Dye Sub Cap Printing DIY - Mechanical Keyboards Docs & Resources
必要なもの
- PBTキーキャップ(無刻印)
- 好きな絵柄を昇華インクで印刷したもの
- 耐熱シリコン
- カプトンテープ
- アイロン
- 適当な木の板
- クッキングシート
PBTキーキャップ(無刻印)
刻印を入れる対象のキーキャップです。無刻印の物はAliexpressで割と安め(35ドルぐらい)でてにはいります。
必ずPBT樹脂でできたものを使ってください。ABS樹脂で出来てるキーキャップもありますが、こっちは125℃程度で溶けちゃうので、融点が260℃以上のPBT樹脂を選びましょう。
好きな絵柄を昇華インクで印刷したもの
ある意味これを手に入れるのが一番むずかしいです。熱で昇華する特殊なインクが必要なため、これからやろうとしていることをそこらのインクとインクジェットプリンタで印刷してもできません。一応昇華インクを各プリンタの互換インクカートリッジのような形で売っているところもありますが総じて高価なため、敷居が高いです。
今回は昇華インクで印刷してくれるここのプリントサービスを利用しました。
A4で1枚374円+送料250円ぐらいで絵柄を沢山印刷できるのでキーキャップ印字をするぐらいだったら十分でしょう。1週間ぐらいで届きます。データチェックもちゃんとされるのでえっちな絵柄をしたい場合はインクごと設備用意してお家でやりましょう。
ちなみに1キーあたりのサイズは大体11mm×11mmの大きさで、パワポで適当に配置して出力しました。今回はお遊びでTwitterのアイコンをお借りして印刷してみました。
耐熱シリコン
これが必要な理由はキーキャップの表面がくぼんでいるために、平面で圧力を加えてもキーキャップ表面に均一に圧力が加わらないためです。今回200℃以上の熱を加えるので、ちゃんとそのくらいの耐熱温度があるシリコン容器を切り取って使うことにしました。
ちなみにこのシリコン容器はこれだけ入ったやつがイオンで98円でした。
耐熱ではないゴムを使うとこうなります。
カプトンテープ
印刷した模様やシリコンゴムがズレないように固定するためのテープです。セロテープとかだと余裕で溶けるので耐熱性のあるカプトンテープを使いましょう。AmazonとかAliexpressとかで600円ぐらいで買えます。自分は適当に家にあったやつを使いました。
uxcell 絶縁耐熱テープ 高耐熱テープ ポリイミドフィルム製アンバー 10mm広さ 28m長さ 接着剤テープ
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アイロン
上に貼ったリンクにある海外の例では、12Vのヒーターを使って加熱していましたが、今回はどこの家にでもあるアイロンを使うことにしました。アイロンは高、中、低ぐらいで温度調節できるやつを使い、スチーム機能は使いません。なるべくアイロンの底が平ら(穴の空いてない部分)なところを使いましょう。もちろんアイロン本来の使い方ではないので壊れても自己責任です。
適当な木の板
加熱と圧力を加えるので、机が燃えたり傷つかない様に適当な木の板の上とかでやりましょう。
クッキングシート
クッキー焼くときとかに使うアレです。アイロンに変なものがくっついたりしないように念のため用意しました。無くても良いかもしれません。
レッツ印字
【注意】高温のアイロンや、加熱直後のキーキャップはやけどするため十分注意して扱い、自己責任で行ってください。
昇華印刷のため、反転した状態で印刷された紙を絵柄の形に切り、インクの面を下にしてカプトンテープでズレないように固定します。その上から、キーキャップのくぼみを吸収する様にシリコンゴムを切った破片を載せ、これもカプトンテープで固定します。最終的な重ね方は以下のように
[クッキングシート]
[ カプトンテープ ]
[ シリコンゴム ]
[ カプトンテープ ]
[ 紙 ]
[ インク ]
[ キーキャップ ]
写真だとシリコンゴムは2枚重ねでさらにこの上にクッキングシートを大きめに切ったやつを載せます。シリコンゴムの厚さとか大きさとかは試行錯誤です。
できたらアイロンでプレスです。アイロンは高温設定で今回のやり方だと2分加熱するのが適切でした。アイロン自体の加熱防止でピーピー言って勝手に電源が切れる機能のために途中で温度を中設定に変えたりそもそも年季が入ってて本当に200℃に加熱できているのか謎のため、この加熱時間などは各自試行錯誤してください。
加熱中は上から適当に押し付けながら行います。結構押さないと中央部分がぼやけた刻印になって失敗してしまうためコツが必要です。下手にグリグリやるのもズレる原因になるのであまりおすすめできないです。
(全然アイロンがけしないのにこういうことに使われてかわいそうなアイロンの図)
圧力が足りないと左の様に中央部分がぼやけた感じになっていまいます。うまくできない場合はシリコンゴムの大きさや配置を見直してみましょう。
綺麗に印字されるとだいぶ製品っぽい見た目になってとても良いです。やってる最中も時間とかの試行錯誤が理科の実験ぽくて楽しいです。もうちょっと昇華印刷の入手方法が簡単になればいいかなと思いますが、アイロンでわりかし手軽に強力な刻印が作れるのでおすすめです。ぜひ
おわり