サイト利用者に仮想通貨を採掘させる「Coinhive」は新たな収益化方法になるか

Coinhive」は、自分のウェブサイトにJavaScriptのコードを埋め込み、アクセスしたパソコンに仮想通貨の「Monero」を採掘させることで収益化を行うサービスです。MoneroはBitcoinと比べて匿名性が高く、近年注目されている派生コインです。2013年にもBitcoinを採掘するTidbitなど似たようなサービスが登場しましたが、当時は新たな収益化方法としてはあまり注目されませんでした。

ところが、Internet Archiveによると先月に始まったばかりのこのサービスは、世界最大のトレントサイト「The Pirate Bay」がその新たな収益化方法としてひそかに導入していたことで一気に話題となりました。トレントサイトはその収益化としておもに広告を採用していましたが、サイトの違法性からGoogle AdSenseなどメジャーな広告代理店の利用規約には反することから、そのようなサイトを許可する反面、質の低い広告を表示する他の代理店を使わざるを得ませんでした。

それら質の低い広告の中には、アダルトコンテンツや、ポップアップ広告などCPUに多大な負荷をかけるもの、ときにはマルウェアの配信に使われることもあり、それを見かねたのかGoogleはウェブブラウザのGoogle Chromeの時期バージョンで広告ブロック機能を実装するとワシントン・ポスト紙は報じました。

このようにトレントサイトに対して風当たりが強まっている中、The Pirate Bayは広告に代わる新たな収益化方法のテストとしてCoinhiveを導入したようですが、当初はオプションを設定せずにコードを導入しており、最大限のCPUパワーを用いて採掘するようになっていました。のちに20〜30%を利用するように下げられましたが、これにはユーザーの不満も高まり、サイトが事前の警告なしに、コンピュータリソースを個人的な利益のために「ハイジャック」することを批判する人もいました。

さらに、いくつかのアンチウイルスソフトでは、Coinhiveをマルウェアとみなしてブロックするようになりました。

カスペルスキーがCoinhiveをブロック
カスペルスキーがCoinhiveをブロック
MalwarebytesがCoinhiveをブロック
MalwarebytesがCoinhiveをブロック

私は「Coinhiveで寄付するページ」というものを作りCoinhiveを試してみましたが、このページでは採掘の許可を求めているにもかかわらず、カスペルスキー、Malwarebytesなどのソフトウェアはブロックを行いました(マカフィーはブロックしませんでした)。

アンチウイルス各社がこのような措置を行った理由として考えられることの一つに、Sucuriが発表した「ハッキングされたウェブサイトで仮想通貨の採掘が行われている」というのがあります。Coinhiveでは事前に許可を求めずに採掘することもできるため、各社は「ユーザーを守っているのだ」という、説得力のある主張をすることもできるからです。またCoinhive自身はThe Pirate Bayなどのサイトについて「裁判所命令が出るまでは、追い出すつもりはない」ともTorrentFreakに語っており、その姿勢や、審査のないシステムにも問題があるように感じられます(実際に、Coinhiveはそれらのサイトで採掘されたMoneroの3割を受け取っています)。

実際にCoinhiveが稼げるのかどうかについては、FAQページに書いてあります。その一部を抜粋します。

What amount of XMR can I expect for my site?

We currently pay 0.000142 XMR per 1Million hashes. If you have 1 Million visits a month, assume a user makes 30 hashes/s (mid range laptop) and remains on your site for 5 minutes:

(1000000 visits per month * 30 hashes/s * 5 minutes * 60 seconds)/1000000 * 0.000142 xmr = 1.278 xmr / month.

要約すると、ひと月に100万人の訪問者が平均30ハッシュ/秒で5分間採掘を行うと、1.278 XMR(XMRがはMoneroの単位)が得られると書かれています。1 XMRは10200〜10300円ほどなので、月に1万3000円が手に入ることになります。一方TorrentFreakが試算したところでは、The Pirate BayはCoinhiveで月に130万円を稼げると報じていますが、先日にMoneroの採掘難易度(difficulty)も上がった点などを考慮すると、実際はもっと低いと思われます。

以上の点から、私の個人的な意見として、たとえば一般的なブログが収益化を行うにあたって、長年その方法として支持されてきた広告に比べるとその差は歴然であり、もしそのプロダクトで収益化が重要なポイントになるのであれば、私は採用することはありませんし、実際にアドセンスを貼り続けています。アンチウイルスが反応するという点については、ほとんど致命的な問題といえます。サイトのイメージ悪化にもつながり、これからどうなるかはわかりませんが、場合によってはドメインがブラックリストに入り、サイトへのアクセスができなくなることも十分に考えられます。実際にCDN/DDoS保護サービスとして有名なCloudflareは、予告なしに採掘を行うサイトをBANしました(またTorrentFreakです)。

しかし、従来の広告の問題点とされてきたその目障りな表示や、コンテンツの内容が広告主に左右されかねないことに対し、それらが何もないCoinhiveは、たとえばWikipediaのような中立性、公平性が求められるようなサイトにはとてもフィットしやすいといえます。アンチウイルスや広告ブロッカーによるブロックなどの様々な問題については、すでにそれらを回避するプロキシなども有志によって公開されており、そのコンセプトには未来があります。それにサービスが開始されてまだたった2〜3ヶ月しか経ってないのですから、これから良い方向に変わっていくことも十分あります。

画期的なアイデアで新たな収益化を創り出した、Coinhiveのこれからに期待したいと思います。

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