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ベートーベンが第9を作曲した部屋ですか。ふーん、マジビビる。



こんにちは!神田です。




フミくんは毎日ブログを書きます。

日本一周してた頃から大学ノートに毎日日記を書き綴ってはネットにあげたりしていたそうなので、
もうブログを書き始めて16年目!?

すごすぎます。


私は典型的な3日坊主タイプです。



ブログって自分の備忘録の為に、いつか振り返れるために書き始めた人がきっと多いんじゃないのかなと思います。

そしたらいつの間にかたくさんの人が読んでくれるようになったりして、
その人たちへ発信することが大事な目的のひとつとなってきて、
そしたらそしたら今度は読んでる人からもっとこう書いて。とか、もっとこんな旅して。とかの意見が飛んで来たりして。
なんならブログの内容に対して文句とか批判とかが出て来たりして。
そしたらほんとのこと書けないことも出て来て。

もはやなんの為にブログ書いてるんだろうとかなってきて。




ネットってこわいなーって思います。




おわり









2017年9月21日(木曜日)

【オーストリア】 バーデン





工場団地の道路脇で目を覚ました。





人も来ないし、静かだし、トラックがそこらへんに止まってるからそれに紛れて目立たないし、いい寝床。




朝起きたらしばらくのんびりして、それからカンちゃんのお化粧タイム。


お化粧が終わったら朝昼ごはんを作ってくれる。


その間、俺は布団の中でもぞもぞしながら日記を書いて、ご飯が出来上がったら一緒に食べるというのがいつもの朝の流れ。



ご飯を終えて荷物を整理して車のエンジンをかけるのが10時半くらい。

そして移動して町にやってきて路上っていう感じ。





ていうかご飯美味しい!!





昨日生麺を買ったのでうどんを作ってくれたんだけど、みりんがない状況でダシとワインを使ってめっちゃ本格的なうどんになってる!!

カンちゃん天才!!



いやー、ヨーロッパで車中泊してるのに、車内ただの丸亀製麺です。


かき揚げトッピングしたいです。


あといなり。














さて、荷物を移動したらそのまま近くにあるマクドナルドに行ってトイレを済ませて優雅にアメリカーノ。


朝の濃いめのコーヒーがとても美味しい。


バーデン、生活基盤整いまくりです。

めっちゃ快適、この町。



ササっとメールチェックしたら町に向かい、昨日見つけた無料スペースに車を止め、ギターを担いで中心部へ。











今日は雨も降ってなくていい天気。

路上日和ではあるけども、もしかしたら他のパフォーマーがいるかもなぁ。


まぁあれだけ広いホコ天ならどこかしらやるところはあるだろ。





それにしてもバーデンは昭和レトロな町だなぁ。





時代に取り残されたようなマダム洋品店なんかがあって、一時代前のオーストリアの風景が目に浮かぶ。


日本の昭和にロマンを感じる世代としては、こういう古びたものにたまらなくゾクゾクしてくる。















バーデンの中央広場は本当に美しい。





大迫力の白亜の塔、映画に出てきそうなレトロなカフェセントラル、周りの建物もすごく趣きがあって、胸に迫る。


いいなぁ、こんな町でいつも歌いたいんだよな。


天気が良いことで昨日に比べて人出も多く、こりゃ良い感じだ。





が、予想通り他のパフォーマーがいた。


ヨボヨボのお爺ちゃんが広場の端っこでオケを流しながらクラリネットを吹いていた。


これがまた味がある。

そしてお爺ちゃん上手い。



もうかなりのお爺ちゃんなんだけど、技術もリズムもしっかりしててすごく良い。


クラリネットの柔らかい音色がこの広場に優しく広がって、これぞヨーロッパの路上ミュージシャンだ。


素敵な演奏にチップ。










お爺ちゃんは広場でやっているので、俺は昨日見つけたスパー前の路地でやろうかなと行ってみると、そこにはバッチリと新聞売りの人が立っていた。


マジか…………思いっきり陣取られてる……………


立っているのは黒人の兄さんで、首からライセンスっぽいカードをさげている。




ヨーロッパの新聞売りさんには2種類あって、ひとつが黒人さんの新聞売り、もうひとつがジプシーの新聞売り。



黒人さんはだいたいスーパーの前とかに立っていて、明るく町の人に挨拶してちょっと小話なんかをしながらやっている。

首からIDみたいなカードをさげているので、何かしらの許可をとってやってるのかな。


俺はまだこの黒人さんの新聞売りとはモメたことはない。






もうひとつのジプシー新聞売りは、もう何日も売れてないようなヨレヨレの新聞を持って町を歩きまわり、通行人にめっちゃ強引に声をかけまくってお金をせびる。


町の人もだいたいみんな迷惑そうな顔をして避けており、お金をあげる人も新聞は買わずにお金だけを渡してるという状況だ。


もちろん彼らは首からカードはさげていない。




詳しい事情はわからないけど、彼らの業界にもきっと色々あるんだろうな。











とりあえず黒人さんが立ってる以上、邪魔をしてはいけないので、別の通りでやってみた。


が、めっちゃ反応薄い。

昨日と同じ町か?ってくらい全然立ち止まってもらえず、空振り感がハンパない。



こ、これマジか……………

ヤバいんじゃないか……………?




なんとか色々場所を変えながらやってみるけど、やっぱり反応は変わらない。


焦りながらまた場所を変えて、ホコ天の奥のほうでやってると後ろの建物から人が出てきて注意されてしまった。




「ごめんなさいね、素晴らしい演奏なんだけど、建物の中に音が聞こえてきちゃうのよ。ごめんなさいね。」



すごく上品なおばさまが申し訳なさそうにそう言ってくださるので、すんません!!秒で消えます!!と謝ってソッコー退散。






んんん…………こりゃどうしようかなぁ。


やっぱり昨日のポジションが音が響いて演奏がちゃんと聞こえるから反応が良かったんだろうなぁ。


やっぱりあそこでやりたいなぁ。


しかし黒人新聞売りさんはまだスーパーの前に立っている。



んんー、今日はあとどれくらいここにいるのかだけでも聞いてみるかな。



通行人に明るく挨拶をしながら笑顔を振りまいている兄さんに声をかけてみた。




「ハロー、今日はどれくらいここにいますか?」



「ハーイ、僕はもう今から帰るところだよ。ここでやるのかい?オーケーだよ。」




流暢な英語でにこやかに話してくれる黒人の兄さん。


おお………めっちゃ知的なオーラ出してるやん。


こんな頭の良さそうなたくましい若い兄さんでも路上で新聞売りをしないとやっていけないのかなぁ。

なんか仕事とかありそうだけどな。

事情があるんだろうなぁ。



もう帰るところみたいだけど、場所譲ってくれてありがとうとお礼を渡すと兄さんはニッコリ笑って帰っていった。
























このポジションに来た瞬間、入り方が5倍くらいに跳ね上がった。


絶え間なくコインやお札がギターケースに入っていく。



確かに目の前の凹みに音が響いてリバーブが効いており、しっかり演奏を聴いてもらえる。

囁くくらいの音量でできるので楽だ。


でも歩いてる人たちは同じ人。




路上って不思議だなぁってカンちゃんが横で言ってる。

そうなんだよなぁ、何メートルか動いただけでこんなにも反応が違うのが路上なんだよなぁ。







ずーっと話しかけてくる男の子。




小学校の時、1学年に1人はこういう子いたよな。



ずーっと同じことを話しかけてくるのを、ずーっと聞いて答えてあげているカンちゃん。

優しいなぁと思う。





ヨーロッパの子供の運びかたが可愛い。















そんなこんなありながら順調に歌ってるところだった。


向こうのほうからジプシーの新聞売りがやってきた。


通行人に近寄って行き、声をかけまくりながら金をせびっている。

暗い顔で、悲しそうに、にらみつけるように人々に近寄っていくが、みんな顔をしかめて断っている。



するとそのジプシー新聞売りが俺の前で演奏を聴いてくれている人たちに寄っていった。


おいおい、またかよ。

いつもこれなんだよなぁ。

明らかに俺の演奏聴いてくれてるところに行くなよなぁ。



しかしジプシーからしたら、歩いてる人よりも足を止めてる人のほうが狙いやすいんだろう。


思いっきり詰め寄って何か話しかけており、1人のおばさんが鬱陶しそうにコインを渡した。



もちろん、ジプシーの兄ちゃんはその横にいる小さな子供を乗せたベビーカーのお母さんにも近寄っていく。

聴いてくれてる人、全員いってやる気だ。





さすがに全員が全員お金をあげるわけではないので、ベビーカーのお母さんは優しくやんわりと断っている。


しかしそう簡単には諦めないのがジプシー。


断られようが関係なくひたすら金を要求している。



あまりにもしつこいのでベビーカーのお母さん、何も言わずにその場から離れ、3メートルほど移動してまたこっちを向いて演奏を聴いてくれている。


子供に、ほらー、お兄さん歌ってるねーって笑顔で話しかけている。



こんだけあからさまに拒否していれば、普通諦める。



しかし諦めないのがジプシー。


離れたお母さんにまた寄っていって、さらにしつこくせびっている。


また離れるお母さん。

また寄っていくジプシー。







もうさすがに俺も限界だ、もう怒ろう、って思ったところだった。


子供の手前それまで笑顔でいたお母さんが急に険しい顔になって、早足に去っていってしまった。



が、それでもお母さんを追いかけるジプシー。


どこまでも追いかけていき、曲がり角の向こうに見えなくなった。




あんまりこういうこと言いたくないけど、マジで頭おかしいんじゃねぇか?


こんだけ嫌がられてるのに、ここまでしつこく追いかけ回すって、いくら金に困ってるといえどおかしいよ。


俺のお客さんを追い払い、町の人にも嫌われて、自分で自分の首を絞めてる。


アフリカ人の黒人の兄さんは、みんなに笑顔で挨拶し、町の人と上手くやってるからみんな彼らにはどちらかといえば好意的だ。

そうしていれば自然と稼ぎも増える。




こういうの見てると本当思う。


目先の金に目がくらんで強引なことしてたら余計に稼げなくなる。

長期的に信頼関係を築くことが路上でもビジネスでもとても大事ってことだよな。













お客さんを追っ払われて、はぁ、とため息ついて次の曲へ。

もうあんなの気にしないで良い演奏を心がけよう。


心は乱れてもちゃんと演奏に集中しないと。





すると少しして、1人のおばさんが近づいてきた。


あ、この人、さっき向こうでやった時に、ここではやらないでねと注意してきたおばさんだ。


ここまで移動してきたからもう言われることはないと思うけど…………




「さっきはごめんなさいね。あんなこと言いたくはなかったんだけど。」



「いえ、こちらこそ申し訳ありませんでした。」



「それでね、さっきの建物なんだけど、中がミュージアムになってるのよ。2人のこと受付の人に話しといたから、2人は無料で中を観られるから是非行ってみて。きっとあなたたちも気にいると思うから。」




おばさんはそう言って上品にギターケースにコインを入れて去って行った。


ええ!?マジで!?


こんなパターン初めてだよ。



俺たちに、ここでは止めてねって言ったことを本当に申し訳なく思ってくれてたんだ。



もしうるさかったらすぐに止めなきゃいけないのは俺たちのほうなのに。


おばさんは何も悪いことはしてないのに。


逆に気を使わせてしまって申し訳ないことしてしまったな。





でも、せっかくそこまで手配してくれてるんだ。


これで俺たちがそのミュージアムに行かなかったら逆に失礼になってしまう。


閉館は18時らしいので、17時半まで歌って今日は切り上げることにした。


よく歌った。

















荷物を片付けたら言われた通りさっきの建物に行ってみたんだけど、めっちゃ驚いた。


さっきおばさんが、あなたたちは気に入るはずって言ってた意味がよくわかった。


まさかまさか、このミュージアムはあのベートーベンのミュージアムだった。





なんとベートーベンがかつて2年間を過ごし、あの超有名な第9を作曲したのがこの建物なんだそう。




マジでええええええええええ!!!!!

すげすぎるやろ!!!!!





「ハーイ、ボスからあなたたちのことは聴いてるわ。楽しんでね。」



受付の、これまた上品なおばさま2人が丁寧に俺たちのことを迎えてくれ、パンフレットを渡してくれた。


そのパンフレットはなんと日本語で書かれていた。


おお、やっぱりこういう音楽系の観光地って日本人の観光客が多いのかな。ウィーンみたいに。














建物の中はとても小さくて簡素なもので、昔ながらのアパートメントって感じだった。


いくつかの小部屋が展示スペースになっており、オーディオルームではオーケストラの第9が流れていた。





おお、そりゃこんな建物の目の前で俺が歌ってたら迷惑だわな……………






















この地方都市バーデンは、温泉の町として古くから知られていたようで、ウィーンに近いこともあってたくさんの貴族が住んでいたそう。


その中にベートーベンの後援者がいたらしく、そういった関係で、彼もここに滞在して作曲活動を行っていたらしい。


ベートーベンがこのかつて小さなパン屋だった建物の2階に住んでいたのは1821年から1823年の間。


ここであの世紀の傑作、喜びの歌が作曲されたのか…………

すげぇなぁ…………


























閉館時間が迫っていたのでササっと見て回り、最後に受付の前にあるお土産物コーナーにやってきた。


せっかく無料で見させていただいたんだ。

せめて何かお土産くらい買っていこう。



そうして急いでポストカードを選んでお支払いをしようとすると、受付のおばさまたちがニコニコしながら、代金はいいわよーと言った。




「だ、ダメです!!ちゃんとお支払いします!!」



「ダメよー!!これは私たちからのプレゼントよ!!アリガトウー。アッハッハッハー!!」




楽しいおばさまたち。


日本語でアリガトウと言ってくださり、ものすごく優しくポストカードをサービスしてくださった。



もう…………こんなに何もかもしてもらえて、申し訳なくなるよ…………


本当すみません!!


おばさまたち!!ありがとうございました!!




















「あー、みんないい人たちだなぁ。この町すっごい好きだよ。」



「ねー、みんないい人だねー…………落ち着く町だね。」






温かい気持ちでギターを背負って町を歩いた。


車に戻り、マクドナルドに寄り、スーパーで買い出しをして、昨日と同じ寝床へ。


動画を見ながらのんびりご飯を食べ、ビールを飲む。






いい町を見つけると、自分がこの町に住むイメージが簡単に思い浮かべられる。


あのホコ天を歩き、カフェセントラルでお茶をし、スーパーで買い物をする。


顔見知りの町の人と挨拶して立ち話をして、近況の報告をして。


そんな毎日が頭に浮かんで、この町のことがスッと自分の人生に溶け込んでくる気がする。


そういう町はあんまりないけど、ここバーデンは体に馴染む。






生活するように旅すること。


こういう旅がしたくていつも知らない場所に行ってるように思える。




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