神戸製鋼所のアルミ製材などの品質データ改ざん問題は航空機や自動車など幅広い業界に影響が広がりそうだ。「MRJ」を開発する三菱重工業子会社や米ボーイングに加え、JR東海、トヨタ自動車にも供給していた。日産自動車の不適格な検査による大量リコール(回収・無償修理)が発覚したばかり。「高品質」を売りにしてきた日本の製造業が揺らいでいる。
【関連記事】
神戸製鋼がデータ改ざん部品 トヨタや三菱重など200社に
| トヨタ自動車 | 乗用車に採用。使用部品を早急に確認し対応検討。「コンプライアンス違反は重大な問題」とコメント |
|---|---|
| ホンダ | 購買部門に調査を依頼 |
| JR東海 | 新幹線の台車部品の一部に使用。強度は設計上問題なく安全に問題ない。今後の定期検査で正規品との取り替えを検討 |
| 三菱重工業 | MRJで採用。その他の製品についても調査中 |
| 川崎重工業 | 米ボーイングの機体部品に採用。安全性など調査中 |
| 米ボーイング | 納入先と共同で影響を調査中 |
問題となった神鋼のアルミ製部材は板状ものや鋳鍛造して部品にしたものなど多岐にわたる。
MRJでは胴体と翼をつなぐ接合部分や窓枠など、幅広く使われている。燃料価格の動向で業績が大きく振れる航空会社にとって、燃費効率のいい航空機の確保は業績に直結する。東レなどの炭素繊維と並んで軽量化につながるアルミ製部材は日本の素材メーカーにとって強みとなっている。
日本製部材を多く採用しているボーイングも問題視している。2013年にはボーイングの最新鋭機「787」に内蔵されたリチウムイオンバッテリーから発煙し、787は運航停止に追い込まれた。バッテリーを製造していたGSユアサはボーイングや米航空当局などから立ち入り検査を受けた。安全性に直結する問題だけにボーイングの調達戦略にも影響を及ぼす可能性もある。
JR東海の新幹線の台車部品の一部にも神鋼製のアルミ製部材が採用されていることも明らかになった。現時点で「運行に支障はない」(広報)としている。新幹線など高速鉄道は日本政府が推進するインフラ輸出の目玉でもあるだけに、イメージ悪化も懸念される。
自動車業界も対応に追われた。
トヨタは8日、問題となった部材を一部車種で採用していたことを明らかにした。バックドアやボンネットなどに使っていた可能性があるという。車種の特定はこれからで「お客様の安全を最優先に車両への影響を早急に確認する」とコメントした。
ホンダなども問題の部材の取引の有無や影響などは「現時点ではわからない」としている。国土交通省はどの車のどの部位に使われたのか、車の安全性に問題がないか確認するよう要請する。
神鋼は不正発覚後に、問題製品の出荷を停止した。是正後に順次製品の出荷を再開しているが、以前と比べ出荷量は落ちている。アルミ最大手のUACJに代替生産を要請する場合も品質規格の認証には時間がかかる見通し。車の軽量化ニーズを受けアルミ各社の工場はほぼフル操業。神鋼の製品偽装問題はサプライチェーン(供給網)への打撃になる可能性もある。
神鋼による不正は性能データの改ざん以外にも見つかった。計3カ所の検査を求められているのに、1カ所しか検査せずに出荷していたケースもあった。他にも契約通りの寸法になっていないのに出荷した事例も報告されている。