「首都高で手放し運転」はスバル・アイサイトの新機能を使えば可能なのか?
MJブロンディ=文 Text by Shimizu Souichi
池之平昌信=写真 Photographs by Ikenohira Masanobu
◆スバル・アイサイトの新機能を使えば首都高の手放し運転は可能なのか?
国際競争力強化のため、自動車交通に関して日本政府が推進してきた“国策”には、以下のようなものがございます。
�水素社会の実現
�ITS(高度道路交通システム)
�2020年までの完全自動運転の実現
�については、水素を燃料とする燃料電池車の普及が目玉。トヨタとホンダがこれに応えて市販に至りましたが、海外勢はさっさと見限ってEVに乗り換え、超速でガラパゴス化、というより沖ノ鳥島化しました。
�は国交省が20年前から取り組んでいますが、クルマ側の急速な進歩やスマホの普及により、道路側から情報を発信する必要性が薄れ、存在意義が消えつつあります。
そして�の完全自動運転の実現。これだけは今も世界各国が超マジで競っております。なにせクルマに関する欲望は、先進国ではすでにほとんど満たされており、残るは自動運転だけ。「コンビニ」と言えばコンビニに連れてってくれるクルマができりゃ、大抵の人は欲しいわな。この最後の欲望をいち早くゲットした者が、勝利者になるのであります。
先般はアウディが新型A8で、「混雑した高速道路上」という条件付きながら、完全自動運転を実現させたと発表しましたが、まだコンビニには行ってくれません。最初にコンビニにたどり着くのはどのメーカーなのか!?
国産メーカーでコレに一番近いのは、スバルでありましょう。実はスバルが目指すのは自動運転ではなく総合安全。事故を起こさないクルマが目標で、コンビニが目標ではないのですが、技術的には僅差でトップと思われます。
ちなみに現在の国産車の自動ブレーキ性能をランキングしますと、
1位 スバル
2位 マツダ
3位 日産
4位 トヨタ
5位 ホンダ
こんな感じでしょうか? 燃料電池車を開発した2メーカーが下位に沈んでいるのは皮肉であります。
スバルの凄いところは、自動運転技術を自社開発しているところです。今や自動ブレーキの代名詞となったアイサイトは、日立製のステレオカメラと二人三脚でここまで来ました。他のメーカーがモービルアイとかボッシュとかデンソーといった社外の技術を組み合わせているのとはちょっと違います。
そのスバルが、この度アイサイトを「アイサイト・ツーリングアシスト」に進化させたのであります。
これを搭載したレヴォーグに乗った某編集者は私に、「首都高C1をほぼ1周、手放しで走れました!」とコーフン気味に語ったのであります。つまり、アクセルやブレーキだけでなく、ハンドルもクルマが自動操作して、クネクネした首都高をクリアした! それはスゲエ! マジかよ! さっそく私も挑戦してみました。……ダメでした。
首都高の流れはけっこう速い。その流れに乗って走ると、速度が速すぎて自動ハンドルが間に合わない。その後、制限速度まで落として(メーワクですが)走ったら、ほぼクリアできましたが、ハンドルは一定時間自分で操作しないとクルマに叱られて自動解除されるので、両手をハンドル寸前に置いた状態で「ガンバレ、ガンバレ!」とクルマを応援し、たまに握って無意味にちょっと切るということを続けているうちに、「オレは一体何をやっているのだろう……」と醒めてしまいました。
現状のツーリングアシストは文字通りアシストが目的で、手放し運転が目的ではないのですが、この程度なら「まだなくてもいーや」でした。
と言ってもこの自動ハンドル操作、これまで世界一と思われたボルボの最新モデルを若干上回っているように感じました。つまり僅差で世界一です! なにはともあれ世界一はメデタイ! まだそんなにありがたみはないけれど、技術は一歩一歩進むものですからネ!
【結論】
アウディA8はまだ乗ってないのでわかりませんが、あっちは高価な(たぶん)人工知能を使っております。人工知能を高度化させないと、完全自動運転は絶対ムリ。それをどこまで激安化できるかが勝負ですネ!