HOME > レビュー > ソニーの最新ウォークマン「NW-ZX300」と「NW-A40」は買いなのか? 音質と機能の進化を検証した(後)
10月7日に発売となる新ウォークマンは、ミドルクラスの「NW-ZX300」と、ハイレゾ対応のエントリークラスとなる「NW-A40」シリーズ。ハイレゾ対応のポータブルオーディオプレーヤー(DAP)として確固とした人気を持つモデルだけに注目度も高く、気になっている人も多いだろう。前編で各モデルの特長と変更点をお伝えした。後編ではインプレッションを中心に紹介する。
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新ウォークマンは2シリーズとも画面操作性や、追加された「USB DAC」以外の機能は大差がない。もっとも進化したと考えられるのは、やはり「音質」ということになる。その音質をじっくりとレポートしよう。
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Profile
鳥居一豊(Kazutoyo Torii)
雑誌の編集を経てフリーランスとなる。AVはもとより、PCオーディオやヘッドホン、また各種ガジェットの造詣も深く、さまざまな分野で執筆している。自らが設計から携わった自慢のシアター空間「架空劇場」は、ドルビーアトモスやDTS:X再生にも対応する「6.2.4」構成。最高の映像と音を求め、日々進化し続けている。大のアニメ好きでもあり、深夜アニメのエアチェックは怠らない。
ソニー
NW-ZX300
オープン価格(想定市場価格¥65,000前後)
●対応ファイル:~384kHz/32bit PCM、~11.2MHz/1bit DSD
●搭載メモリー:64GB+micro SDカードスロット
●寸法/質量:W57.7×H120.4×D14.9mm/約157g
まずは「NW-ZX300」だ。試聴では、4.4mm5極バランスケーブルが付属したヘッドホン「MDR-1ABP」(想定市場価格¥30,000前後)で確認している。率直に、こちらは音質のグレードがかなりレベルアップし、10万円を超えるWM1シリーズに近い感触となっている。また、音色的なキャラクターも大きく変わっている。
「NW-ZX300」の音は、中域が充実していて音の張りが勢いよく出てくる印象だ。低音も力があり、リズムのキレも良い。ナチュラルで落ち着いた感触なのだが、反応がよくキビキビと音が出るので、穏やかとか大人しい感じはない。例えば、アルネ・ドムネルス とゲオルク・リーデルのジャズアルバム『JAZZ at Pawnshop』の「Take Five」(DSD11.2MHz)を聴くと、サックスの音色が生き生きとしてグルーブ感がよく出た演奏になる。リズムセクションのノリの良さもしっかりと伝わる。女性ヴォーカリスト、マリーナ・ショウ『Who Is This Bitch, Anyway?』(192kHz/24bit/FLAC)の歌声も、やさしい感触と色っぽさがよく出ている。
そして、バランス出力ケーブルに切り替えると、まずは音場が大きく広がり、奥行き感も出てくる。マリーナ・ショウだとヴォーカルと左右のギターや後ろのリズムセクションとの距離感がよく出てくるし、「Take Five」は演奏をしているクラブの広さが感じられるようになる。そして、低音の鳴り方もより力感を増す。ただパワフルになるのではなく、余裕を持った鳴り方になる感じで、キレの良さも高まっている。出力がかなり大きくなることも含め、パワー感や細部の再現性も向上するので、対応したヘッドホンを使用し、バランス接続で聴いた方が持ち味を活かせるだろう。
従来モデル「NW-ZX100」どうだろうか? こちらはややメリハリを効かせた鳴り方で、ブライトで元気のいい音になったと感じる。ボーカルの歌はくっきりとして聴きやすいし、ギターの音色もより際立つ。アンバランス接続で聴き比べても、細部の再現性や音色の質感などはやや差を感じる。絶対的なクオリティーの高さでは「NW-ZX300」が明らかに上だ。
ただし、華やかさをもった楽しげなサウンドは魅力的で、ロックやポップスならばこちらの方が好ましいと感じる人は多いかもしれない。
ソニー
NW-A45HN
オープン価格(想定市場価格¥29,000前後)br>
●対応ファイル:~192kHz/32bit PCM、~11.2MHz/1bit DSD
●搭載メモリー:16GB+micro SDカードスロット
●寸法/質量:W55.9×H97.5×D10.9mm/約98g
今度は「NW-A40」シリーズだ。こちらは付属のイヤホンを中心に、「MDR-1BP」でも確認している。
「NW-A40」シリーズの付属イヤホンのノイズキャンセルは、暗騒音を中心とした低音域を中心とした効果で、人の声などはそれほど極端に消音しない。どちらかというと穏やかな効き方だ。このあたりは「NW-A30」シリーズとほぼ同様の印象だ。
マリーナ・ショウのヴォーカルは、自然で歌声の優しい感じや左右のギターの奏法の違いまで丁寧に再現する。自然で落ち着いたトーンは上位モデルにも通じるし、音に厚みがあり、声がしっかりと立つような再現は、なかなかのもの。
「Take Five」も、各楽器のリアルな音色も良好な再現となるし、中域の充実した鳴り方や低音域の力感もしっかりとしており、音像のしっかりと立ったステージが描き出される。
「NW-A30」シリーズもその実力はなかなか優秀なのだが、「NW-A40」シリーズの後で聴くと音像の厚みや力感に差を感じてしまう。そのぶん、メリハリを付けて聴きやすい音にしているのがわかってしまう。細かな音の再現性なども少々物足りなく感じてしまう。「NW-A30」シリーズのユーザーには申し訳ない気がしてしまうが、基本的な音のクオリティーには大きな差を感じた。
続いては、USB DAC機能を試してみた。USB DAC機能は専用のドライバーソフトが必要になるのだが、実はMacでもWindows10(Creators Update以後のもの)でも、使用することができた。これは、どちらもUSB Audio 2.0をサポートしているため。
Mac miniとAudirvana Plus 3.0で試してみると、「NW-ZX300」はPCM 384kHz、DSD 5.6MHzまで再生ができた。「NW-A40」シリーズは、PCM 192kHz、DSD 2.8MHzまでだった。DSD11.2MHzの再生ができなかったのは、ドライバーソフトを使用してないことも理由だろう。ソニーが推奨するソフトとドライバーソフトを使った場合はこのあたりに違いがあると思われる。
音の傾向は、本体のメモリーに音源を転送した場合とほぼ同様。「NW-ZX300」の方がS/N感や情報量が豊かでより本格的な再生が楽しめるが、これは価格の差を含めて当然の結果だろう。
意外に有効だったのは、「NW-A40」と付属イヤホンと組み合わせて使えるノイズキャンセル機能。パソコンは負荷によって冷却ファンが動き出し、ノイズが耳障りになる。ノイズキャンセル機能でこれがきれいに消え去る。室内がイヤホンで音楽を再生していると冷却ファンのノイズなどはあまり気にならないが、屋外や飛行機の中でPCから再生したいという場合には有効。なにより、小型で可搬性に優れ、ノイズキャンセル機能を備えたUSB DACはNW-A40シリーズのほかには存在しない。ニッチなようだが、これは大きな価値と言えるだろう。
ウォークマンにUSB DAC機能が追加されたのは、PCオーディオ派にとって喜ばしい進化だろう。ノートパソコンなどを組み合わせるにしても、もともと携帯プレーヤーであるウォークマンはサイズがコンパクトで置き場所に困らないし、机の上で気軽に楽しむパソコンでの音楽再生のためのUSB DACとしてはなかなか便利だと思う。
理想を言えばライン出力の装備も欲しくなるが、イヤホン出力からアクティブスピーカーなどへ接続することもできるので、最小スペースでパソコンを使ったハイレゾ対応オーディオシステムが構築できるというのは大きな魅力だ。
唯一惜しいのは、パソコンとの接続に使うのが専用規格のWM(ウォークマン)端子ということ。社外品のケーブルなどが使えないので、充電/データ転送用の付属ケーブルを使うことになる。できればより品質の優れたUSBケーブルを使いたいのが本音なので、そろそろウォークマンも接続端子は汎用性の高いmicroUSBやUSB typeCなどを採用してほしいと思う。
「NW-ZX100」ユーザーは検討が必要だが、「NW-A40」ユーザーはトータルでの音質アップやUSB DAC機能の追加など大幅に進化しており、買い換える価値はおおいにある!
「A-40」は現行ユーザーも新規ユーザーも買うべき!
「NW-ZX300」は、音のキャラクターの違いも含めて「NW-ZX100」の後継というよりも、WM1シリーズに近い存在だ。ZX100シリーズのユーザーは音質のキャラクターの違いをじっくりと聴き比べてから買い換えを検討するといいだろう。音質レビューでも触れているが、音質的な差はあるものの、メリハリの効いた楽しい音のバランスは十分に魅力的だ。
「NW-A40」シリーズは、お財布に余裕があればぜひとも買い換えを検討したいモデルと言える。質的なグレードアップはかなりのレベルだ。
そして、USB DAC機能も注目の機能と言える。パソコンでもウォークマン品質の音が楽しめるというのはありがたい。音質の向上とUSB DAC機能のふたつを考えると、買い換えを検討することをおすすめしたくなる。
もちろん、旧モデルのユーザーでなくても、実売で3万円前後のハイレゾ対応モデルとして「NW-A40」はクラストップと言える実力を備えたと言えるし、「NW-ZX300」はなかなか強豪の多いミドルクラス帯でトップを争う実力がある(アステル&ケルンの「AK70 MK2」とどちらを選ぶかが悩みどころか)。
そろそろハイレゾ音源を聴いてみようかな。という人にとっては、実にうれしい実力派モデルの登場だ。本日10月7日に発売された両機。ぜひ、ご自身の耳で進化のほどを確認いただきたい。
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