2017年10月は、スマートスピーカーが日本で本格的に始動する月になりそうだ。先陣を切ったのはAmazon。同社は10月2日に、「Amazon Echo」やそのエンジンともいえる「Alexa」を、年内に発売すると発表した。一方で、製品が店頭に並ぶのが最も早かったのは、Googleだ。同社は米国などで展開していた「Google Home」の日本導入を10月5日に発表。10月4日(現地時間)に、米国で披露されたばかりの「Google Home mini」も10月23日に発売する。
これに対し、LINEは日本市場に特化したAIエージェントサービスのClovaを正式リリース。これに対応するスマートスピーカーの「Clova WAVE」が、発表と同日の10月5日から注文可能になった。当初はオンラインストアのみの展開となるため、ユーザーの手に渡るのはGoogle Homeの方が先になりそうだが、当初の予定から価格を下げるなどのサプライズもあり、話題を呼びそうだ。
にわかに注目を集めているスマートスピーカーだが、これは一体どのようなものなのか。Alexaに先駆けて発売されるGoogle HomeとClova WAVEの2つの特徴を振り返るとともに、そのインパクトを読み解いていきたい。
誰かが明確な定義を決めたわけではないが、スマートスピーカーとは、クラウド上のAI(人工知能)につながり、音声で操作でき、結果も音声で返されるデバイスのことを指す。Amazonが米国で上記のAmazon Echoなどを発売し、大ヒットを記録した結果、“スマートフォンの次”としても注目を集めるようになった。
この分野で先行するAmazonはAlexaのスキル(機能)を開発者に公開しており、Alexa対応のデバイスをサードパーティーが製造できる仕組みも整えている。年始のCESでは、対応デバイスが数多く発表されたほか、スマートフォンでも、Huaweiの「Mate 9」やHTCの「HTC U11」、Motorolaの「Moto X4」などが、Alexa対応をうたっている。
これに近い機能を持つのが、GoogleのGoogle Homeや、LINEのClova WAVEだ。Google Homeは、同社がスマートフォンに搭載してきたGoogleアシスタントがベースになっており、Google Homeは「このアシスタントを使える場所が、新たに増える」(Google日本法人 製品開発本部長 徳生裕人氏)という位置付けになる。より具体的にいえば、家庭内でGoogleアシスタントを効率よく利用するためのデバイスが、Google Homeだというわけだ。
スピーカーという形状のため、イメージしやすいのが音楽機能だ。Google HomeはGoogle Play MusicやSpotifyに、Clova WAVEはLINE MUSICにスマートフォンなどを介す必要なくつながり、音声で聞きたい楽曲を呼び出すことができる。音量の調整や、曲送りなどの操作も、全て声で行えるため、スマートフォンを使って操作するより、ある意味で直感的で、手間もかからないといえるだろう。
ただ、これだけだと、単にスピーカーをネットに接続したのと大差がない。スマートスピーカーと呼ばれるゆえんは、音声で使えるその他の機能も充実しているところにある。Google Homeは、同社の得意とする検索にも力を入れており、「ユーザーに聞かれたことを答えるのは、比較的得意」(徳生氏)だ。発表会で紹介されていたように、「チョコレートケーキのカロリーは?」といった質問や、「今日は何の日」といった質問に対し、音声で回答してくれるのは1つの特徴といえる。同様の機能はClova WAVEにも実装される。
また、Google HomeはGoogleの、Clova WAVEはLINEのアカウントにひも付くため、タスクの管理やスケジュールの読み上げとなども行える。この点ではGoogle Homeが一歩リードしており、音声によって最大6人のユーザーを識別することが可能だ。家庭内でお父さんが聞けばお父さんの、お母さんが聞けばお母さんのスケジュールが読み上げられるといった具合で、1台のデバイスを家族で共有できる。現状ではClova WAVEに同様の機能はないが、「今後の追加機能として、話者を特定する機能を実装する」(LINE 取締役 CSMO 舛田淳氏)予定だ。
このように発売後も機能が拡張されていく点はスマートフォンに近く、スマートスピーカーがコンピュータであることの証拠だ。“スマート”と呼ばれる理由の1つともいえるだろう。実際、Clova WAVEは体験版の発売から数々の機能を追加しており、「買った直後と1年後では、Clova WAVEの価値が全く違ったものになる」(舛田氏)という。
スマートフォンのようにプラットフォーム的な側面も持ち、サードパーティーも参画できる。ここで先行しているのはAmazonだが、GoogleもGoogleアシスタント用に「Actions on Google」と呼ばれる仕組みを用意しており、さまざまなパートナーが参画。大手キャリアもこの仕組みを利用しており、KDDIは「au Home」をGoogleアシスタントに対応させる予定だ。実現すれば、au Homeに対応した家電やセンサーを音声で操作できるようになる。読み上げるコンテンツを用意するだけでなく、家電連携のインタフェースとしても利用できるというわけだ。
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