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絶好の投資教材「つみたてNISA」いますぐ職場で勉強会を開くべし

なんなら組合が手掛けたっていい

3つの非課税投資制度

金融庁が力を入れる「つみたてNISA」の受付が開始された。

つみたてNISAは、(1)年間投資枠が40万円以下、(2)期間20年、(3)投資方法を定期的な積立投資に限定、(4)金融庁が認める適格商品に対象を限定(公募投信、ETFなど現状では120本程度。手数料の低廉な商品中心)、に対して、運用益を非課税とする制度で、投資家は、年単位で既存のNISA(少額投資非課税制度。年間投資枠120万円、期間5年)とどちらにするかを選択する事が出来る。

似た制度として、愛称「iDeCo」こと個人型確定拠出年金がある。これらの制度の使い分けは、大まかには以下の図の通りだ。

(図)3つの非課税運用制度の特徴と使い分け

3つの非課税運用制度の特徴と使い分け

簡単に言うと、若くて課税される所得のある人は掛け金が所得控除されるiDeCoが有利であり、また、現在まとまった投資資金がある方は年間120万円を一気に投資出来る既存のNISAを使って投資するのが良かろうというのが、損得から見た原則論的使い分けだ。

一方、投資の初心者(たいていの人がそうだろうが)にとっては、税制上のメリットを最大限に利用することよりも、簡単に始められて、且つ場合によっては止められる(本当は止めない方がいいのだが)「つみたてNISA」は気楽である。

「職域NISA」と「職場つみたてNISA」

最近、金融関係者から「職場つみたてNISA」という言葉を聞いた。企業や職域の単位で、「つみたてNISA」を導入することを指すのだろう。率直に言って、筆者は、以前、NISAが導入された頃に聞いた「職域NISA」という言葉の印象があって、胡散臭く感じたのだが、よくよく考えてみると、これは悪くない。

「職域NISA」には、例えば銀行が取引先企業の従業員のNISA口座を、取引関係を梃子に一網打尽に集めようとするような、邪な営業的香りを感じて、好ましい印象を持たなかった。

例えば、金融機関グループが、企業との取引関係を使って、企業型確定拠出年金の導入を同グループの運営管理機関で獲得しようとするようなイメージだ。この場合、確定拠出年金の運用商品メニューには、しばしば同グループの運用会社の手数料の高い商品が並ぶことになる。

筆者はこの種の、投資家が運用対象に選ばない方がいいけれども供給者側が儲かる商品を「地雷」と呼んでいるが、金融機関グループに従業員の確定拠出年金のシステムを丸投げすると、多数の「地雷」が運用商品メニューに並ぶことになる。

しかし、仮に、金融機関の営業が職場単位で顧客にアプローチするとしても、「つみたてNISA」では、金融庁があらかじめ「地雷」の相当数を除去してくれている。

率直に言うと、世の中の投資信託の99%が明確に買わない方がいい「地雷」である。筆者の印象では、金融庁は、今回、投資信託全体の98%の「地雷」を除去した感じだ(個人的にはもっと絞り込んでも良かったと思っている)。

 

また、通常のNISAで、金融機関が購入時に手数料が掛かる商品を売りつけることが出来たのに対して、「つみたてNISA」では公募投信の場合ノーロード(購入時手数料がゼロ)に限定されているので、この種の営業の対象にならない。

つまり、「つみたてNISA」は、投資がゆっくり進む積立投資である事とも相俟って、投資家が間違いにくい仕組みだ。一方、そのことと裏腹でもあるが、金融機関にとっては、それ自体としては儲けにくいビジネスでもある。

これなら、金融機関が取引先企業の社員にまとめて導入を働きかけても大きな問題は起こりにくい。