蜂蜜からミツバチ大量死と関連指摘の農薬を検出
マット・マグラス環境問題編集委員
世界中で採集された蜂蜜を使った新たな調査で、蜂蜜のサンプルの75%から、ネオニコチノイド系化学物質の痕跡が見つかった。
調査を行った科学者は、農薬は広く使用されているが、人間向けの食品に許可されている最大使用量の水準を大きく下回ると話している。
今回調査対象となった蜂蜜の3分の1については、見つかった化学物質の量はハチに有害となるに十分だった。
しかし業界筋は、具体的な結論を導き出すには今回の調査は規模が小さすぎる、と一蹴した。
ネオニコチノイド系農薬は、世界で最も広く使用されている殺虫剤の類だ。
こうした浸透性農薬は、多くの農作物に種子粉衣として加えることができるため、散布の必要性が低くなる。一般的に、昔ながらの製品よりも、環境に有益であるとみられている。
しかし、ハチなどの花粉媒介者に対するネオニコチノイド系農薬の影響は長い間、世界中の科学者の悩みの種になってきた。これまで行われてきた一連の調査では、浸透性農薬の使用と、ハチの健康の悪化や数の減少には関係があることが示唆されてきた。
今年6月、これまでで最も包括的な実地調査が行われ、農薬がミツバチや野生のハチに有害であると結論付けられていた。
今回の調査では、南極大陸を除く世界の全大陸から採取した蜂蜜のサンプル198個について、ネオニコチノイド系農薬がどれだけ含まれているかを調べた。
調査では、世界中のあらゆる場所で採取された蜂蜜の75%から、これら農薬のうち少なくとも1種類が見つかった。濃度が最も高かったのは北米、アジア、欧州だった。
欧州での発見は謎だ。というのも、欧州では2013年以降、こうした農薬は使用が禁止されているのだ。
とは言うものの、調査の執筆者らは、蜂蜜を食べる人が今回の調査結果を心配する必要はないと考えている。「許容値よりかなり少ないので、公衆衛生上の大きな懸念にはならないと思う」と、調査を行ったスイスのヌーシャテル大学のアレクサンドラ・エビ博士はBBCニュースに語った。
「ものすごい量の蜂蜜やその他の汚染食品を食べないと、影響が出ることはありません。しかしこれは警告であり、予防原則を求める声だと思います。ネオニコチノイド系農薬がミツバチの内分泌物を乱すというのは最近分かったばかりです。何とも言えませんよ」
エビ氏によると、より大きな懸念はハチや花粉を運ぶ他の動物への影響だという。検査した蜂蜜の34%で、ハチに有害な水準のネオニコチノイド系農薬が含まれていることが示された。
執筆者たちにとって特に懸念だったのは、検査した蜂蜜の45%で見つかった2種類以上のネオニコチノイド系農薬が混ざっている、混合農薬の影響だ。
エビ氏は、「ミツバチなどのハチや花粉を運ぶ有益な昆虫にとって、間違いなく恐ろしいことだ」と強調した。
「ある1つのサンプルに、最大5つの分子が入っていた。リスク評価においては、1つの試験サンプルのうち1種類のみの化学物質のリスクしか評価していないため、混合されたものは検査していない。混合農薬の影響を重く受け止めるべき」
調査では、有機蜂蜜とその他の蜂蜜のサンプルの間に違いは認められなかった。この新しい調査のおかげで、全ての蜂蜜に対するこれらの農薬の幅広い影響をめぐり、深刻な問題が提起されるようになったと考える人たちもいる。
サセックス大学のデイブ・ゴールセン生物学教授は、調査には携わらなかったものの、「ネオニコチノイド系農薬は自然環境の中でなかなか分解されにくく、土中や水中、野生の花にしばしば入り込むため、蜂蜜の中にもあると考えている」と話した。
「世界中のあらゆる自然環境に今や、非常に強力なネオニコチノイド系農薬が広がっており、間違いなく、世界の生物多様性の崩壊にかかわっている。私たちの中には何年も前からこの問題を指摘する人もいたが、ほとんどの政府は聞き入れなかった」
だが農薬の業界団体らは、たった200個のサンプルから結論を導くのは難しいと指摘し、調査を批判している。
ネオニコチノイド系農薬製造の業界団体である欧州作物保護協会(ECPA)のグレアム・テイラー広報ディレクターは、「調査のサンプル数が少なく結論付けるには十分ではないことをさておいても、残留農薬が見つかったこと自体は懸念材料にはならない」と主張。
「より具体的な調査結果については、報告された残留量は極めて少なく、人体に有害な基準をはるかに下回っている」
調査の執筆者らは、フランスで提案されたように、問題となっている農薬を恒久的に禁止するのが一番の解決策だと考えている。
エビ氏は趣味で養蜂をしており、自身の蜂蜜も今回の調査で検査された。ネオニコチノイド系農薬の混入の有無にかかわらず、蜂蜜を食べることを制限するのは、今のところは十分な根拠がないと考えている。
「私の蜂蜜にも、3種類のネオニコチノイド系農薬が検出可能な量が含まれていた。でも今でも食べているし、子供たちにも食べさせている」
(英語記事 Pesticides linked to bee deaths found in most honey samples)