昨日ご紹介したのは、団塊の世代と、そのジュニアがすべて高齢者の仲間入りを果たし、社会の支え手である勤労世代が大きく減る「2042年問題」。
ただ、その前に、介護離職が大量に発生するという警告に出会いました。
情報のリソースは、昨日ご紹介したこの本です。
事のあらましはこうです。
50代に突入する頃から、親の介護に直面する人が増えるなか、2021年には、団塊ジュニアの先頭(1971生まれ)の方たちがこの年に50歳を迎えます。
そして、2012年には462万人だった認知症患者が、2025年には730万人になるとのこと。
政府は、増大する介護サービスの需要に対して、介護保険財政の破綻を回避すべく、制度の大幅な見直しを進めており、サービスの縮小によって懸念されるのが「介護難民の大量発生」。
介護難民は、2025年には約43万人に達するとの試算もあるとのこと。
さらに、勤労世代の減少によってスタッフ不足により閉鎖に追い込まれる施設もあり、受け入れ先がなければ「家族による支え」の期待が高まざるを得ない。
2012年の調査ですでに、働きながら介護する人は、291万人、40~50代の働き盛りが167万人(男性69万人、女性98万人)を占めるとのこと。
働きながら介護する人の増大は、必然的に「介護離職」の問題をはらみ、2012年まで実に、毎年10万人も介護によって職場を去っており、2012年までの5年間に介護離職した男性は9万8000人を超えているそうです。
介護離職の影響
介護によって職場を去る、そのことの影響は、本人と離職された企業に多大なダメージを与えます。
離職した本人にとっては、何といっても経済的な安定を手放さざるを得ません。
親が施設入所したり、親を看取った後、復職しようにもブランクは大きく、中には親がなくなって年金が途絶えた後は、生活保護に頼らざるを得ない人も。
そしてまた介護離職は、企業側にとっても、重要な人材を突然失うことになります。
しかし、介護休業制度はまだまだ言いだしにくい雰囲気があり、有効に活用されていないとのこと。
特に責任ある立場の男性ほど介護の悩みを職場で打ち明けることができず、精神的に追い詰められてある日突然に離職するケースが多いそうです。
働き盛りの介護離職が増えていく
著者は、今後、ますます働き盛りの介護離職は増えていくと予測しています。
それは、団塊ジュニアの世代で未婚者が増加しており、ひとりっ子同士の結婚も多いことが主な理由のようです。
安倍政権は「介護離職ゼロ」を掲げ、制度改革に取り組んでいるものの、財源の制約もあってスピードも規模も勢いが感じられないというのが筆者の意見です。
介護と仕事との両立ができる世の中に
あとわずか4年後に、介護離職がさらに大量に生れる世の中になるとは、正直、驚きでした。
介護による離職、そのすべてが不幸だとは思いません。
定年を2年後に控えた友人は、母親の介護のために早期退職。
母親のそばにいて世話ができることの幸せを噛みしめ、「今が幸せ」だと言います。
ただその友人の幸せは、安定した経済的な基盤と、仕事をやり終えた満足感という基盤のうえに成り立っているような気がします。
40から50代の働き盛りの年代での介護離職は、生活の基盤を失いかねず、それ以降の生活設計の変更を強いる大きなリスクとなるように思えてなりません。
介護には、いつか終わりがやってくる。
その一番辛い時期を、やり過ごし、仕事を継続できるような世の中に、何とかならないものだろうか。
「家族が看るのが当然」という周囲の目に、配偶者や子供や孫が苦しむことのないような世の中に、何とかならないものだろうか。
そんなことをつくづく思っています。
目を通していただきありがとうございました。
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