ノーベル平和賞にNGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」

ノーベル平和賞にNGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」
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ことしのノーベル平和賞に、核兵器の廃絶を目指して活動し核兵器禁止条約が採択されるのに貢献した国際NGO、「ICAN」=「核兵器廃絶国際キャンペーン」が選ばれました。
ノルウェーのオスロにある選考委員会は日本時間の6日午後6時、ことしのノーベル平和賞に、核兵器廃絶を目指して活動してきたスイス・ジュネーブに本部を置く国際NGO「ICAN」=「核兵器廃絶国際キャンペーン」を選んだと発表しました。

ICAN(アイキャン)は2007年にオーストラリアのメルボルンで結成され、日本やアメリカ、イギリスなど各国のNGOが加わって、日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会や各国の平和団体と連携し、核兵器廃絶を目指して政府代表への働きかけや一般に向けたキャンペーンを進めてきました。

この間、2013年からノルウェーやメキシコなどで3回にわたって各国の政府代表が参加して開かれた「核兵器の非人道性を検証する国際会議」では、証言活動を続けてきた被爆者たちと協力しながら、核兵器が壊滅的な被害をもたらす非人道的な兵器であるという認識を国際社会に広めるのに貢献しました。

そして、核兵器についての既存の国際秩序で、アメリカやロシアなど5か国に保有を認める代わりに削減の義務を課したNPT=核拡散防止条約のもとでは核兵器はなくならないとして、条約で禁止することが必要だと各国政府に対して働きかけを進めました。

こうした活動の結果、ニューヨークの国連本部で、核兵器の開発や保有などを法的に禁止する「核兵器禁止条約」が議論されることになり、ことし7月、国連加盟国の6割を超える122の国と地域の賛成で採択され、ICANは各国代表から採択に貢献したと評価されています。

ノーベル平和賞の選考委員会は授賞理由について「核兵器がもたらす壊滅的な結末への注目を高め、条約の採択などに向けた画期的な努力をたたえて授賞する」と評価しています。

委員会は声明の中で「世界には北朝鮮のように核兵器の獲得を目指す国が増え、核兵器の脅威はこれまでになく高まっている。国際社会はこれまでに地雷やクラスター爆弾などの禁止に合意してきた。核兵器ははるかに破壊的であるにもかかわらず同じような法的な禁止の枠組みがなかった」と指摘しました。

そのうえで「ICANはこのギャップを埋める役割を担った。核兵器が人類に受け入れがたい苦しみをもたらすものだという重要な議論を引き起こした」として、核兵器の法的禁止への努力を誓う文書を各国に送り108か国から賛同を得たことや、核兵器禁止条約の採択に貢献したことを評価しています。

そして、「核兵器のない世界に向けた次の取り組みとして、核武装をしている国々が参加しなければならないことを強調したい」としたうえで「今回の授賞がICANの目標を達成するための新たな機運の高まりにつながることを願っている」としています。

ICAN事務局長「大変な名誉」

ICANのベアトリス・フィン事務局長はスイスのジュネーブで記者団の取材に応じ「大変な名誉で、核兵器禁止条約の採択に向けて人々のたゆまない努力をたたえるものだ。核兵器の廃絶には時間がかかり一夜にして成し遂げられるものではないが、禁止条約によって核保有国に対して核兵器をもつことが悪だと知らしめ、圧力をかけることができる」と述べました。

そのうえで、「日本の被爆者やマーシャル諸島などの核実験の被害者にとっても大きな贈り物だ」と述べ、広島や長崎の被爆者とも喜びを分かち合いたいという姿勢を示しました。

ICAN声明「被爆者への贈り物」

ノーベル平和賞の受賞が決まったICANは、6日声明を発表しました。

この中で、ICANは「今回の授賞は、核兵器には合法的な目的はなく、地球上から永久に消し去られるべきだと抗議し続けてきた、世界中の活動家や市民のたゆまない努力への贈り物だ」として歓迎しています。

さらに、ICANは「今回の授賞は、また大きな目標のために力強い証言と惜しみない活動をしてきた広島と長崎の原爆を生き抜いた生存者、いわゆるヒバクシャと世界中で行われてきた核実験の犠牲者への贈り物でもある」として、広島と長崎の被爆者に言及して、授賞を評価しています。

そして、核兵器禁止条約を批准した国々をたたえたうえで、「軍縮は幻想ではなく、喫緊の人道的な課題だ。選考委員会に感謝したい。今回の授賞は、禁止条約が核兵器の無い世界へとつながる道に必要な光を照らしてくれた。私たちは手遅れにならないうちにその道を歩まなければならない」として、今後も取り組みを続けていくと決意を示し、声明を結んでいます。

核兵器禁止条約とは

ことし7月、核兵器の開発や保有などを法的に禁止する核兵器禁止条約が122の国と地域が賛成して採択されました。

核兵器禁止条約は、核兵器の開発や保有、それに使用などを法的に禁止する初めての国際条約で、ことし3月から核兵器の非保有国が中心となって交渉会議が進められてきました。

交渉会議では、日本被団協の藤森俊希事務局次長らがスピーチを行ったほか、国連総会に核兵器禁止条約の実現を求めるおよそ300万人分の署名を提出し、条約の採択を後押ししました。しかし、アメリカなどの核兵器の保有国や日本をはじめとする核の傘で守られた国々は「現実的な核軍縮にはつながらない」などとして条約に署名していません。

日本とも緊密な関わり

ICANには、国際運営委員として東京のNGOピースボートの共同代表を務める川崎哲さんが参加しています。

ICANは、核兵器の保有や開発などを法的に禁止する核兵器禁止条約の交渉会議で日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会の被爆者とともに各国に働きかけを行い、条約の採択に尽力しました。

「核廃絶」たびたび平和賞に

ノーベル平和賞は核軍縮に向けた取り組みをたびたび評価してきました。

昭和49年には「核を持たず、作らず、持ち込ませず」という非核三原則を宣言し、アメリカなど5か国以外の核兵器保有を禁止するNPT=核拡散防止条約に署名した佐藤栄作元総理大臣が平和に貢献したとして、日本人として初めて受賞しました。

昭和60年、IPPNW=「核戦争防止国際医師会議」が世界の人々に核戦争がもたらす壊滅的な被害について権威ある情報を提供したとして受賞し、平成7年には核兵器廃絶を訴えた物理学者のアインシュタインらの宣言に基づく国際的な科学者の集まり、「パグウォッシュ会議」と、会議の創設者で会長を務めていたジョゼフ・ロートブラット氏が受賞しました。

10年後の平成17年には、核査察などを通して核兵器の拡散防止に取り組むIAEA=「国際原子力機関」と、事務局長を務めていたモハメド・エルバラダイ氏が受賞しています。

そして、平成21年、アメリカのオバマ大統領はチェコの首都プラハで「唯一、核兵器を使用したアメリカは核のない平和で安全な世界を目指して主導的な役割を担いたい」と演説し、この年のノーベル平和賞を受賞しました。

ノーベル平和賞にNGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」

ことしのノーベル平和賞に、核兵器の廃絶を目指して活動し核兵器禁止条約が採択されるのに貢献した国際NGO、「ICAN」=「核兵器廃絶国際キャンペーン」が選ばれました。

ノルウェーのオスロにある選考委員会は日本時間の6日午後6時、ことしのノーベル平和賞に、核兵器廃絶を目指して活動してきたスイス・ジュネーブに本部を置く国際NGO「ICAN」=「核兵器廃絶国際キャンペーン」を選んだと発表しました。

ICAN(アイキャン)は2007年にオーストラリアのメルボルンで結成され、日本やアメリカ、イギリスなど各国のNGOが加わって、日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会や各国の平和団体と連携し、核兵器廃絶を目指して政府代表への働きかけや一般に向けたキャンペーンを進めてきました。

この間、2013年からノルウェーやメキシコなどで3回にわたって各国の政府代表が参加して開かれた「核兵器の非人道性を検証する国際会議」では、証言活動を続けてきた被爆者たちと協力しながら、核兵器が壊滅的な被害をもたらす非人道的な兵器であるという認識を国際社会に広めるのに貢献しました。

そして、核兵器についての既存の国際秩序で、アメリカやロシアなど5か国に保有を認める代わりに削減の義務を課したNPT=核拡散防止条約のもとでは核兵器はなくならないとして、条約で禁止することが必要だと各国政府に対して働きかけを進めました。

こうした活動の結果、ニューヨークの国連本部で、核兵器の開発や保有などを法的に禁止する「核兵器禁止条約」が議論されることになり、ことし7月、国連加盟国の6割を超える122の国と地域の賛成で採択され、ICANは各国代表から採択に貢献したと評価されています。

ノーベル平和賞の選考委員会は授賞理由について「核兵器がもたらす壊滅的な結末への注目を高め、条約の採択などに向けた画期的な努力をたたえて授賞する」と評価しています。

委員会は声明の中で「世界には北朝鮮のように核兵器の獲得を目指す国が増え、核兵器の脅威はこれまでになく高まっている。国際社会はこれまでに地雷やクラスター爆弾などの禁止に合意してきた。核兵器ははるかに破壊的であるにもかかわらず同じような法的な禁止の枠組みがなかった」と指摘しました。

そのうえで「ICANはこのギャップを埋める役割を担った。核兵器が人類に受け入れがたい苦しみをもたらすものだという重要な議論を引き起こした」として、核兵器の法的禁止への努力を誓う文書を各国に送り108か国から賛同を得たことや、核兵器禁止条約の採択に貢献したことを評価しています。

そして、「核兵器のない世界に向けた次の取り組みとして、核武装をしている国々が参加しなければならないことを強調したい」としたうえで「今回の授賞がICANの目標を達成するための新たな機運の高まりにつながることを願っている」としています。

ICAN事務局長「大変な名誉」

ICANのベアトリス・フィン事務局長はスイスのジュネーブで記者団の取材に応じ「大変な名誉で、核兵器禁止条約の採択に向けて人々のたゆまない努力をたたえるものだ。核兵器の廃絶には時間がかかり一夜にして成し遂げられるものではないが、禁止条約によって核保有国に対して核兵器をもつことが悪だと知らしめ、圧力をかけることができる」と述べました。

そのうえで、「日本の被爆者やマーシャル諸島などの核実験の被害者にとっても大きな贈り物だ」と述べ、広島や長崎の被爆者とも喜びを分かち合いたいという姿勢を示しました。

ICAN声明「被爆者への贈り物」

ノーベル平和賞の受賞が決まったICANは、6日声明を発表しました。

この中で、ICANは「今回の授賞は、核兵器には合法的な目的はなく、地球上から永久に消し去られるべきだと抗議し続けてきた、世界中の活動家や市民のたゆまない努力への贈り物だ」として歓迎しています。

さらに、ICANは「今回の授賞は、また大きな目標のために力強い証言と惜しみない活動をしてきた広島と長崎の原爆を生き抜いた生存者、いわゆるヒバクシャと世界中で行われてきた核実験の犠牲者への贈り物でもある」として、広島と長崎の被爆者に言及して、授賞を評価しています。

そして、核兵器禁止条約を批准した国々をたたえたうえで、「軍縮は幻想ではなく、喫緊の人道的な課題だ。選考委員会に感謝したい。今回の授賞は、禁止条約が核兵器の無い世界へとつながる道に必要な光を照らしてくれた。私たちは手遅れにならないうちにその道を歩まなければならない」として、今後も取り組みを続けていくと決意を示し、声明を結んでいます。

核兵器禁止条約とは

ことし7月、核兵器の開発や保有などを法的に禁止する核兵器禁止条約が122の国と地域が賛成して採択されました。

核兵器禁止条約は、核兵器の開発や保有、それに使用などを法的に禁止する初めての国際条約で、ことし3月から核兵器の非保有国が中心となって交渉会議が進められてきました。

交渉会議では、日本被団協の藤森俊希事務局次長らがスピーチを行ったほか、国連総会に核兵器禁止条約の実現を求めるおよそ300万人分の署名を提出し、条約の採択を後押ししました。しかし、アメリカなどの核兵器の保有国や日本をはじめとする核の傘で守られた国々は「現実的な核軍縮にはつながらない」などとして条約に署名していません。

日本とも緊密な関わり

ICANには、国際運営委員として東京のNGOピースボートの共同代表を務める川崎哲さんが参加しています。

ICANは、核兵器の保有や開発などを法的に禁止する核兵器禁止条約の交渉会議で日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会の被爆者とともに各国に働きかけを行い、条約の採択に尽力しました。

「核廃絶」たびたび平和賞に

ノーベル平和賞は核軍縮に向けた取り組みをたびたび評価してきました。

昭和49年には「核を持たず、作らず、持ち込ませず」という非核三原則を宣言し、アメリカなど5か国以外の核兵器保有を禁止するNPT=核拡散防止条約に署名した佐藤栄作元総理大臣が平和に貢献したとして、日本人として初めて受賞しました。

昭和60年、IPPNW=「核戦争防止国際医師会議」が世界の人々に核戦争がもたらす壊滅的な被害について権威ある情報を提供したとして受賞し、平成7年には核兵器廃絶を訴えた物理学者のアインシュタインらの宣言に基づく国際的な科学者の集まり、「パグウォッシュ会議」と、会議の創設者で会長を務めていたジョゼフ・ロートブラット氏が受賞しました。

10年後の平成17年には、核査察などを通して核兵器の拡散防止に取り組むIAEA=「国際原子力機関」と、事務局長を務めていたモハメド・エルバラダイ氏が受賞しています。

そして、平成21年、アメリカのオバマ大統領はチェコの首都プラハで「唯一、核兵器を使用したアメリカは核のない平和で安全な世界を目指して主導的な役割を担いたい」と演説し、この年のノーベル平和賞を受賞しました。