「早期教育は意味がない」慶応医学部教授が指摘、その理由とは
高橋先生:やりたいことをやらせておけばいいと思いますよ。小さい頃から勉強させたからといって、将来の知能が高くなるとか低くなるとかいうことありません。何かを変えられるとすれば、自分に自信を持つ子になるかどうかということ。そこは親の育て方、環境要因で差がつくでしょうね。
K:「セルフ・エスティーム」、いわゆる「自己肯定感」ですね。
高橋先生:小学校受験を考える方もいらっしゃると思いますが、その過程を通じて、いいお友達が沢山できて、豊かな生活を送れるならいいと思います。でも、その受験のために「あなたのいちばん好きな食べ物は?」と質問されたときに、本当は日曜日の朝に家族で行くファストフード店のハンバーガーとポテトが何より好きなのに、「お母さんが作ってくれるオムレツが大好きです」と答えるように念を押すのはあまりよろしくないかもしれない(苦笑)。
K:ある意味、子どもに「ウソ」をつかせることを小さい頃から強いるのはよくないと。
高橋:ええ。また、勉強だけでなく食生活についても無理強いは禁物です。最近テレビを見ていると、この栄養素をとってないと知らないうちに恐ろしい病気になる、という番組がありますよね。現代の日本で特定の栄養素が極度に欠乏したために病気になるということはまずありません。特殊な早期教育がなくても子どもたちがすくすく育つように、特殊な食事を工夫しなくても、楽しい食事であれば子どもたちはすくすく育ちます。子どもたちに与えられた“育つ力”です。その原動力が自己肯定感です。
K:冷静に考えるとそうなんだろうなとは思うのですが、メディアで「!」マークつきで、危険を煽られると、ついついそちらに引っ張られてしまいます…。
高橋:なるほど。でも、体に不可欠の栄養素を必要量の2倍、3倍と摂取したからといって、さらに健康になるかというとそうはならない。たとえ自然食品であっても、過剰摂取すれば中毒になることもあります。その意味では、教育も大事な栄養素と同じようなものかもしれませんね。何事もバランスが大切です。
●持っている能力は“必要なとき”に自然と発揮される
K:しつこいようですが、“勉強”という意味の早期教育も環境要因としてそれなりに将来に良い影響があるのではないか、という考えがまだ抜けません。たとえば小学校に入る前から学習塾に行っている子は計算ができたり、文字が書けたり、ほかの子より早くできることが増えますよね?その子たちがどんどん先にいって、有利になるということはないんでしょうか。