日本人が知らない「カズオ・イシグロ」の素顔

英国ではどう評価されているのか

ノーベル文学賞受賞後、公園でメディアの取材に応じていた(写真:Alastair Grant/AP Photo)

10月5日、スウェーデン・アカデミーが日本生まれの英国人作家カズオ・イシグロ氏(62歳)にノーベル文学賞を授与すると発表した途端、英メディアは一斉に英国から受賞者が出たことを喜ぶ報道でいっぱいとなった。

ロンドン北部の自宅でBBCの取材に応じたイシグロ氏は「ボブ・ディラン(昨年の受賞者)の次に受賞なんて、素晴らしい。大ファンなんです」と笑みをこぼした。自分の凄さよりも、ディランの次だから凄いんだ、という自嘲気味の英国流ユーモアである。

作家よりミュージシャンになりたかった

イシグロ氏の最も著名な小説は『日の名残り』(1989年)や『私を離さないで』(2005年)で、いずれも映画化されている。これまでの英文学への功績を評価され、1995年には大英帝国勲章(OBE)を授与されており、一連の作品は世界40カ国以上に翻訳されている。

イシグロ氏(日本語表記は石黒一雄)は、1954年11月8日、長崎県長崎市で生まれた。1960年、同氏が5歳の時、海洋学者の父が英国の研究所に赴任するため、一家は英南部サリー州ギルフォードに移住。両親ともに日本人だが、英国の典型的な中流家庭の子弟として育った。

現地のストートン小学校から、中等教育の名門学校「グラマー・スクール」に進学。卒業後はいったん休みを取り、米国やカナダを旅行した。合間に日記をつけたり、自前で作ったデモテープをレコード会社に送ったりした。

この頃、なりたかったのは作家というよりもむしろミュージシャン、できればロックスターだったという。

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  • NO NAME86c93caa5c27
    カズオ、イシグロ氏の生い立ちを見ると、5歳で両親に連れられてイギリスに渡ったということです。そして、当時は日本人校など無かったようで、あちらの学校に入った。家庭内では日本語だったが、7歳ぐらいで、両親は母国語を日本語とするのを諦めたようだ、と言うのが本人の述懐です。

    5歳までは日本語の世界で育ち、イギリスに渡っても家庭内では日本語で過ごしたものと思われます。それでも、外の世界は英語であり、次第に彼の母国語は英語となっていったということでしょう。彼の両親はいまだに在英のようです。

    日本でも、自分の子供をインターに通わせている方も少なからずいらっしゃると思いますが、イシグロ氏のように英語を母語とする子供に育てたいかはどうか、お考えになっているでしょうか? 文学とは異なる話ですが、気になるところです。
    up11
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    2017/10/6 12:28
  • NO NAMEff6d8891fe7a
    緑色蛍光タンパク質でノーベル化学賞を取った下村 脩(しもむら おさむ)さんもアメリカ国籍。なぜか大学は今の長崎大薬学部。
    江戸時代の出島の名残りかな。長崎と縁のある人は海外とつながりがあるみたいで。
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    2017/10/6 15:47
  • NO NAMEe68d2843436b
    私も「日の名残り」は大好きです! 私は滑稽譚というよりスティーブンスの生き方に武士の姿を見てました。主君のために真摯に愚直に仕えた姿、その主君がある意味バカ殿だったと分かっても、それを非難するのではなく、立場が違う自分が出来ることをするしかないのではないか、と思うところは本当にぐっときます。私も会社では「部下」の立場ですから。部長や課長の無能力を非難することは簡単ですが、しかしでは会社の存亡を賭けた経営難のときに八面六臂の活躍が出来るような能力が自分にあるかと言えばない、ほんとただの部下に過ぎないのですから。それを思えば部長を信じてそのプロジェクトを成功させるために身を粉にしてますは働きなさい。ときっとスティーブンスなら私に言うよな。そう思っています。生きている人間のようにスティーブンスを師としています。
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    2017/10/6 16:20
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