農協(農業協同組合)の仕事を調べてみると「きついノルマ」「ブラック企業」といった言葉が目につきますが、どこに問題があるのでしょうか。実際に働いている人で転職を考えている方がいれば、早期に決断した方が良いのかもしれません。
農協の仕事はどんなものがあるのか
農業協同組合の仕事は、主に共済事業や組合員向けのサポート、購買活動の3つが挙げられます。
農業に従事していないと実際の仕事がわかりにくいですが、「JA共済」という言葉やチラシは見たことのある方は多いのではないでしょうか。簡単に業務内容を説明していきます。
JA共済などの保険サービスの勧誘
農協の中でも有名なものとして「JA共済」などの保険サービスへの契約を勧める仕事があります。
JA共済とは人の命や住居などの建物、自動車といった人が生きていくために必要なものを総合的にカバーする保険となっています。
生命に関する部分はほかの生命保険会社と同じような保証を用意しており、同様に建物や車に関しても契約内容の中にしっかり保証されています。
農家のサポートサービス
農協では組合員の細かいトラブルや販路に関するサポート事業も行なっています。
農業機器の修理や農家で採れた作物などの販路紹介、生産方法の指導などの他に行政からの委託業務があります。
こうした業務は目立ちませんが、農家の方々に農協を利用してもらうためには大切なサポートです。
さまざまな商品の購買活動
農業に関わる商品の販売のほかに、家電製品や衣服の販売も行なっています。農家の方の大多数は年配の方が多く、家から買い物をするために出かけるのも一苦労なことも。
ネットが普及したとは言っても、それを使いこなせる人が家にいないとネット通販も利用できません。
そうした人のために、農協では農業で使用する肥料や農薬、道具などの他にも様々な物の販売を推進しています。
農協の仕事はどこが辛いのか
農協の職員は、ノルマに追われながら、決して良いとはいえない職場環境で仕事をしなければなりません。
一般企業のようなコンプライアンスや労基法を守ってブラック企業と呼ばれないようにする努力がされていない職場もあります。
また、ノルマを達成するためにあらゆる方法をとらないといけなくなるため、さまざまな労働問題も出てきます。
ひたすらノルマの達成に追われる日々
農協で扱う商材にはほとんどノルマが課せられています。当然これを達成できないと昇給も昇格も望めず、一層自分が苦しくなっていきます。
通常の営業職と同じかと思われますが、扱うものが農業に関する商品から、保険、まったく関係ない衣服関連や電化製品などあらゆるものを売らなければなりません。
これだけいろいろなものを扱っていると、浅く広いだけの知識しかない状態で、お客様に押し売りのような形で売りつけることにもなりかねません。
販売する相手はお年寄りが多いため、あまり商品の知識がなく、良くわからない人がほとんど。そういった人に「お得ですよ」「お孫さんに喜ばれますよ」といった売り文句で半ば強引に販売するのは良心が痛みます。
しかも、扱っているものはどれもネットで安く買えることが多く、安く買える知識のない人に向けて販売をすることになります。
最終的には知り合いや親戚に情けで買ってもらうことになり、それもできなくなると自分で買う「自爆」をすることになります。
待遇や職場環境も良くない
厳しいノルマや休日出勤があるにも関わらず手取りは少ないまま。残業代もきちんと支払われている職場も少なく、従業員の給与はなかなか上がりません。
上司がいる限り昇給ができず、旧態依然とした年功序列の風潮が残っています。そのため上司の力が強く、セクハラやパワハラが横行している職場もあるそうです。
過去には、男性職員が女性職員に対して服を脱ぐよう指示するといったセクハラ発言で問題になったことがありました(2016年のニュース記事より)。
また、世間体やうわさ話など、仕事以外にも気をつけないといけないことが多く、集中して業務に取り組むことができない人もいます。そうした中で頑張れる人でないと、仕事を続けていくことは難しいのではないでしょうか。
農協の仕事を続けるとどうなるか
農協の仕事を続けてもスキルやキャリアが身につかず、そればかりか精神的な病気になってしまうことも。
スキルやキャリアがないと将来的にも不安になる上、ノルマ達成の精神的圧迫で働けないようになってしまうと、社会復帰はかなり難しくなってしまうでしょう。
スキルやキャリアがついてこないので将来性がない
農協の仕事は多種多様ですので、一つのことをしっかり身につけることは難しいといえます。
そのため、いざ転職をしたいと考えた時に、特筆すべきスキルやキャリアがなく、プロジェクト単位で業務を遂行した経験もないとなると、年齢によっては内定を獲得することがかなり厳しくなるでしょう。
営業や保険サービスについて勉強し、「社内売上成績○位」といった実績や、必要な資格を保有できていれば、チャンスは広がります。ただ、サービス残業や休日出勤が多い中でモチベーションを維持していくのは至難の業でしょう。
そうした苦労をするのであれば、転職で有利な若い年齢のうちに転職活動を行ない、他の企業で働くほうが昇給の可能性も上がり、それだけ早く新しいスタートを切れることにつながります。
ノルマが達成できなくなると追い込まれる
農協の仕事では、保険や販売業務に課せられたあらゆるノルマをクリアしなければならないプレッシャーに加えて、それらができなくなると精神的に追い込まれてしまいます。
最初のうちは、月間のノルマが厳しいと親戚や家族が達成に協力してくれていたかもしれませんが、それも長くは続きません。
そうしたお願いばかりが増えると、あなたに対する家族や親戚の目がだんだん変化していき「あの人と関わると何か商品を買ってあげないといけなくなる」というようなことをいわれる羽目に。
そうしてノルマ達成ができなくなると、職場で上司に厳しい言葉や叱責を受けることになります。
最終的に家族や親戚から良いように見られなくなり、職場でも仕事のできない人というレッテルを貼られてしまうと、精神的に参ってしまいますよね。誰にも頼ることができず、信用できない状態になると、鬱や精神病になってしまう危険性もあります。
まとめ
今回紹介した内容はすべての農協に当てはまるわけではありませんが、大変な思いをしているJA職員は少なくありません。
もちろん、土台がしっかりした経営をしている農協もちゃんとあります。
農協はすべて同じグループ企業といった形ではなく、それぞれが都道府県や市町村ごとに独立して経営者がいる場合が多いです。
そのため、業績の良い農協であればノルマもきつくなく、しっかりと社員にお給料が支払われるような離職率の低い店舗も存在するのです。
ただ、どの農協でもいえることですが、歳を重ねると非常に転職が難しくなるでしょう。原因としては先にもお話したように、スキルやキャリアがなかなか身につかないことが挙げられます。
たとえば、エンジニアや技術職、営業職などをしていれば、ある程度の専門知識やスキル、業績、キャリアがついてきます。
農協でただ漫然と仕事していると「いろんなことを経験してきたが、これといって得意なことがない」といった器用貧乏になってしまうことがあります。
将来性が心配という不安や、自分の仕事に誇りを持てない、職場が合わないといった悩みがあるのであれば、早めに転職を考えましょう。