音楽配信とは、インターネットを通じて楽曲を配信するサービスの事です。ブロードバンド回線の普及に伴い、1曲数MB(メガバイト)から数十MB程度の音楽であれば数分以内にダウンロードができるようになったことから、普及し始めました。専業の企業やパソコンメーカーなどがサービスを提供している音楽配信サービスのほか、各レコード会社が提供している音楽配信サービスがあります。価格は1曲数百円程度に抑えられいるので、CDを購入するより安いのが嬉しいですね。
音楽配信の楽曲データは、パソコンや携帯音楽プレーヤーで再生できる形式にされていて、著作権保護機能により暗号化されています。ユーザは専用ソフトを導入し、楽曲データとそれを再生するための「鍵」データを購入します。不正コピーを防ぐため、楽曲データだけでは再生できず、「鍵」をセットしたパソコンなどの機器でしか再生できないようになっているのです。著作権保護技術や課金方式などが各社バラバラでなかなか統一されなかったこともあり、普及は進んでいなかったのですが、2003年頃からApple社の「iTunes Music Store」サービスの加入者が爆発的に増加して、同社の携帯音楽プレーヤー「iPod」と共に業界標準となりつつあります。
音楽配信の始まりは、インターネットを介して音楽データの違法DLデータを流通させることが一般化したことに端を発し、「無料でコピーがやりとりされるなら、安く有料販売した方が良い」との目的からスタートしました。
音楽配信には色々なメリットがあります。
インターネット音楽配信サービスの主なメリットは「24時間いつでも買える」「最新ヒット曲からCDの流通量が少ない曲まで簡単に買える」「低価格」といったところでしょうか。こうしたメリットをアピールして開始された音楽配信サービスですが、サービス開始直後からブレイクしたわけではありません。
日本国内での商用音楽配信サービスとしては、1997年にミュージック・シーオー・ジェーピーが、1999年にはソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)とリキッドオーディオがサービスを開始していますが、「価格・操作性・曲数、いずれにも問題があり、定着できたとはいえません。1999年から2001年にかけては、様々な企業が音楽配信サービスに乗り出しました。
この当時はCD販売を行うレコード会社が開始したものが多く、SMEのbitmusicを始めとして、エイベックスの「@MUSIC」、ビクターエンタテインメントの「なあ!(na@h!)」、2001年には東芝EMIのほか「du-ub.com」などが開始されました。しかしながら、それらの多くはレコード会社が自身の持つ音源を配信するというスタンスでサービスが提供されていて、CDのプロモーション的な位置づけに過ぎませんでした。
加えて、
という大きな問題を抱えていました。また、当時はまだブロードバンド環境が一般化しておらず、「4分の曲をダウンロードするために15分かかる」という話もありました。上記の3要因に加えて、通信環境の未整備という条件が重なっていて、当時は音楽配信サービスがブレイクするのは難しかったのです。
音楽配信サービスが登場し始めた時期は、P2PでのMP3音楽ファイル違法交換による被害が深刻視されていた時期でもあり、「いかに著作物の権利を保護した状態で音楽配信を行うか」に各社はしのぎを削っていました。そのため、著作権管理機能を持った配信形式が多数登場しました。マイクロソフトのWMT(Windows Media Technology)を始め、Liquid Audio、米IBMのEMMS(Electronic Media Management System)、ソニーのOepn MGなどです。再生についてはWindows OSの標準プレーヤーである「Windows Media Player」を使用する方法もありましたが、各配信元ごとに独自のプレーヤーソフトを用意しているケースも多く、CDを再生するほどの気軽さがありませんでした。また、著作権管理を重視するあまり、CDに書き出せない例も多く、ユーザーが窮屈さを感じたことも爆発的な普及につながりませんでした。
日本の音楽配信サービスは当初、混乱を招く事態も多く起こりました。ソフトバンク関連3社が1999年に設立した「イーズ・ミュージック」は1曲100円という低価格をアピールし注目を集めましたが、結果としてサービスを開始することなく、2001年10月には解散となりました。また、米Liquid Audioのライセンスを受けた、リキッドオーディオ・ジャパンも注目を集めました。その技術自体は三洋電機の音楽配信サービス「SOUND BOUTIQUE」や、@Niftyの「Digital Music Store」に採用されるなどの評価を得、リキッドオーディオ・ジャパンも東証マザーズ上場第一号になるなど明るい話題もありましたが、2002年7月に同社は社名変更を行い、音楽配信の表舞台から消えることになりました。
価格についても、2~3曲収録されているCDシングルの価格が当時850円前後であったことから1曲300~350円程度という設定がなされたようですが、使い勝手の面で煩雑さがあることを理解しながらも、10曲落とすとアルバムCD並の値段になってしまう価格で、通信費用をかけてわざわざダウンロードするユーザーが多くいるはずもなく、ユーザーの定着はほど遠い状態でした。2000年には、SMEやエイベックス、キングレコード、ポニーキャニオン、BMGファンハウスら大手レコード会社がレーベルの壁を越えた音楽配信サービス「レーベルゲート」を立ち上げましたが、こちらも「価格」「操作性」「曲数」という同業他社と同様の問題を抱えていて、注目こそ浴びたものの、ユーザー数の拡大には結びつきませんでした。
誰もが将来的にはブレイクすると感じながらも、普及の進まなかった音楽配信ですが、米国で開始されたあるサービスを機に、事態は急速な動きを見せます。そのサービスとは、米Appleの『iTunes Music Store』です。2003年にはいわゆる『アップルショック』が起こりました。
1曲99セント(約120円)という低価格と、iPodというポータブルプレーヤーへの転送が自由に行えるiTunes Music Storeは大きな支持を得ました。ファイル形式とプレーヤーソフトの互換性という点では課題を残したままといえますが、低価格性と、なによりも「ゆるい」著作権管理方法が、CDの使い勝手に慣れたユーザーに受け入れられたことがその要因でしょう。米国の競合サービスはiTunes Music Storeに対抗する形で、曲数の増加と低価格化を推進しました。そして、2001年のYahoo!BBを皮切りに一躍ブロードバンド大国となった日本でも、整備された通信インフラを活用できるサービスとして音楽配信サービスが再び脚光を浴びることになります。
苦戦が続いていた音楽配信サービスですが、各社はその中でも着々と問題点を解決すべく努力を続けていました。曲数については、SMEのbitmusicが2003年12月に曲数を2万曲に増強したほか、ビジネスとして成立することを目指して、各社が曲数の向上に努めました。レコード会社以外にも、TSUTAYAのようなレンタル業者がプロモーション目的で試聴サービスを開始したり、廃盤を専門に配信を行うサイトが登場するなど、音楽配信自体が一般化し始めました。中でも、レーベルゲートは複数レコード会社の音源を配信できるという音楽配信サービスのメリットを最大限に活かして、月に30曲以上のペースで新譜を追加するようになり、昨年12月にはアルバム単位での提供も開始しました。また、洋盤や旧譜も積極的にライブラリに追加されるようになり、サービス名称が「Mora(モーラ)」となった4月には東芝EMIも参加し、曲数は3万8000曲を数えるまでになりました。
Moraは、著作権管理方式にOpen MGを採用しています。Open MG対応サービスならば、ダウンロードした音楽をメモリースティックスロットを備えた携帯電話やPDA、ネットワークウォークマン、Net MD対応のMDプレーヤーに持ち出して楽しめる音楽配信サービスです。今までのサービスがPCでしか再生することができず、万が一PCがクラッシュしてしまった場合には、購入した音楽が消えてしまっていたこととは大きく異なります。『CD並み』とまではいかないものの、大きな進歩といえるでしょう。また、価格も1曲158円からと低価格化が進み、決済についても現在はクレジットカードのほかプリペイドカードのWebMoneyや、電子決済サービス(Smash)で決済できるサービスも増え、「Edy」「elio」といった非接触型ICカードによる方式にも対応しています。
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